特集 アジアの繊維産業Ⅱ(7)/わが社のアジア戦略

2020年03月31日 (火曜日)

〈一村産業/アジア事業、製販とも拡大へ/日、中、ネシア、越に印も加えて〉

 一村産業では、「グローバルコンバーター」を掲げて取り組んできたアジア4極(日本、中国、インドネシア、ベトナム)の生地オペレーションが順調に進展している。今後も4極を有機的に組み合わせてコスト低減と納期短縮、品質向上に努めるとともに、新たなコンバーティングの地としてインドを組み入れる。輸出も必達の拡大計画を組む。

 中国法人の2019年12月期の損益は5期連続の黒字となり過去最高を更新。内販拡大がけん引した。同法人では中国製生地を取り扱うが、糸は中国以外からが増えている。今期は引き続き内販拡大に臨むとともに、製販両面で日本本社との連携を深めて商品の高度化や販路拡大を狙う。

 インドネシアでは中東民族衣装向けの生機生産を行っている。こちらも伸びており19年度は前期比8%増収の見込み。今後はASEAN縫製向けファッション衣料用途を筆頭の拡大対象とする。

 ベトナム事業も順調に推移。19年4~12月は糸、生機、染め生地の取り扱いのいずれもが前年同期を上回り、全体で41%増と高い伸び率を見せた。21年3月期は生機の備蓄販売もスタートし、納期短縮ニーズに対応する。

 同社は輸出も順調に拡大中。19年度は同事業が10%増で推移するが、そのうち8割が中東向け。来期は残り2割の拡大を目指す。残り2割のうち、その50%を占めるのが欧州向けで、今期も23%増と拡大した。37%を占めるインドを含むASEAN向けも25%増と拡大。10%を占める中国・韓国向けは35%減と苦戦したが、来期は回復を狙う。シャツ地販売で先行したインドでは生地生産もスタートし、将来の内販拡大に備える。

〈澤村/中・タイ・越で生地生産/ベトナム拠点設立も検討〉

 澤村(大阪市中央区)は、「澤村グループ全体の利益に貢献する」ことを念頭に中国やタイ、ベトナムなどでアジア事業の拡大を狙っている。

 田中一志執行役員営業本部長代行によると上海法人の2019年12月期は黒字だった。累積損失も一掃できたがその要因は、数年前にインナー製品販売から撤退してトリコットの内販に特化したこと。トリコットは透湿防水コーティングした裏地と、サポーターなどヘルスケア関連向けが2本柱。最終ユーザーは欧米が大半で、欧米からの「日本製が欲しい」というニーズを捉えて事業拡大に成功した。

 今後も無理な拡大は志向せず、基本的に「特化戦略で」利益を追求しながらシェア拡大を狙う。

 一方、タイ法人のサワムラ・トレーディング〈タイランド〉は事業規模こそ7年前の設立以降順調に拡大しているものの、利益面では苦戦が続く。同国独自の会計制度や人件費といった付帯経費がかさんでおり、黒字化が当面の目標になる。改善に向けて日本人スタッフの減員と出張による“応援”体制の強化を図っている。

 ベトナムでも生地生産のオペレーションが進展中。トリコットのシャツ地や裏地をニッター、染工場と協業して生産する事業で、現状は全て対日縫製品向け。将来的には欧米やアジア各国向けも狙う。そのため同国で事務所設置を計画する。生地だけでなくインナー製品などの縫製品事業も今後可能性を探る。

 新型コロナウイルスについては、「これから影響が出てくるだろう」と危機感を示し、特に縫製品事業でマイナスの影響を懸念する。

〈クラボウインターナショナル/適地生産体制の整備に力/各国で生地からの一貫も〉

 クラボウインターナショナルは適地生産体制の整備に力を入れている。国内縫製工場である竹田(兵庫県朝来市)、村上(新潟県村上市)の両事業所でCAD、CAMなどの設備投資を進めて国産ニーズに対応するほか、中国、ベトナム、インドネシア、バングラデシュでの縫製と各国での生地、副資材手当てを強化する。

 同社の縫製国比率は金額ベースで約6割が中国。西澤厚彦社長は「新型コロナウイルスの感染拡大や関税の関係でチャイナ・プラスワンはまだ進む」とし、ベトナムやインドネシア、バングラデシュ縫製の基盤をさらに固める考え。とりわけ当面は品質トラブルなどが依然として多いといわれるバングラデシュ縫製の拡大に臨む。「当社の協力工場ではトラブルもなく順調」と言い、主にコスト対応策として同国縫製を強化していく。

 同時に力を入れるのが各国での素材からの一貫生産体制で、これによりコスト、納期、品質の対応力を引き上げる。

 将来を見据えて各国での内販拡大や輸出にも挑む。中国やインドネシアでは若干の内販実績があるが、これをベトナムやインドネシア、バングラデシュにも広げる。

 西澤社長は中国、インドネシア、ベトナム、バングラデシュの4国を軸にさまざまな国・地域で縫製事業を行う意義について、「リスク分散」を強調する。特に為替が変動した際には多様な生産場所を確保しておいたほうがいい。この観点に基づいて今後もアジア生産の基盤整備を進めるとともに、内販、輸出の拡大にも本腰を入れる。

 新型コロナの影響で、中国の協力工場で操業休止があり納期遅れが発生したが、振り分けなどの対策を進めている。