繊維ニュース

特集 アジアの繊維産業Ⅱ(7)/わが社のアジア戦略

2019年09月13日 (金曜日)

〈中国は内陸部で生産拡大/CSR工場監査も/双日〉

 「直接的な米中貿易摩擦の影響は今のところない」と、双日リテール・生活産業本部の岸誓久繊維事業部長は語る。中国ではコストアップや人材確保難などに加え、米中貿易摩擦が激化するにつれ、工場がASEANにシフトする。そのため、ベトナムなどでの縫製が増加しているが、中国の優位性も依然ある。

 双日は中国のパートナーと組み、中国内陸部での生産を拡充する。沿海部に比べ人件費の抑制や労働力の確保も比較的容易。「主要顧客から短納期ニーズは高まっている。内陸部での生産となっても、早期納入への対応力はある」。生産管理の面でも、パートナーの工場に入り、サポートしている。

 ASEANは、中国に比べ生産効率が高くないため、生産効率の向上への取り組みを進めている。インドネシア、ベトナム、カンボジアには上海から技術指導者を派遣する。

 「ベトナムでは使うラインを増やし、量的にも拡大してきた。ASEANは生産拡張の可能性がある」と、今後も生産性の向上と拡大を目指していく。

 インドネシアやベトナムは素材の現地調達もできる。素材開発の面では「現地企業を集約して共同開発を進めていく」考えである。工場のCSR監査は上海のCSRチームが定期的に回って対応する。

〈インドネシアはマザー工場/カイゼン活動で生産性向上へ/日清紡テキスタイル〉

 日清紡テキスタイルはインドネシアに紡織のニカワテキスタイル、織布・染色加工の日清紡インドネシア、縫製のナイガイシャツインドネシアといった関係会社があり、充実した生産基盤を持つ。これまで設備投資も積極的に実施してきたことを生かし、繊維事業のグローバルなモノ作りでのマザー工場としての位置付けを一段と強めている。

 繊維事業の主力であるシャツ地やユニフォーム地の生産でベースとなるインドネシアの生産基盤。日本向けだけでなく国際市場にも通用する“グローバル品質・コスト競争力”を確立するために設備更新を続けてきた。現在、徹底したカイゼン活動に取り組んでおり、品質や生産性の向上を進めている。

 同社の売上高に占める海外比率は約35%だが、縫製後の最終消費地が日本以外となる純粋な海外販売比率は約20%。インドネシアでの生産基盤強化を生かし、この比率を早期に30~35%まで高めることを目指す。

 商品開発でも、研究開発基盤となる国内工場と並んでインドネシア拠点は重要な役割を担う。ノーアイロンシャツ「アポロコット」のバージョンアップに取り組んでおり、さらなる機能の向上を目指す。ホルマリンフリーの加工技術確立にも挑戦する。

 世界的にESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)への要求が高まった。こうした要素は国際市場での拡販のためにも必須となる。このためインドネシアの関係会社でも環境配慮に向けた設備投資を重点的に進めた。特に染色加工の日清紡インドネシアは廃水処理工程の能力を高めており、節水につながる革新プロセスの導入も積極的に進める。

〈4極バランスで成長戦略/内販、輸出開拓にも力/クラボウインターナショナル〉

 クラボウインターナショナルはアジア各国で引き続き対日縫製品供給機能を磨くとともに、拠点を置く各国での内販と第三国への輸出に力を入れる。

 同社のアジア拠点は中国、インドネシア、ベトナム、バングラデシュの四つ。それぞれに日本人スタッフが常駐し、納期管理、品質管理、新商品開発を進めている。

 西澤厚彦社長によると縫製品OEM事業の生産地は中国が60%を占めるが、今後は徐々にインドネシア、ベトナム、バングラデシュへのシフトが進むと言う。「4カ国に分散しているのはリスク回避という意味でも有効」とし、それぞれの強みを生かしながら事業拡大を狙う。

 中国ではクラボウの現地法人との連携もあって既に内販で実績を積んでいる。ここをさらに伸ばすとともに、インドネシアとベトナムでもグループ連携による生地からの差別化を発揮して内販開拓に本腰を入れる。

 インドネシアでは自社縫製工場のアクラ・ベニタマ(AKMガーメント)や中部ジャワ地域の協力工場を活用しながら、生地の現地調達も拡大して内販につなげる。駐在員事務所を置くベトナムはタイのクラボウグループやクラボウのホーチミン法人との連携を進めて糸、生地からの付加価値化を図り、内販や欧米向けの可能性を探る。

 8年前からチッタゴンに事務所を置いて縫製品OEM事業を展開するバングラデシュは、「内販の対象になるのはまだ先」として当面は対日縫製品OEM事業に絞る。

 各国で環境規制やCSR調達の機運が高まっていることを受けてその対応も進める。協力工場の「働き方」に目を配り、環境配慮商材の取り扱いも増やす。

〈ミシン糸販売好調持続/今後は欧米向けにも注力/グンゼ〉

 グンゼは五つのミシン糸製造工場を持つ。岡山県の津山工場、インドネシアのグンゼ・インドネシア(1991年設立)、中国の上海郡是通虹繊維(97年設立)、バングラデシュのグンゼ・ユナイテッド(2014年設立)、そしてベトナムのグンゼ・ハノイ(16年設立)だ。これら工場を活用したミシン糸販売が好調に推移している。今後、欧米向け販売にも力を入れる。

 同社のミシン糸売上高は、リーマン・ショック以降、増加傾向で推移してきた。2019年4~9月期も連結ベースで前年同期比3~4%増を見込む。ベトナムのグンゼ・ハノイが2・7倍への増収になりそうなことに加え、バングラデシュのグンゼ・ユナイテッドも20%の増収を見込む。インドネシアのグンゼ・インドネシアも6%の増収になりそうだ。

 グンゼ・ハノイは、仮撚り・合撚から染色までを自社工場で行っている。17年にホーチミンにも事務所を設け、主に日系企業への営業を強化した。売上高の8割ほどは日系向けが占める。染色能力は月間100トン。仮撚り・合撚能力を昨年10月に倍増させたが、染色能力にはまだ余裕がある。来年初頭までに、付加価値の高いミシン糸を作るための仮撚り機を1台導入し、仮撚りを4台体制にする。これにより生産能力は20%ほど増える見込み。

 グンゼ・ユナイテッドは、協力工場で仮撚り・合撚した糸を自社工場で染めている。染色能力は月間200トン。売上高の8割は非日系向け。世界的に有名な大手スポーツメーカーの「指定」を得たことなどが、増収につながった。

 グンゼは、日本市場向け製品への採用を大きく増やすことは難しいとして、既存顧客への販売を維持しつつ、主にグンゼ・ユナイテッドとグンゼ・ハノイを通じて、欧米市場向け製品への採用の働き掛けを強める。

〈ASEAN向け物流が好調/カンボジアの潜在需要に期待/大森廻漕店〉

 大森廻漕店(東京都港区)は、タイとベトナム、カンボジアの3拠点での東南アジア物流が好調に推移している。昨年来からバイヤーズコンソリデーションサービスや陸送の充実を掲げ、その成果が出ている。同社の濱田雅弘常務国際本部長は「この3拠点は(経済的に)ボトムアップし、物量のポテンシャルも大きい」と見る。

 同社が強みを発揮しているコンソリデーションは、(顧客の)調達先の貨物を集めてコンテナ化し、日本の顧客へ輸送する物流サービス。荷受けや通関、船積み、配送といった一元管理を可能にし、貨物の集約化でコスト削減にも寄与する。同社は繊維製品の物流を主力にしているが、近年は工業機械や食品、雑貨類の取引量を増やしており、物流自体が多様化しつつある。しかし、「繊維関連の物量も増えている。結果的に運ぶ種類が増えてきた」と説明する。

 今後は軌道に乗っているタイ、ベトナムでの物流に加え、カンボジアでの新たな投資を検討する。「アパレル企業が作ったモノをどこに収納・保管するか。倉庫の規模と(現地に商品を置くための)コストに焦点が当たるだろう」と話す。

 拠点化で成果が出ているベトナムと、物量が増えつつあるカンボジアについて、「まだリサーチ段階で具体策は何も決まっていない」と前置きしながらも、倉庫の増強に含みを持たせた。特にカンボジアの首都プノンペンにある現地法人への引き合いが増え、経済成長に付随して道路などのインフラが整備されたことも、問い合わせが増えた要因。

 カンボジアでは、既に中国系企業が多数進出し、ビジネスで影響力を強めている。大森廻漕店では、価格競争に巻き込まれない独自性や付加価値を訴求し、先行する中国系企業に対抗する。

〈バングラデシュ物流強化/ミャンマー・日本間も短縮/日新運輸〉

 日新運輸(大阪市此花区)は、バングラデシュの物流機能強化に向けて、事務所開設の手続きを進めている。将来の法人化も視野に、事務所をまず設置して「顧客サポート体制を強める」。ミャンマー・日本間の輸送ライン「スマートマイロード」の利用者増にも引き続き取り組む。

 同社は中国以外のアジアではグループ含め、ベトナム、ミャンマー、カンボジアに拠点を持つが、バングラデシュにはない。縫製品OEMを主力とする取引繊維商社の幾つかが同国に法人や事務所を設置し、縫製点数を増やしている傾向を受け、同国での物流サポートが必要だと判断した。「時期や人員は未定」だが、事務所をまず設置する。

 同社によると、既存の取引商社によるバングラデシュ縫製はTシャツなどの軽衣料を中心に増加の一途。今年3月に親会社になったエーアイティー(大阪市中央区)が代理店を通じて同国の物流事業を進めていることから、「(エーアイティーとの)シナジーも狙っていく」。

 同社はミャンマーに日新〈ヤンゴン〉という法人拠点を持っている。ミャンマーと日本の輸送は海路が一般的だが、同社が現地パートナーとも連携して導入するスマートマイロードは、陸路と海路の組み合わせ。海路のみでは通常約30日かかるところを、15日に短縮できる。具体的には、ヤンゴンからタイのバンコクまでを陸路とし、バンコク港から日本までが海路というルート。

 さらに、これまではミャンマー・タイの国境で荷の積み替えが必要だったが、これが不要になる。現地パートナーがそのライセンスを持っているためで、これにより手間と時間がさらに省略される。