クラボウ/繊維の立て直しに全力/新たなビジネスモデル作る

2020年04月08日 (水曜日)

 クラボウの藤田晴哉社長は2020年度(21年3月期)の重点課題として苦戦が続く繊維事業の立て直しを挙げる。国内生産設備の再編と投資を進めることで高付加価値品の生産を拡大するほか、リサイクル技術やスマートテキスタイルによる新たなビジネスモデルの構築に取り組む。

 藤田社長は19年度に関して「中期経営計画初年度だったが、非常に厳しい結果となった」と振り返る。米中貿易摩擦の影響が想定以上に長引いたことや、特に繊維事業は台風や暖冬、消費増税のインパクトが大きく、衣料品消費不振の悪影響を受けている。2月以降は新型コロナウイルス問題の影響も大きい。ただ、「やろうとしていたアクションは起こせている。これを今後につなげる」と話す。

 20年度は苦戦が続く繊維事業の立て直しに全力を挙げる。このため生産体制も再編した。3月末で紡績の丸亀工場(香川県丸亀市)の操業を停止し、紡織の安城工場(愛知県安城市)とタイやインドネシアの子会社に生産を移管。「丸亀工場は建屋の老朽化が進み、耐震補強の必要性があったが、現在の需要動向を踏まえると丸亀工場に新たに投資するのではなく、安城工場と海外子会社に生産を移管することで全体の稼働率を高めるのが合理的と判断した」と話す。

 その上で国内工場のスマートファクトリー化を進める。安城工場は紡績工程のセンシングなど投資が完了した。次は染色加工の徳島工場(徳島県阿南市)への投資を進める。徳島工場には原綿改質で天然繊維に機能を付与する「ネイテック」の量産加工設備も導入する。

 裁断くずを原料に再生し、糸・生地へとアップサイクルする「ループラス」もエドウインとの取り組みが本格化することなどを生かして拡大を目指す。スマートウエアによる現場作業者リスク管理システム「スマートフィット」もユーザー企業との連携でシステムの高度化を進め拡大を図る。藤田社長は「他社との連携で新たなビジネススキームを作り、そこで存在感を発揮することを目指す」と話す。

 一方、新型コロナの感染拡大で経済情勢の先行きは極めて不透明になったとも指摘。このため既に決定している投資は実施するものの、その後の投資については慎重な姿勢を示した。そうした中、バイオメディカル事業で新型コロナの抗体試験試薬キットの販売を開始した。「あくまで医療・検査機関向け試薬だが、少しでも新型コロナ感染拡大阻止に貢献したい」と話す。