特集 第56回東京ファッション産業機器展―56th FISMA TOKYO(1)/RFID活用ゾーン新設/カイゼンがもたらす「モノ作り」の未来像提示

2019年09月11日 (水曜日)

 東京都ミシン商工業協同組合が主催する「第56回東京ファッション産業機器展―FISMA TOKYO」が18日に東京ビッグサイト(東京都江東区)の西3ホールで開幕する。今回は、2017年から継続してきたメインテーマ「KAI―ZEN(カイゼン)」の完結編として「価値あるものづくりのため」につながる技術、製品、サービスを提案する。カイゼンによって作り出されるモノ作りの未来像を提示する。会期は19日まで。2日間の来場者は、前回(1万212人)を7・7%上回る1万1千人を見込む。

 123社280小間(前回実績103社、273小間)が出展する予定。工業用ミシン・家庭用ミシンと部品、付属品のほか、パターン・メーキング機器などの準備工程機器やアイロン、プレスなどの仕上げ工程機器といった縫製関連機器がそろう。

 紡績機、織機、編み機や繊維素材、繊維品副資材も出品。縫製現場の生産性を高める染色・加工、物流、生産管理の機器やシステムも紹介する。

 縫製現場の課題解決法を提案する特設ゾーンでは、今回もスマートファクトリーの魅力を発信する。デジタル化の手段や導入のメリットを、最新機器を通じて訴求する。労働環境の改善を後押しする設備も披露する。

 縫製工場の経営を多方面からサポートするエリアも設ける。自社工場の情報発信やブランド立ち上げについてアドバイスできる事業者が出展する。

 今回は「RFID(無線通信による商品の個別管理システム)活用ゾーン」を新設する。タグ・ラベル、自動印字貼付機、ソフトウエアなど、アパレル業界の生産、物流、販売店舗に導入できる多様な商材を集めた。

 主催者企画として、多彩な顔触れの講師陣による講演、セミナーを開く。

 基調講演では、光和衣料(埼玉県久喜市)の伴英一郎社長が、自社の学生服の縫製工場を例に、独自のカイゼンの取り組みを紹介する。ボディースキャナーの活用についても触れる。18、19日ともに午後1時から。

 技術実演セミナーでは、文化ファッション大学院大学の稲荷田征名誉教授が「パターンと縫製のマッチング」をテーマに語る。アイマークレコーダ(視線計測装置)の使用の実演も行う。18日が午前10時半から、19日が午後3時から。

 主催者セミナーは、流通システム開発センターの浅野耕児氏が、電子タグ(EPC/RFID)の活用がアパレル・ファッション業界にもたらす利点などを解説する。18日午後3時から。

 岩手モリヤ(岩手県久慈市)の森奥信孝社長が、縫製工場が集積する岩手県北部の生産現場の取り組みを伝える。同社長が代表理事を務める北いわてアパレル産業振興会が、産学官連携で産地活性化を目指す奮闘ぶりを披露する。19日午前10時半から。

 特別セミナーとして、日本アパレルソーイング工業組合連合会の白石正裕副会長が、縫製工場による適正な工賃交渉のためのデータを作成するシステム「ACCT」の活用を提案する。18日は午前10時半から、19日は午後3時半から。

 期間中は、出展者によるプレゼンや自社製品をPRするセミナーも実施する。

〈海外見本市で人気を博す日本の縫製機器/来年は大阪でJIAM開催〉

 日本の縫製機器は海外市場で人気が根強く、品質の評価は揺るがない。5月にドイツ・フランクフルトで開催された縫製機器と関連加工技術の国際見本市「テックスプロセス2019」でも、日本の縫製機器に対する関心度の高さが証明された。次世代に向け、さまざまな提案を行った日本のミシン製造大手のブースは、連日活況を呈した。

 JUKIは、プレゼンテーションで「JUKI・スマート・ソリューション」のコンセプトを紹介。自動化、デジタル化、ネットワーク化を推進する姿勢を示した。

 自動化については、国内外の自動機メーカーと組み、「サプライド・バイ・JUKI」として、同社が販売・サービスする体制を訴求した。出品機種の多くをデジタル化した上、ネットワーク化ではミシンの稼働状況をリアルタイムで示し、来場者の関心を引いた。

 ブラザー工業は、工業用ミシンに求められる基本性能の追求と将来に向けた技術挑戦を指針に掲げた。基本性能の追求とは戦略機種「ネクシオ」シリーズの展開を指す。同シリーズは、生地送り機構を電子化した「デジフレックスフィード」を採用し、針折れ防止のトラブル削減による生産性向上、素材に合わせた糸締りによる高い縫製品質などが特徴。中でも、価格訴求力が高い「S―9250A」が人気だった。

 ペガサスミシン製造は、最新鋭機種、自動機、省力化装置に加え、海外向けにコストを抑えた専用機種を提案。ベルトループ縫い用フラットベット型偏平縫いミシンなどを打ち出した。

 こうした日本の縫製機器の品質や製造技術を国内から世界に向けて発信する機会が、20年5月に訪れる。日本縫製機械工業会(JASMA)が主催する国際アパレル機器&繊維産業見本市「JIAM 2020 OSAKA」が、インテックス大阪(大阪市住之江区)で開かれる。

 JASMAはテックスプロセスの会期中に会見し、JIAM 2020 OSAKAの概要を説明した。湯原孝志専務理事は「安い人件費でアパレル生産のための縫製を請け負う国・地域はなくなっていく。イノベーションによって進化した、近未来のアパレル・縫製工場の姿が見える場にするので期待してほしい」と来場を呼び掛けた。