特集 アジアの繊維産業Ⅰ(11)/カケンのアジア戦略/ASEAN、南アジア強化/顧客第一の対応を

2020年03月30日 (月曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中国での営業再開が遅れるなど苦戦した。それでも2月中に各拠点とも営業再開し、通常に戻っている。中国リスクの高まりもあり、これまで進めてきたASEANシフトを継続し、南アジアも強化していく。

〈2月中に営業再開〉

 カケンは新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、中国での業務を一時停止したが、現在は中国の各試験室とも通常営業している。中国の春節休業期間が延期された当時は、情報システム部が中国の在宅勤務者をサポートするなど、再開に向けて一丸体制で臨んだ。

 2月3日の香港検査所を皮切りに、同10日に上海科懇検験服務、青島試験室、大連試験室が営業を再開した。同21日には上海科懇検験服務の南通分公司が稼働し、寧波試験室、無錫試験室も2月中に営業を開始した。「現地の提携先が再開交渉でも力を発揮」したことが、早期再開につながったようだ。

 香港検査所は「2月中旬から広東省からの試験依頼もあり、インドやASEANを含めて試験業務を進めている」と言う。上海科懇検験服務も再開以来、好調。南通分公司も試験設備があることで順調に推移している。

 大連試験室も試験設備を備えていることが、強みとなった。「新型コロナで道路封鎖など中国国内の輸送にも支障が出た。大連にラボを持っていたことで、そうした環境下でも試験ができ、顧客増につながった」ようだ。

 寧波試験室は横ばいながら、無錫試験室は新型コロナの影響を受ける前から好調であり、再開とともに元の勢いを取り戻している。

〈提携先との協力強化〉

 ASEANでは2005年からベトナムに拠点がある。提携先のビューローベリタスに日本人チームのスタッフを置く。「カンボジアからも試験依頼を受けている。ただ、新型コロナウイルス感染以来、カンボジアでの出張検査やセミナーは自粛」している。古くからベトナムで試験を行ってきた実績が、高く評価されている。

 タイもビューローベリタスの試験所に拠点を設ける。「ビューローベリタスはミャンマーにも拠点があり、同社の協力を得て、ミャンマー企業の試験をタイで行う」体制である。

 インドネシアのカケンインドネシアも好調だ。「日系だけでなく、華僑系工場や現地工場の依頼もある。インドネシアは春節がなく、春節中はインドネシアに仕事が回ってくる」こともある。

 南インドでは14年にバングラデシュのダッカに拠点を作った。韓国のKOTITIと提携し、KOTITIバングラデシュの日本チームが日本語で対応する。日本人駐在員も4月に1人増やし、2人体制となる。試験数は増加傾向にある。

 インドにはバンガロール事務所を昨年1月に開設。試験受付と試験相談、技術アドバイスを行うが、試験依頼も増えており、拡大を視野に入れる。「南アジアも強化していく」考えだ。

 中国でのCSR工場監査も進める。カケンの上海科懇検験服務は現地スタッフを教育して工場のCSR監査を推進。IRCA(国際審査員登録機構)に準拠した免許有資格者指導を基に実施する。今後もエリアを広げていくため、他の拠点でもスタッフを育成する。

 提携先のビューローベリタスは、「繊維に特化した検査機関として、カケンは世界的にも規模が大きい。兄弟のような関係にあり、リスペクトするパートナー」と評価。今後もアジアでの協力関係を強めていくという。

 新型コロナの終息がいつになるのか。繊維産業への影響は広がるばかりだ。生産面では中国製の原料、生地手配がどうなるかが、正常化への焦点になっていく。納期遅れを解消するために、試験にも短納期対応が求められていくだろう。「最悪のシナリオを考えれば、9月くらいに昨年並みになる覚悟がいる。とはいえ、まずは顧客への対応が第一。情報を集め、報告書の電子化も進め、短納期にも注力していく」

〈カケンインドネシア/試験機増設で納期短縮〉

 インドネシアでの試験業務と検品事業を行っているカケンインドネシアは、依頼企業のさらなる満足度向上のために納期短縮などサービスの拡充を進める。

 2019年度(20年3月期)も試験業務が堅調に推移した。岡野正光社長は「主力クライアント企業がインドネシアでの生産を拡大させており、それに合わせて通常の品質検査が増加した」と説明する。

 日系SPAなどがインドネシア内販を拡大させているが、インドネシアでは小売店に対して一定規模の国産品を扱うことが求められることも追い風になっているようだ。吸水速乾など機能性試験も主力クライアント向けで増加傾向にある。

 検品事業もまずまずだった。現在、インドネシアでは縫製の中心が中部ジャワ地区に移った。このためカケンインドネシアも中部ジャワ地区を中心に検品事業を行っており、今期は特にスポーツ衣料などで大口の受注を得た。

 一方、主力クライアント企業以外からの依頼は伸び悩んでいる。日本向けは国内の衣料品市況に勢いがないことに加え、他の東南アジア諸国との競争も激化した。

 このため「今後も引き続きクライアント企業の満足度を高めることが重要になる」として20年度は特に納期の短縮に取り組む。そのために今期末までに機能性試験の試験機を増やすなど試験設備の増強を進める。