特集 アジアの繊維産業Ⅰ(7)/わが社のアジア戦略/大和紡績/新たな統括拠点も検討/海外戦略も“全体最適化”

2020年03月30日 (月曜日)

 ダイワボウホールディングスは4月1日付で中間持株会社の大和紡績にダイワボウポリテック、ダイワボウプログレス、ダイワボウノイ、ダイワボウアソシエ、ダイワボウエステートを統合し、繊維事業を担う中核会社としての位置付けを鮮明にする。これに合わせて中国とインドネシアを中心に展開する海外事業も全体最適を目指すことになる。そのため統括機能を持った新たな拠点の設置も視野に入った。

〈衣料品、産業資材ともに拡大へ〉

 大和紡績にとって中国やインドネシアなどアジア地域の生産・販売拠点は引き続き繊維事業の中核的役割を担うことになる。2019年度(20年3月期)は中国の蘇州大和針織服装で、コート縫製が暖冬の影響で不振ながらも、有名カジュアルブランドのOEMが好調に推移した。成形ニット製品製造の大和紡工業〈蘇州〉も成形ニット製品の需要拡大の追い風を受けて堅調な稼働が続いている。

 カジュアルブランドのOEMで成功を収めている理由の一つとして、第三者監査に対応した生産体制を早くから構築してきたことがある。近年、世界的にSDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まり、欧米ブランドは生産プロセスでのCSR(社会的責任)やコンプライアンスに神経をとがらせている。こうした要望に応えることができる点が強みとなる。暖冬によって同社が得意とする春夏物の需要期が長くなり、それに合わせて受注も増加するといった予想外の動きもあった。

 インドネシアではダイワボウガーメントインドネシアが対米輸出する布帛トランクスの縫製で大きな役割を担ってきた。ただ、ここにきて米国経済が一服しつつあることやメンズインナーのトレンドが布帛トランクスからニット製ボクサーパンツへと変わりつつあることから受注はやや勢いがない。それでも19年度は医療用コルセットや羽毛布団の“側(中わたを入れる前の半製品)”など寝装分野の縫製を拡大しており、生産品種の多様化で稼働率を維持する戦略が成功した。

 ダイワボウの繊維事業は、産業資材分野でもアジア地域での生産・販売を拡大している。製紙用カンバスは日系製紙メーカーの進出などからASEAN地域での需要拡大が続く。また、土木資材・建築資材も地産地消への取り組みが進む。

 こうした中、特に力が入るのが不織布分野。ダイワボウノンウーブンインドネシアは、需要拡大が期待できる紙おむつ向けにエアスルー不織布を供給する体制を整えている。日系紙おむつメーカー向けだけでなく現地メーカーへの供給も目指すなど、こちらも地産地消が目標となる。

〈アジア戦略も一体化〉

 こうした中、4月からダイワボウポリテック、ダイワボウプログレス、ダイワボウノイ、ダイワボウアソシエ、ダイワボウエステートが大和紡績に統合される。合繊、産業資材、衣料製品・テキスタイルの各事業がこれまで以上に連携することになる。

 大和紡績の斉藤清一社長は、今回の統合に関して「各事業会社は単独でも利益を出せる体制になっているが、さらなる成長に向けたステージに向かうには、事業会社が統合することで全体最適化を進めることが必要だと判断した」と強調する。特に人材や技術の融合を進めることに取り組む。その上でSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)への要求に応えることを基本戦略に据え、再生ポリエステル、綿やレーヨンといった生分解性繊維などを活用した“ファイバー戦略”を繊維事業一体となって推進する。

 こうした方針はアジア戦略にも当てはまる。斉藤社長は現在の海外子会社の構成に関して「中国もインドネシアも基本的には製造拠点である工場が中心。販売会社として大和紡績香港があるが、実際のデリバリーなど物流機能が不足している」と指摘する。このため今後、中国とインドネシアそれぞれで「地域での事業を管理・統括する拠点が必要」として、新たな拠点の設置を構想する。

 中国、インドネシアともに地域を統括する拠点を設けることで合繊、産業資材、衣料製品・テキスタイルの各事業が人材、技術の面で一体となり、さらに大和紡績グループとして資金力なども強化されることで、さらなる成長に向けた投資も拡大することができる。

 近年、先進的な生産プロセスや加工技術は日本国内ではなくアジアなど新興国で先行して実用化される傾向も強まった。こうした動きに対してもグループ外とのアライアンスも含めて積極的に導入を進めることでアジア地域での生産・販売の高度化を進める。

 ダイワボウホールディングスの繊維事業を担う中核会社として再スタートする大和紡績。アジア戦略も新たなステージを目指すことになる。