不織布新書19秋(6)

2019年09月27日 (金曜日)

〈ダイニック/カーペット以外の用途視野に/五輪対応への準備着々〉

 ダイニックは、展示会場用カーペットの生産で、国内1、2のシェアを誇る。国内最大規模の展示会場である東京ビッグサイトが東京五輪・パラリンピックの開催で使えなくなることなどから、需要の縮小に警戒感を強めている。対応を図るための準備を着々と進めている。

 同社埼玉工場(埼玉県深谷市)におけるニードルパンチ不織布(NP)カーペットの生産量は年間約300万メートルで、このうちの8~9割が展示会場で使われていると言う。東京ビッグサイトは20年5月から展示会場として完全閉鎖され、千葉の幕張メッセなど他の大型会場も使えなくなり、それらの影響は今後顕在化すると予想する。

 その対応として埼玉工場のNPカーペットの生産を計画的に落とし、在庫も圧縮している段階。同時にカーペットの生産設備を活用した新商品の開発にも取り組み、高強力糸や難燃糸などを使った工業資材、土木資材の試作に入った。

 カーペット関連とは別に、インクジェットプリントで意匠性を高めたNPの展開を加速している。「ライフトーン」ブランドで見本帳も作成した。天井材をはじめとする自動車内装材やインテリア関連分野などを積極的に攻める。NPだけでなく、要望があればスパンボンド不織布(SB)などにも対応する。

〈帝人フロンティア/バグフィルターの商品ライン増強/5G視野に開発強化〉

 帝人フロンティアの機能資材本部は環境資材、産業資材、生活資材の3領域で不織布事業の拡大に取り組んでいる。中でも、力を入れているのが、コアに位置付けるバグフィルターでの取り組み。

 ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」の販売を先行させており、中国のセメント会社向けを中心に2019年度は20~30%の拡販を計画する。

 メタ系アラミド「コーネックス」の極細タイプ、ポリフェニレンサルファイド(PPS)ナノファイバー、フッ素繊維による商品開発、現場でのモニターも進めており、石炭火力発電所やセメントの焼成工程といったバグフィルターが使われるあらゆる領域をカバーできる商品ラインを構築し、東南アジア全域に商圏を拡大したいと考えている。

 ナノフロントやナイロン、ポリプロプレンのナノファイバーによる不織布で水処理用カートリッジフィルターの開発・販促にも並行して取り組み、飲料メーカーなどでの採用が広がっている。

 現在、20年度からの中期3カ年計画策定を進めている。RO膜の基材に使われる湿式不織布、吸水・吸湿繊維「ベルオアシス」などの販売も伸ばし、「本部全体として20~30%の事業拡大を目指す」と意欲を示す。5G(第5世代移動通信システム)に合わせた商材の開発依頼が舞い込んでいるといい、「2~3年で具体化したい」と言う。

〈旭化成アドバンス/2次製品事業を本格化/「ベンリーゼ」をセーターに〉

 旭化成アドバンスの繊維資材事業部は8月盆明けに2次製品事業をスタートさせた。耐候性に優れる印刷基材「ペクトリー」を商品化。通販経由やゼネコンへの直販で展開する。2019年度で5千万円の販売を計画しており、20年度で8千万円、21年度で1億円に引き上げる。

 ペクトリーは旭化成が展開するポリエステルスパンボンド不織布「エルタス」で開発したラミネート不要の印刷基材。レーザープリンターで簡単に印刷できるほか、ベースがポリエステルのため優れた対候性、耐水性を発揮するのが特徴。

 シールタイプ、用紙タイプを投入。シールタイプは裏側に粘着性を持たせてあるため、離型紙を剥がすだけで簡単に貼り付けることができる。サイズはA4、A3の2サイズ。100枚入り、300枚入りを販売する。1枚当たりの価格はA4が90円、A3が150円。

 大手ゼネコン数社が現場でモニターを実施しており、簡単に印刷ができる、ラミネートの手間が不要、貼りやすく剥がしやすい、色落ちや劣化がない――などが好評と言う。

 キュプラ100%の長繊維不織布「ベンリーゼ」では、スリットヤーンでセーター用途の開拓に乗り出した。イタリアの有名意匠撚糸メーカーへの売り込みを強化しており近々、デリバリーが滑り出すと見通している。

〈ヤギ/産資分野で存在感示す/「コルバック」と「エンカ」〉

 ヤギは、スパンレイド不織布「コルバック」と3次元繊維構造体「エンカ」の拡販に臨んでいる。英国の高機能繊維メーカー、ロー・アンド・ボナー(L&B)の中国子会社である博納高性能材料〈常州〉と販売代理店契約を結んで展開するもの。同社によると両商材の顧客反応は「かなり高い」(嘉納淳・営業第一本部第一部門第二事業部事業部長)。

 コルバックは、芯にポリエステル、鞘にナイロンまたはポリプロピレンまたはポリエステルを使った複合紡糸不織布。優れた寸法安定性と熱強度、高い引っ張り強さと引き裂き抵抗、成形補助が特徴で、カーペットの1次基布、プリーツ加工フィルターの骨材、補強材などに使われる。

 同社によると一般的なスパンボンド不織布よりも強度が2割高く、同強度で軽量化できるなどのメリットがある。ナイロンの発色性を生かして意匠性の高い製品にも向くため裏方的な資材用途だけでなく見た目を重視するフラワーラッピングなどでも採用が多い。

 3次元立体構造体のエンカは、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルの3種から素材選定が可能で、形状はV字とピラミッドの二つ。体積に比べて高い表面積比率、耐圧性、立体構造による空間維持に優れることから排水材、スペーサー、緩衝材、吸音材などに使われており今後の拡販にも自信を示す。

〈呉羽テック/対中輸出拡大に意欲/フィルターユニットが好調〉

 東洋紡のグループ会社・呉羽テック(滋賀県栗東市)はニードルパンチ「クレロック」、レジンボンド・サーマルボンド「ボンデン」、スパンボンド「ダイナック」「クレバルカー」を展開する。2018年度から中期4カ年計画をスタートさせており、初年度は苦戦を強いられたと言う。

 19年度はこの間、取り組んできた対策が実り挽回できるめどが立ってきたとしており、「開発中の商材をいかに早く上市できるか」を重視している。

 中国を中心とする東南アジア市場を開拓するため、ポリエステルによるニードルパンチでハップ材やフェースマスクをターゲットとする販促を強化している。昨年から、取り組みに着手し、今年4月以降、安定的にオーダーが入り始めた。フェースマスクなどを米国へ輸出する企業へのアプローチにも意欲を示している。

 自動車関連では、HV(ハイブリッドカー)向けに開発したフィルターユニットの販売が好調に推移しており、今年2月からは呉羽タイランドでの生産も立ち上げた。

 主力の自動車内装材では、「今も高い水準で販売量を安定させている」と言い、新しい車種での採用が決まったため19年度の販売量は前年を上回る見通しとなった。

 「クレバルカー」では、さまざまな用途における顧客との共同開発案件が増えてきていると言い、通水性を生かせる土木資材向けの商材を完成させている。

〈倉敷繊維加工/複合技術で“次の柱”を/半導体関連分野へ参入本格化〉

 クラボウグループの不織布製造販売会社である倉敷繊維加工(大阪市中央区)は、得意の機能加工や複合技術で新規分野の開拓に力を入れる。青山髙明社長は「現在の主力である自動車向けフィルターに続く“次の柱”を作るのが目標」と話す。

 同社の2019年度上半期(4~9月)の商況は前年並みで推移しているが、好調が続いていた自動車のキャビンフィルターは伸びが鈍化した。自動車業界の先行き不透明感の影響が出ている。ただ、得意の複合加工品がフィルター部材として欧州向けで拡大し、中国子会社の仏山倉敷繊維加工も欧州の自動車メーカー向けにフィルターの採用が決まり始めるなど新たな成果も出始めている。

 こうした中、新規用途開拓として取り組むグラフト重合加工による金属イオン捕集フィルター「クラングラフト」が半導体製造で使用する高純度薬液の精製用途で正式採用に向けて最終段階となった。本格参入に向けて自社工場で増産体制の構築を急ぐ。クラングラフトは製造工程で超純水を使用するため、工場の超純水製造装置の増設も決めた。

 そのほか、土壌改良用シートなど新規商品の開発と提案も進む。青山社長は「不織布は用途開拓が必要不可欠。取引先との取り組みで開発を進める」と強調する。

〈金井重要工業/研磨材で川下戦略/電子機器展に初出展〉

 金井重要工業(大阪市北区)は研磨剤、空調フィルター、自動車内装材、生活資材などの用途にニードルパンチ、ケミカルボンド、サーマルボンドといった不織布を展開しており、年商の3分の1前後を占める研磨剤での商品開発、販促を重視している。

 同社は2018年度から20年度までの中期3カ年計画に取り組んでいる。中計では「量を追わず付加価値の追求を優先させたい」と話し、中計最終の20年度で2桁%の増益を目指す。

 全体の市況については、18年度後半から鈍化したと見ており、米中貿易摩擦の影響なども相まって、19年度も「今の状況が続くのでは」とみる。

 中計2年目の19年度は、半導体などの中国、韓国への輸出と取り組むハイテク系ユーザーへの販売が伸び悩んでいる一方、国内販売がメインのフィルター向けが好調に推移している。

 19年度は6月上旬に東京ビッグサイトで開かれた「JPCAshow2019(電子機器トータルソリューション展)」に初出展。プリント基板向けに開発した商材を打ち出した。

 研磨剤用途では、これまで原反売りを主力に展開してきたが、「より川下に進出する戦略」の一環として、ホイール状に成型した加工品を多数、出展。さまざまなニーズに沿ったモノ作りができる同社の強みをアピールした。

〈アンビック/中国でフィルター市場開拓/グループ連携で海外販売強化〉

 ニッケグループの不織布製造販売会社、アンビック(兵庫県姫路市)は中国でのバグフィルター市場の開拓に取り組む。現地生産に向けて工場新設も検討する。主力のフェルト・不織布も海外販売の拡大に取り組み、そのためにニッケグループ内の商社との連携も強化する。

 同社はケミカルボンドやニードルパンチの不織布に加え羊毛フェルトも生産販売する。主力製品の不織布「ヒメロン」は自動車部品の静音材・吸音材などで高い評価を得ている。

 しかし、2019年度(11月期)は「後半に入ってから全体的に荷動きが鈍化している」(日原邦明社長)と言う。特に中国市場向けは楽器用ハンマーフェルト、自動車向け不織布ともに勢いがない。中国での景気減速の影響が色濃くなってきた。

 こうした中、堅調な販売となっているのがバグフィルター。特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を使ったバグフィルターは耐熱性が求められるゴミ焼却場やバイオマス発電所向けで中国での需要が拡大する。さらなる市場開拓のために中国でのフィルター生産とバグフィルターへの縫製に向けて工場新設も検討が最終段階に入った。

 ヒメロンなど不織布も自動車や家電用途で海外市場へのアプローチを強める。ニッケグループに産業材専門商社のエミー(大阪市中央区)が加わったことを生かし、同社との連携でインドや北米、欧州市場への販売拡大に取り組む。

〈タピルス/MB販売は各分野で堅調/アジアや欧州市場に視線〉

 メルトブロー不織布(MB)を製造・販売するタピルス(東京都港区)は、リチウム一次電池用セパレーター、マスク用フィルター、液体フィルター、エアフィルター、日用品関連向けに付加価値の高い製品を投入している。販売は各分野ともに堅調で、2019年12月期は前年実績を上回る水準で推移している。

 高付加価値品では極細(0・3マイクロメートル)のポリプロピレンを使った製品に加え、極太繊維径の製品もラインアップしている。極太製品については40マイクロメートルの開発も終えた。そのほか、耐熱性や耐薬品性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を使ったMB、ポリエステルのMBなども広がりを見せている。

 国内顧客への販売は最重要視するが、海外での販売も増やす。タイには自社工場を保有しており、地産地消を増やしたいとの考えを持つ。5月に開催された不織布・会議「アンドテックス2019」に初出展し、フィルター材料を中心に展示したが、「需要はあり、可能性を感じている」と強調する。

 海外ではタイなどのアジアのほか、欧州市場も攻める。10月22~24日にドイツ・ケルンで開催されるフィルトレーション関連の見本市に継続出展する予定で、これを足掛かりに顧客開拓につなげる。米国市場についても「拡販につなげたい」と言う。

〈大和化学工業/アレルゲンを低減/「アレルノンTO―10」〉

 繊維加工薬剤メーカーの大和化学工業(大阪市東淀川区)はこのほど、アレルゲン低減化剤「アレルノンTO―10」を発売した。フィルター用途などの不織布向けに提案する。従来品に比べ、性能を向上させるとともに、従来品の着色してしまう問題も解決し、色に影響しないようにした。

 アレルノンTO―10はスギ花粉やダニのアレルゲンを減らすことができる。重量に対し10%付着させた加工品では未加工品に比べ、スギ花粉で95・3%、ダニで96・8%アレルゲン濃度が減少した。5%付着させた加工品でも、スギ花粉で78・3%、ダニで85・8%アレルゲン濃度が減った。

 空気清浄機やエアコンなどのフィルター向けに訴求する。さらに、バインダーを使用することで洗濯耐久性を付与することも可能で、衣料品など不織布以外にも可能性が広がる。同社ではアレルゲンの試験が自社内で可能。これにより、販売先の商品開発の迅速化にも貢献できる。

 同社はこのほかにもさまざまな機能薬剤で不織布用途への拡販を進めている。防虫剤マスターバッチ「MBP―P520」は、ポリプロピレンの練り込み用に訴求する。MBP―P520は防虫剤「アニンセンP5―DD」を約17%含有する。これまで、粒子径が大きい防虫剤を紡糸用に練り込むことは難しかったが、同社の技術で克服した。カーペット基布などで実績が既にできているという。

 そのほか、超強炭化により高い難燃性を発揮する難燃剤「フランCMシリーズ」は、自動車部材の不織布などに提案する。抗ウイルス加工剤「アモルデンV―500HP」や「アモルデンV―100JM」は、フィルターなどに向けて展開する。不織布用途に多様な薬剤をラインアップしており、これらを組み合わせた複合機能も提案できる。

〈髙安/再生わた、NPで増販/自動車以外の開拓も強化〉

 再生ポリエステル短繊維、ニードルパンチ不織布(NP)製造の髙安(岐阜県各務原市)は2020年9月期、再生ポリエステル短繊維で前期比3%増、NPで2~3%増の売上高、販売量を計画する。

 再生ポリエステル短繊維は中国子会社の髙安工業〈江陰〉からの輸入販売も行い、増販を計画。NPは自動車の生産台数次第で10月から弱含む可能性はあるものの、産業資材分野などを強化しながら拡大を図る。ただ、人手不足により「国内では増産体制を敷くのが難しくなっている」(野田博之常務)と言う。

 中国子会社による現地販売は中国でのVOC(揮発性有機化合物)規制が強まる中で、伸ばす余地があるとみる。

 前9月期は売上高、販売量とも再生ポリエステル短繊維はほぼ横ばいながら、NPは5%増で着地する見通し。NPは吸音材を中心とする自動車資材の需要増が寄与する。

 昨年来、3系列のNP設備はフル稼働が続く。不織布の使用部位が広がっていることも大きく、NPに占める自動車資材比率は60%に達する。一方、再生ポリエステル短繊維は韓国、台湾からの輸入わたとの競合による影響を受け、ほぼ横ばいにとどまった。

 同社はその他、ステッチボンド設備2系列(アラクネ)も保有する。

〈日本フイルコン/水素発電飲料水供給システム展開/金属吸着フィルター使用〉

 日本フイルコンは、自立型水素発電飲料水供給システム「ハイドロエックス」を展開している。災害時にプールの水などを利用し、再生可能エネルギーで災害用ろ過装置を含むシステムを稼働しながら水素をため、その水素で飲料水と電源を供給する。使用するフィルターの一つが「メタキャット」で、鉄やマンガンを取り除く。

 ハイドロエックスは、太陽光パネルで発電して得たエネルギーを水素に変換して貯蔵し、電力供給のない状況では貯蔵した水素を使用して燃料電池で発電する。災害時に飲料水と電源供給システムとして利用するが、燃料調達の心配がなく、騒音や排気ガスが発生しない。水供給能力は1時間180㍑を誇る。

 粗取りフィルターとメインフィルターに加えて、液体用金属吸着フィルターのメタキャットを使い、物理的フィルターでは取れない鉄やマンガンを除去する。ろ過後は鉄とその化合物が1㍑当たり0・03㍉㌘未満(飲料水基準値は0・3㍉㌘)、マンガンとその化合物は1㍑当たり0・012㍉㌘(同0・05㍉㌘)。

 メタキャットには高機能吸着材「アドセップ」キレート繊維を使用している。このアドセップキレート繊維は、独自設計の長鎖キレート官能基を繊維に固定化し、高速吸着・高選択性を実現した。水道水に使用すると無害なカルシウムは除去せず、鉛などを取り除くことができる。

〈岐阜化繊工業/JFW-JCに初出展/生地との複合で衣料開拓〉

 ニードルパンチ不織布(NP)製造の岐阜化繊工業(岐阜県各務原市)はNPと織・編み物をニードルパンチングで貼り合わせた「クリサンセマム」により衣料・雑貨分野の開拓に取り組む。その一環で、11月19、20日、東京国際フォーラムで開催される国内最大級のテキスタイル総合展「JFWジャパン・クリエーション(JFW―JC)2020」に初出展する。

 クリサンセマムはNPの軽量感・保温性・通気性に加え、レースなど貼り合わせる生地で色や柄などの意匠性を付与できるのが特徴。同展ではクリサンセマム製ドレスやボトルホルダーなどのほか、ロングコートも製作し、担当者が着用する予定で「衣料分野での知名度を高める一方、クリサンセマムを見てもらい、来場者の反応を探りながら新用途のアイデアを得たい」(林ゆり常務)と話す。

 クリサンセマムではプラスチック製品製造の山吹化学(岐阜県多治見市)とFRP(繊維補強プラスチック)複合で柄を付与するものも共同開発している。同社の2019年8月期は車資材の拡大が寄与し2桁%の増収だった。

〈江洲産業/異業種からも新案件/不織布伸ばせる余地あり〉

 産業資材用織物の織布・加工や不織布の加工を手掛ける江洲産業(滋賀県長浜市)は2019年8月期、売上高が前期比1・4%増となった。織物の主力用途の一つ、床材向けは13%減と苦戦するも「その他用途を積み上げることでカバーできた」と井上昌洋社長は言う。

 産業資材用織物では昨年4台導入したイテマ製レピア織機「R9500」(2・6メートル幅)が奏功。さまざまな案件が持ち込まれたほか、不織布加工も「今まで取引がなかった異業種からの問い合わせが多くなっている」と今後の拡大に手応えを示す。

 今期は床材用が回復基調を見せている上、ハウスラップ用不織布の加工も拡大基調。不織布加工ではニーズに応えるため、圧力を一定に保てるマングルロールの導入。新規ビジネスも広がっており「まだ伸ばせる余地がある」とし、今期は全社売上高で10%増を見込む。

 同社は20年に創業100周年を迎えるが、本社工場の拡張も検討中。それに合わせて長繊維織物の準備工程内製化も計画しており「織物、不織布とも頼られる存在になりたい」と意欲を見せる。

〈ツジトミ/売上高60億円を目指す/国内でもNP設備更新〉

 短繊維不織布製造のツジトミ(滋賀県東近江市)は2023年8月期に海外子会社との単純合計で売上高60億円を目指す。

 その一環として、国内でのニードルパンチ不織布(NP)設備2系列を更新する。1系列は20年末に導入予定。4・5メートル幅(製品幅)で、インラインでその他の基布を入れることが可能だ。

 もう1系列は22年8月に導入する。この設備は4メートル幅(同)で、2層構造の高目付品(1500㌘)を製造できる。ともにインラインで熱処理機も備える。新設備に更新することで「国内売上高で10億円の上乗せ」(辻高幸社長)を見込んでいる。

 同社は20年8月期、国内売上高で30億円、中国子会社、ベトナム子会社を含めた単純合計で50億円の売上高を見込む。中国子会社も受注増が見込める案件が幾つかあるため、2年後の1系列増設を検討する。

 今年3月にはベトナム子会社、ツジトミ・ベトナムも設立。20年4月には月産30万平方メートルのNP設備が稼働。自動車資材や家電製品向けに販売を予定する。

〈アサヒ繊維工業/食物工場の培地開拓/PLA不織布の成型品で〉

 不織布成型加工品製造のアサヒ繊維工業(愛知県稲沢市)はオレフィン系、エステル系熱融着繊維使いの不織布を円筒状に成型したフィルターで単一構造の「MF―Ⅰフィルター」、複層型の「MF―Ⅱフィルター」や筆記具などに使う成型ロッド「ファイバーロッド」などを製造販売する。

 2019年度上半期(4~9月)は空圧・油圧機器向けフィルター製品の受注減などから前年同期比10%減収で推移。「下半期もこの状況が続く見通しにある」(浅井耕治社長)ことから、新用途開拓に力を入れる。

 その一つが植物工場の培地。土壌の代わりに植物を支え、生育に必要な養水分を供給する培地は、ウレタンスポンジを使う場合が多い。しかし、植物によって根の生え方が異なり、真っすぐに根が伸びるものには不織布製が向いている。

 開拓の一環で10月9~11日、幕張メッセ(千葉市)で開催される「第9回国際農業資材EXPO」に初出展する。生分解性を持つポリ乳酸(PLA)繊維の不織布成型品による培地を新提案し、反応を探る。

〈髙木化学研究所/高品質と機能開発に重点/量ではなく付加価値追求〉

 髙木化学研究所(愛知県岡崎市)は累計取得特許件数が200件を超える研究開発型企業で、再生ポリエステル短繊維は1972年に事業化した。その他、プレス加工、板金加工、表面処理、樹脂成型、樹脂加工も行う。

 ペットボトルやフィルムくずなどを原料とする再生ポリエステル短繊維は片寄工場(同)で生産し、月産500㌧の能力を持つ。黒だけでなく、各種カラーの原着、白わたなど多彩な品種と小ロットにも対応するのが特徴。その大半が不織布向けに使われている。

 高木紀彰上席顧問工場長は再生ポリエステル短繊維事業について「高品質わたの安定供給と機能わたの開発に重点を置く」と述べ、引き続き量の追求ではなく、多品種小ロットで高付加価値化の戦略を敷いている。

 難燃タイプや中空タイプなど特殊な再生わたも手掛けており、中空タイプは用途に応じて中空率を変えるなどニーズに応じてカスタマイズできる。こうした技術開発力を強みとして、昨今増加傾向にある輸入わたとの差別化を図っている。