繊維ニュース

特集 北陸産地(2)/将来に向けて事業基盤を強化

2020年03月25日 (水曜日)

〈蝶理/新組織で新たな取り組み/糸のブランディングを強化〉

 蝶理は来年度、五つのプロジェクトを推進し、繊維事業で10%の増益を狙う。北陸産地との取り組みも各段階で強化する。

 4月1日付で機構改革を行い、繊維関連の3本部を統合して「繊維本部」とする。統合効果を発揮すると同時に、五つの新プロジェクトをスタートし、糸、テキスタイル、縫製品の各段階で事業基盤の強化を図る。

 新プロジェクトは、「差別化糸」「環境」「地政学」「縫製」「テキスタイル」を切り口にする。差別化糸の切り口では、特殊糸や高機能糸の取り扱いを拡充すると同時に、高機能伸縮糸「テックスブリッド」などのブランド展開を強化する。環境配慮型素材も「エコブルー」を軸に拡充を図る。

 米中貿易摩擦など世界情勢の変化を背景に、新しい商流の構築に取り組む。ここでは北陸産地との協業も増やす考えで、海外生産の一部を日本に戻すことを計画している。

 統合効果を、縫製品事業の拡大にも生かす。縫製品はこれまでテキスタイルと製品の二つの部署で展開していたが、繊維本部に一体化することで、スケールメリットを出すとともに、アフリカなど縫製地の拡充も進める。このほか、原料から一貫で展開する強みを生かし、メーカーと協業しながら、グローバルテキスタイル展開を強化する。

 北陸産地への今期糸販売は、市場環境の影響を受けて前年比減少となる見込み。差別化糸、特殊糸の強化とともに、買いやすい価格帯のレギュラー糸を含めて品そろえが整ったことから、来年度は10%増を計画し、巻き返しを図る。

 北陸産地製のテキスタイルを海外に販売していく取り組みも加速する。北陸と海外ブランドの接点を増やすため、今下期は目標とするブランドへの仕掛けを重点的に強化している。

 独自のシステムを活用してモノの動きの見える化や生産進捗(しんちょく)管理による効率化を可能とする「北陸プラットフォーム」の取り組みも進める。既に糸加工の外注工場とネットワークでつながったが、今後に向けてテキスタイルでも話が進んでいる。本部のメンバーだけでなく情報システム部の専任担当者も入れてチームを作り、取り組みを進めている。

〈一村産業/ユニフォームなどを拡大/新しい販売手法を構築〉

 一村産業の今期は増収増益となる見通し。3月は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けているが、2月までの拡大が寄与する。来期は増収増益を計画する。市場環境を厳しく見る中で、エコやストレッチをキーワードに新しい商品の開発を加速するとともに、新たな商流創りに取り組む。

 藤原篤社長は足元の状況について、「新型コロナの問題がどう収束するかは読みづらいが、少なくとも4~6月は影響が出る」とみる。コスト削減や与信管理に気を配るとともに、新しい商品・新しい商流創りに取り組み、「収束した際に一気に動けるよう準備を進める」とする。

 繊維は来期、原油安などの影響が懸念される中東向けが横ばいで、ユニフォームやファッションは拡大する計画。ユニフォームでは得意とするストレッチ関連で新しいモノ作りが進んでいるほか、夏物でも通気性や接触冷感など実感できる涼感素材開発に注力する。この2年で販売手法を変えてきたことを拡大につなげる。「特に別注は情報が重要になる」という中で、昨年からCRM(カスタマー・リレーション・マネジメント)システムを活用し、情報を共有しながら新しい販売手法を構築。企業からのニーズや商品内容など案件ごとの情報をデータベース化していき、今後の営業に生かしていく。

 ファッションは今期、中国や韓国が低迷したが、来期は好調な欧州向けの素材を韓国や中国にも展開するなど商品を変えながら拡大する。

 北陸産地との取り組みは引き続き強化する。藤原社長は、「厳しい事業環境下でのスタートとなるが、そのような中で従来の商品で従来のやり方をしていれば落ち込んでいく。いろいろな商品の高度化、開発を進めることが重要で、北陸産地の力をますます借りることになる」と話す。

 来期から新中期計画がスタートするが、これに合わせて企業理念やコーポレートスローガン、行動指針を新しくする予定。

〈旭化成アドバンス/北陸との取引が拡大/ジオテキスタイルが拡大〉

 旭化成アドバンスは今期(2020年3月期)、北陸産地との取引額を順調に拡大している。来上期は新型コロナウイルスの影響など不透明な要素が残るものの、ジオテキスタイルで拡大を計画し、アウターなども堅調を維持する見通しだ。

 今期の繊維事業は裏地が10月以降失速しているものの、スポーツやアウター、資材などが順調に推移している。北陸産地との取り組みはスポーツが中心のウオータージェット織機(WJL)が順調に拡大し、エアジェット織機(AJL)とレピアのアウター用も輸出の好調などで史上最高の販売量を見込む。車両用や建築・土木などレピアによる資材用織物も好調で、丸編みもスポーツを中心に順調に推移する。経編みはトリコットのハイテンションが伸び悩んでいるが、ダブルラッセルは「フュージョン」中心に堅調で、シングルラッセルもインテリア中心に回復している。

 来上期はWJLが前年同期比約10%減、AJLが横ばい、レピアが10~20%増を見込む。WJLは暖冬の影響で4~6月が前年比10~20%減となるが、7~9月は前年並みとなる見通し。AJLとレピアの衣料用織物は裏地が約10%減となるが、アウター用は輸出が好調を維持してその落ち込みをカバーする。

 レピアの資材用織物は、特にジオテキスタイルを拡大する。ジオテキスタイルは今期、前年比50%増となる見通し。来期は新たな企業との取り組みを含め、さらに20%拡大する方向で増産スペース確保に動く。

 繊維資材は不織布を含めて繊維売上高の20~30%を占めるが、「今後さらに比率を高めていく」(橋本薫繊維本部長)計画。今後は特にテキスタイルでの拡大を見込む。

 環境配慮型素材群「エコセンサー」も拡大していく計画で、スポーツやアウターで好評を得ているほか、今後はインナーなどでも提案を進める。アウターは来春夏の提案が、北陸産地への10月以降の発注に寄与する可能性がある。スポーツなどが加わる21年度からは「一定規模の数量が販売に寄与する」とみている。

 北陸産地への原糸販売は、「ベンベルグ」に加え、レーヨンやアセテートに力を入れる。特にアセテートは、加工拠点を整備し、資材やアウターなどで拡大を狙う。

〈前多/環境配慮型素材を強化/レピア織機を夏に更新〉

 前多(金沢市)は新商品開発や生産体制の整備に注力する。先の市場環境が読みづらくなっている中、各方面で事業基盤の強化に取り組み、市況回復時に備える。

 同社はカーテンなどのインテリア、中東民族衣装、スポーツ、婦人服地、資材、ユニフォーム、カーシートなど幅広い用途に展開するが、足元は大きく落ちることなく安定して推移する。ただ、暖冬や米中貿易摩擦、新型コロナウイルス感染拡大の影響が懸念される中で、先を見た取り組みを重視。山本一人社長は「5月以降の不透明感が強く、リーマンショックの時と同じ考え方で手を打つ」と話す。

 開発は「複合」に重点を置いて進めている。さまざまな糸を扱っている強みを生かし、糸での複合や交織などで付加価値を高めていくもの。サステイナビリティー(持続可能性)を視点にした開発にも引き続き力を入れていく。

 織布子会社では、エアジェット織機とウオータージェット織機(WJL)を持つ前多工業、WJLの鹿島テックス、レピア織機のネオテックスとも、この数年で設備更新を行いながら体制を整えてきた。前多工業では昨年夏にカーシートやインテリアなどの強化のため新たにAJLを導入。ネオテックスではレピア織機のイテマ製への更新を進めており、今夏も老朽化した機械をイテマ製の高速機に更新する。

 新型コロナ感染拡大の問題で先の市場環境が読みづらいことから足元は様子見だが、状況が落ち着けば産業資材用の拡大などを視点に設備投資も検討する。

〈山越/機能糸の開発を強化/GRS認証を取得〉

 山越(石川県かほく市)の2019年度(19年12月期)は売上高39億円で前年比8・5%減となったが、営業利益は黒字化し、減収増益となった。18年度は営業損失を計上していたが、不採算分野を縮小して平均単価を上げるとともに、社内でのコスト削減を徹底的に進めたことなどが奏功した。

 独自の機能糸の開発も進み出し、快適なストレッチ性や膨らみ感を持つポリエステル糸「クリンプリッチ」など中量産につながる商品も出てきた。北陸ヤーンフェアやジャパンヤーンフェアへの出展効果も徐々に出ており、新規顧客への提案も進み出した。「これから新しい開発の効果が着実に現れ出す」(兪建鴻常務)見通しで、今後もさらに開発を強化していく考えだ。

 20年度は増収増益を計画する。1~3月の稼働は大きな落ち込みなく推移しているが、新型コロナ感染拡大の影響など先行きの不透明感が増している中、各面で手を打つ。機能糸のさらなる拡大に注力するとともに、海外協力工場との連携もさらに深めていく。国内では自動車関連やユニフォーム、インテリアなどを強化するとともに、資材での用途拡大にも取り組む。海外協力工場では新たに特殊糸の生産を始めることも検討している。

 サステイナビリティーへの取り組みもさらに強化する考えで、このほどリサイクルの国際認証である「GRS」も取得した。

〈広撚/重点3分野で開発強化/今春に織機を更新〉

 広撚(福井市)は、コスト削減や納期対応の強化、生産子会社での設備更新などを進め、来期(21年5月期)での反転攻勢に向けて手を打つ。

 今期(20年5月期)は厳しい状況で推移する中、来期に向けて基盤を強固にする。改めて展開品番を見直し、在庫の圧縮を図る。重点分野はさらに深耕する一方、売れ筋を見極めながら似た商品は集約し、全体の品番数を絞り込む。

 トリアセテート、ポリエステル、再生セルロース系を重点分野に位置づけ、開発を強化する。重点分野での品ぞろえはさらに深堀りしていく方向で、「全体の市況が厳しい中でも好調な素材はあり、例えばトリアセテートでは麻調などが売れている。いかに新鮮さを出せるかがポイントの一つで、改めて見せ方を工夫して訴求していく」(藤原宏一社長)とする。

 環境配慮型素材の開発にも力を入れる。差別化素材を再生糸に置き換える取り組みも加速する方向で、「品そろえができつつあり、バージンとそん色ない表情を持つ商品ができている」と言う。

 新規用途開拓にも注力する。別注を中心にユニフォーム用途の拡大に注力するほか、資材を含めた非衣料用途でも取り組みを進める。引き続き海外市場での拡大にも取り組む考えで、「欧米やアジアなどの市場に粘り強く取り組んでいく」。

 生産子会社である広撚繊維工業(福井県坂井市)の体制整備も進める。老朽化した設備の更新で昨年はエアジェット織機(AJL)とレピア織機の入れ替えを実施したが、今年もAJL4台、レピア織機3台を更新し、3~4月に稼働させる計画。AJL、レピアともイテマ製で、老朽化した設備を最新機種にすることで生産性を高めるとともに、イテマ製にそろえることでメンテナンスもしやすくする。

〈津田駒工業・寺田武志取締役/今期は30%増を計画〉

 津田駒工業は今期(20年11月期)、前年比30%増を狙う。寺田武志取締役繊維機械事業統括にポイントを聞いた。

 ――今期の織機販売は。

 織機はウオータージェット、エアジェットとも伸ばし、前年比30%の拡大を計画しています。インド、中国とも市場が回復してきたところに新型コロナウイルスの問題が出て、足元は様子見になっていますが、状況が落ち着けば動きが出てくるとみています。後半に受注が集中することも予想されるので、そのための体制整備も重要なポイントです。インドネシアやパキスタン、バングラデシュ、中央アジアなどインドと中国以外の市場でも拡大を狙います。

 ――日本市場でのポイントは。

 日本は横ばいの計画ですが、前半は厳しいとみています。北陸産地では昨秋ごろから先を厳しくみる声が増え始めましたが、そこに新型コロナウイルス感染拡大が出て足元の受注はブレーキがかかっています。

 ――日本市場への提案は。

 ユーザーが新しい機械に求める要素が変わってきています。引き続き突き抜けた生産性や安定した品質へのニーズはありますが、今はそれよりも、メンテナンスのしやすさや、再現性の高さに魅力を感じるユーザーが増えており、その面での提案を強めます。

 ――人手不足への対応がポイントになる。

 古い機械に手間をかけることができない悩みがあり、メンテナンスへの関心は高い。例えば稼働状況を監視しながら予防保全を実現する技術の提案などを強めます。腕利きの職人が少なくなっているので、再現性の高さもポイントの一つになります。定番なら自動設定機能がありますが、日本ではそのニーズは少ない。各企業が培ってきたノウハウを数値化し、場面に応じて生かし、高い再現性を実現していく。データを積み重ねていくことで、さらにこの技術は生きてきます。

〈カジグループ/ブランド事業を強化/非衣料用途を30%に〉

 カジグループは100周年を迎える2034年に向けて長期ビジョンの策定を進めている。ここでは①商品・販売の再構築②生地・製品のファクトリーブランドのさらなる強化③非衣料用途の拡大④IoTやAI(人工知能)を活用した生産の合理化―などに取り組む模様。

 梶政隆社長は「開発を改めて見つめ直し、再び一から始める気持ちで新しいモノを作っていきたい」とする。強みとするナイロン薄地織物の一段の進化を図るとともに、これまで培った技術・特許を他分野にも広げていく。

 新工場の建設はいったん延期することとしたが、目指す姿に向けて重要な拠点になるとみられる。新工場は市場動向を見ながら、改めて着工時期を決める。

 新工場は新たに導入する織機に加えて、丸編み機も移管し、アウトドアやウエアラブル、カーボン、メディカルなど各用途を集約する構想。多能工化や合理化のほか、さまざまな分野の開発も1カ所に集めることでシナジーを狙う。

 ファクトリー型ブランドの強化も重視する。高感度な機能性テキスタイルを展開する生地ブランド「カジフ」のさらなる進化とともに、生地の強みを生かしたアパレルブランドも拡大を狙う。

 アパレルはセットアップでのブランド展開を強化する。「ティモーネ」は4月に第一号店を金沢市片町にオープンするほか、ファッションディレクターの干場義雅氏との協業で新ブランド「K―3B(ケースリービー)」を立ち上げる。ティモーネはイタリアンカジュアル系で40~50代を狙うのに対し、K―3Bはシンプルなデザインで30~40代に向けた新しいセットアップを提案する。今後はレディースブランドも視野に入れる。

 資材用途や新規事業の拡大にも取り組む。「現状はほとんどない」という資材は将来的に全体の30%を目指す。薄地織物で保有する技術・特許を生かし、厚地を含めて開発に取り組む。自社設備だけでなく、レピア織機を保有する協力工場との連携も含めて検討する。

〈福井経編興業/医療や産資の比率高める/臨床試験も着実に進む〉

 トリコットなど経編み地製造大手の福井経編興業(福井市)は衣料用途での開発を強化するとともに、医療資材や産業資材のウエートを高めて事業構造を強固にする。医療資材、産業資材ともこれまでの開発が実を結び出し、着実に取り組みが進んでいる。

 医療資材はクリーンルームの設置や、医療機器の品質保証の国際標準規格「ISO13485」を繊維業界で初取得するなど投資も行いながら、数年前から取り組みを進めてきた。例えば大阪医科大学、帝人と取り組む「心・血管収縮パッチ」は昨年春から臨床試験が始まり、症例数も拡大。実用化に向けて取り組みが着実に進み出している。

 同商品は、既に厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象品目になっており、30症例の臨床試験を終えた後は早期実用化が見込めるようになっている。早ければ来年後半には売り上げにつながる見通しだ。心・血管収縮パッチ以外でも開発に取り組み、医療資材用途の拡大を図る。

 産業資材用途にも注力する。足元の販売は微増で推移しており、「時間がかかる分野だが、着実に拡大させていく」(高木義秀社長)とする。

 主力の衣料用途でも開発を強化する。編み機は1~3月もフル稼働が続くが、暖冬の影響や新型コロナウイルス感染拡大など先行きの不透明感が強まる中、「4~6月に向けてどう手を打つかがポイント」と話す。来春夏向けの開発を強化してカバーを図るほか、「エコ」や「サステイナビリティ(持続可能性)」をキーワードにした開発にも注力していく。

〈丸井織物/20年度に売り上げ300億円へ/IT絡めて新事業創出〉

 丸井織物(石川県中能登町)は長期ビジョン「ビジョン2030」を策定し、その第一期として新中期5カ年計画「ネクストステージ300」をスタートさせた。連結売上高200億円を目指した前中計は15~20年の期間で策定していたが、19年度までの流れで達成できる見通しがついたことから、1年前倒しで完了して新長期ビジョンと中期計画を策定することとした。

 10年先を見据えた長期ビジョンでは「世界に飛躍するカクシン・センイ・カンパニー」を目指し、イノベーションの創出に取り組む。その中で20~24年度の「ネクストステージ300」では、ITの力を活用しながら次世代のモノ作り・事業を生み出す取り組み「X―Tech(クロステック)」で、連結売上高300億円を目指す。

 前中計は倉庫精練の子会社化や縫製企画会社との協業など事業領域を川下に広げるとともに、ITを活用した事業も着実に育った。その成果を生かし、新中計ではITを活用して次世代のモノ作り・事業の創出に取り組む。

 衣料、産業資材、IT・新規事業を重点分野に位置付け、衣料は現状の売上高133億円から173億円、産業資材は37億円から55億円、IT・新規事業は9億円から72億円に拡大する。

 衣料はIoTやデジタル化を進めながらサプライチェーン強化を図るとともに、海外展開を加速する。産業資材はカーシートやエアバッグなど既存事業以外でも開発を強化する。4月からは産業資材事業部を設置し、開発と営業が一体となって取り組む体制を整える。工場では既にレピア織機5台を導入するなど拡大に向けた開発を強化している。

 大きく拡大するIT・新規事業はオリジナルTシャツをネットで販売する「UP―T」が着実に伸びている。新中計ではオリジナルグッズ・カスタマイズを視点にネット販売をさらに伸ばすとともに、M&Aも検討していく。

〈松文産業/各工場がスタイルを確立/協業で開発を強化〉

 合繊長繊維による中肉厚地織物を主力とする松文産業(福井県勝山市)の今年度は堅調に推移している。この数年、顧客のニーズに合わせて生産体制を整備してきたことが背景にある。

 同社は織布の本社・勝山工場と鶴岡工場(山形県鶴岡市)、仮撚加工の栗東工場(滋賀県栗東市)の3拠点を持ち、糸加工から織布までの一貫生産体制を敷く。合繊メーカーの開発糸を糸加工も含めて生地に仕上げることに重点を置き、染色加工場などとも連携しながら開発を強化している。

 この数年は、中肉厚地織物を中心に開発を強化してきた成果が出た形で、「対応範囲が広がり、少しずつ商品として現れ出した」(小泉信太郎社長)と言う。かつては勝山工場、鶴岡工場ともにブラックフォーマル用が中心だったが、現在ではそれぞれが独自のスタイルを確立し、展開する商品につながった。今後も原糸メーカーや染色加工とも協業しながら開発を強化していく。

 生産体制の整備も引き続き進める考えで、鶴岡工場ではイテマ製のレピア織機への入れ替えを進めながら生産体制を整備してきた。勝山工場では修理・修繕を重ねながら今後の在り方を検討しており、「今後さらに体制を整備していく」と言う。

 水平連携も引き続き重視する。以前から設備能力を超える大ロットへの対応として、産地内の撚糸、整経、機業と連携・協力し合う取り組みを進めてきた。昨年はさらに大阪南部産地の池藤織布(大阪府貝塚市)との協業もスタートするなど他産地との連携も始まっている。

〈カツクラ/製販一体の取り組み推進/ロス削減で微増益に〉

 自販型企業、カツクラ(福井市)は今期(2020年12月期)、製造と販売が一体となった取り組みをさらに強化する。市場環境が厳しさを増す中、「生産と販売の両立に力を入れて、全社で効率を高めていく」(勝倉雅己社長)とする。

 同社はカーテン、ロールスクリーンなどのインテリア向けを主力とする織物の自主販売が全体の90%を占める。多品種・小ロット型の生産が特徴で、設備はエアジェット織機とレピア織機で計140台持つが、生産品種はそれ以上の170~180品種に及ぶ。

 前期(19年12月期)は前年比で微増収・微増益となった。主力のインテリア市場は「コントラクトは堅調だが、ホームユースは低迷するなど市場は決して良いとは言えない状況だった」と言うが、製販一体の取り組みが進展し、生機の不良率が下がるなどロスが減り、コスト削減につながった。人材育成の強化に取り組んできた中で、細かい部分を含めさまざまな取り組みが進んだ。

 20年は市場環境が厳しさを増すとみる。引き続き製販一体の取り組みに注力して前年並みの業績を計画する。提案型企業として企画力、開発力を高めながら生産品種の高付加価値化を進めるとともに、製販一体となって効率的な体制を構築し、さらなるロスの低減につなげる。

〈テックワン/メディマットの展開広がる/フィルムを海外へ販売〉

 テックワン(石川県能美市)は市場環境が厳しさを増す中、受託加工での基盤強化や新規事業の拡大に注力する。

 新規事業ではポリウレタン超微多孔フィルムの海外販売に取り組む。「先端領域での開発を加速して自社での透湿防水加工をさらに強化する」(竹田忠彦会長)一方で、定番ゾーンについてはフィルムで販売していく形で住み分ける。海外販売は現在、台湾や韓国などに提案を進めており、高い評価を得ていると言う。

 透湿防水機能を持つ耐圧分散マットレス「メディマット」にも注力する。特に介護や病院向けに力を入れており、患者用や手術用など用途に応じた開発を進めている。例えばベッドだけでなく車椅子用の展開も始まったほか、足置きマットや手置きマットも動けない状態の負担を和らげると好評を得ている。今後も大手病院の医師ともタイアップしながら、ニーズに合ったアイテムを開発し、展開を広げる

 主力の受託加工では働き方改革による生産性向上や現場の改善活動などに取り組み、基盤を強化する。北市幸男社長は「コストダウンをもう一段進める」とし、仮に売り上げが減少しても利益が出せる体制を構築する考えを示す。

 環境配慮型の生産体制をさらに整備する。昨年9月に本社工場と辰口工場で環境認証「ブルーサイン」のシステムパートナーになったほか、新たに溶剤回収での設備投資も行った。再生糸やバイオ由来、生分解性など環境配慮型素材への対応にも力を入れていく。

〈藤井/産地との連携強化/海外市場にも挑戦〉

 産元商社の藤井(福井市)は、産地企業との連携を強化しながら、新規用途・新規市場の開拓を進める。新たな取り組みでは欧米市場の開拓にも挑戦する。

 同社はプリント下地を柱に、ジャカードやカットジャカードなどさまざまな素材をそろえ、小ロット短納期対応に特徴を持つ。特に春夏の強撚素材を得意とするが、今後は薄地と中肉の間や中肉素材なども拡充していく。ウオータージェット織機40台を持つ高岡工場(富山県)の機能を生かし、加工場とも連携しながら新素材の開発を加速する。

 開発で重点を置く分野の一つが環境配慮型素材で、薄地を含めて再生ポリエステル糸使いなどの開発を進めている。北陸の織布企業や加工場と連携し、主力のレディースだけでなく新しい用途にも取り組んでいる。足元ではブラックフォーマル用が堅調なほか、かばん用など新たな用途への販売も進みだした。

 インドのサリー用も堅調に推移する。同社は北陸生産品を中心に扱うが、この用途だけは設備の関係で海外生産になる。日本に少ないフライシャトル織機を使い、ベトナムでポリエステルをベースにラメ糸を絡めて生産している。

 欧米輸出の可能性も探る考えで、現在は昨年の日本貿易振興機構(ジェトロ)商談会でつながった欧米ブランドへのアプローチを進めている。中肉タイプの梨地や絡み織りなどで提案が進んでおり、福井の産元商社とも連携しながら取り組みを進める。

〈第一織物・吉岡隆治社長/目的は新しい価値の創造〉

 3月にニッケグループとなった。吉岡隆治社長に今回の決断と今後の方針について話を聞いた。

 ――3月4日付でニッケグループとなりました。

 もうすぐ69歳になりますが、後継者がいませんので会社をどう存続させるかの悩みがありました。社員や取引先が安心できる体制になったと考えています。

 ――相手は合繊でなく、ウールでした。

 ニッケと第一織物が一緒になることで新しい価値の創造が可能となります。北陸がウールという新しい素材を取り込むことで新しい価値やマーケットを創造し、産地が大きく発展する起点になればと考えています。

 ――社長を継続する。

 運営方針はそのままにニッケから取締役として開発、管理、営業のプロが来たので頼もしく感じています。近代的な工場を建設した時、自販にかじを切った時に続く第三の起業と捉えて力を注ぎます。今回の第一の目的は新しい価値の創造です。新商品だけでなく、新しい営業手法や技術、ビジネスモデルを模索します。

 ――他の産地を含めてM&Aを考える企業は今後も出るとみられます。クローズまでスムーズに進んだポイントは。

 今の企業価値は資産ではなくもうける力で、経営者はしっかりと利益を出す体制をつくることが重要です。中小企業でもガバナンスやコンプライアンスがしっかりしていないと通用しない時代です。当社は上場を目指してその体制を整備していたので、スムーズに進んだ要因の一つになったと思います。

 ――決断の際に重視した点は。

 守りたかったのは社員とわれわれを支えてくれている国内外の生産・販売チーム、そして「ディクロス」というブランドで、それを第一に考えました。最善の選択をしたと考えていますが、どんな回答にも100%の正解はありませんし、ゼロ%ということもない。もしかすると将来にこれで良かったのかと考えることがあるかもしれませんが、決断に沿って死ぬまで社長の重責を果たしていきたい。これでハッピーリタイアはなくなり、さらに忙しくなると思いますが、必要とされる人生は楽しいと考えていますし、第三の起業を楽しみにも感じています。