特集 尾州産地総合(3)/在名商社/尾州産地との取り組み

2020年03月26日 (木曜日)

〈タキヒヨー/グローバルテキスタイル営業部 テキスタイル営業部長 谷口 陽一郎 氏/尾州発信の「架け橋」に〉

  ――尾州の強みと課題をどう捉えていますか。

 尾州は高品質なモノ作りを続ける世界有数の産地です。技術もさることながら対応能力も高く、短サイクル、小ロットから即応する。日本ならではの細やかな仕事が強みです。半面、長所や特徴を訴求する発信力に課題があるので、その発信に関わる「架け橋」でありたいと考えています。

  ――尾州との取り組みを教えてください。

 10社の機布企業との連携をより深め、トレンド傾向やニーズを共有し独自の生産ルートを構築します。ただ情報やニーズを投げるだけでなく、企画立案に関わり方向性を決める「道しるべ」にならなくてはなりません。欧州拠点を生かしながら情報収集を行い、独自調達の糸を尾州で製織するといったオリジナルの背景を構築します。商品開発を主目的として設置した一宮工場の、英式紡績を生かしたモノ作りもさらに推進していきます。

  ――今後の尾州との展開を教えてください。

 尾州の産地特徴を生かし、独自性と希少性の追求を進めます。量の追求ではなく、「脱ベーシック」の品種をいかに増やすかで他社との差別化を図る。今後も尾州の技術と即応力に期待し、しっかり組むことで産地に還元したいですね。

〈瀧定名古屋/取締役 婦人服地部門担当 瀧 浩之氏/緊密な連携でモノ作り〉

  ――尾州産地の特徴をどう捉えていますか。

 いい意味で非常に奥が深い産地です。多品種少量生産が可能で、短サイクルでの対応力も優れています。風合いや染色整理加工も高い技術力で多様な要望に応え、修整技術も高い。分業ながら生産工程を受け持つ企業がそろっているのも特徴です。

  ――尾州産地と具体的な連携を続けていますね。

 モノ作りを支えるために具体的な取り組みを推進しています。織布企業は高齢化で人手や後継者の不足が課題です。われわれは原料手配から生地組織の設計、生産管理まで織布企業との連携を生かしサポートに取り組んでいます。かゆいところに手が届くような連携で、高品質かつ安定した供給体制を構築していきます。

  ――今後の尾州との方向性はいかがですか。

 昨年11月にスタイレムと共同で「生地外観検査基準説明会」を開き、染色10社を含む42社の参加がありました。検反基準を策定し、産地の品質向上に寄与しつつサプライチェーンへの品質訴求につなげます。尾州の有力企業と共同取得したウール調達に関する国際基準のRWS(レスポンシブル・ウール・スタンダード)認証も海外の販売アプローチに積極的に活用します。

〈豊島/一宮本店 一部部長 伊藤 彰彦 氏/製販両面で貢献を〉

  ――尾州との取り組みを教えてください。

 当社の一宮本店は梳毛糸を中心とした糸を尾州に供給しています。ほかにも再生ウールを使った「アプリクション」やウールライクなポリエステル長繊維「ウールナット」、麻調ポリエステル長繊維「FLD」などのバリエーション豊かな商品をそろえています。最近ではストーリー性がうたえてトレーサブル(追跡可能性な)素材として羊毛原料の取り扱いも始めました。

  ――尾州の魅力はどういったところでしょう。

 全国でも尾州は繊維関連の事業所数が最も多い産地です。そのため各段階の工程にそれぞれ企業があり、一気通貫でモノ作りできるのが最大の魅力でしょう。世界的に見てもそれはとてもユニークで、当社としてもそうした部分を世界にもっと発信できればと考えています。

  ――尾州の現況はいかがですか。

 暖冬の影響でこの秋冬向けの動きはよくありません。新型コロナウイルスの影響がそれに追い打ちを掛けているような状態です。厳しい中ですが、当社としては尾州の産地企業の人たちに喜んでもらえるような仕事をすることを第一に考え、製販の両面でお手伝いできればと思います。