特集 安心・安全(6)/防炎難燃/労働環境の安全性向上へ

2019年08月08日 (木曜日)

 防炎難燃素材は従来、火災のリスクが大きい労働現場で使用されるケースが多かった。しかし近年、比較的リスクの小さい作業現場でも普及する。労働者の安全性を少しでも高めようとする動きが強まった。こうした用途では防炎難燃性能に加えて着心地など快適性も一段と重要になる。

〈クラボウ/品種拡大する「ブレバノ」〉

 クラボウは防炎生地「ブレバノ」の品種を拡大している。制電性付与や高強力タイプのほか、ストレッチや高通気タイプも用意し、幅広い用途への提案を進める。

 ブレバノは難燃性のあるアクリル系繊維と綿の混紡素材。綿混のため吸湿性や綿の風合いに富むことで防炎性と快適性を両立した生地として作業服用途を中心に採用を拡大してきた。

 現在は制電性を付与した「ブレバノプラス」を主力に、アラミド繊維・難燃アクリル・綿混の高強力タイプ「ブレバノネクスト」が電気・ガス・石油関係や製造業の作業服として採用されている。最近では電動ファン付作業服向けにもブレバノプラスが採用されるケースがある。いずれも綿混による着心地の良さが評価された。

 作業服以外の用途開拓も進む。船舶用寝装品で実績が豊富だが、カーテンなどインテリア用途にも採用が広がる。新たに白色タイプも開発したことで食品白衣でも実績ができつつある。アウトドア用途からの引き合いも多い。

 同社では引き続き労働現場の安全性向上に貢献する素材として提案を進めると同時に、新規用途の開拓にも取り組む。

〈カネカ/日本の作業服を変える〉

 カネカは難燃作業服向けにモダクリル「カネカロン」や難燃性、耐熱性を向上させた「プロテックス」を展開しており、2018年度(19年3月期)は両素材で拡販を達成した。

 19年度から新しい中期3カ年計画を立ち上げており、カネカロンでは主力の付け毛やフェイクファー、難燃資材いずれの販売も伸ばし、業績拡大につなげる方針。

 同社は世界の難燃基準をクリアするカネカロンによる織物、ニットをコンバーター経由で海外の作業服向けを中心に展開している。

 今後も安全、安心に関する展示会である「A+A」「INTERSEC」などに継続出展し、カネカロン、プロテックスを浸透させる。

 一方、海外でユニフォームが安全を担保するツールに位置付けられているのに比べると、「日本ではこういう意識が薄い」と見ている。

 このため、ユーザー側の安全に対する意識を引き上げるため、大手アパレルとの共同戦線でカネカロンの売り込みに力を入れており、両社の協業で「日本の作業服を変えたい」との意欲を示している。

〈ダイワボウレーヨン/「FRX」「DFG」で防炎服も〉

 ダイワボウレーヨンはシリカ系防炎剤練り込みの防炎レーヨン短繊維「FRコロナ」シリーズ、リン系難燃剤練り込みの難燃レーヨン短繊維「DFG」と多彩な防炎難燃レーヨンをラインアップしている。寝装用途で豊富な実績を持つことに加え、防炎服への提案も力を入れる。

 FRコロナは練り込んだシリカ系難燃剤が骨格として残るため燃焼時に生地に穴が開かず、炎に対する高いバリア性を持つ。この特性を生かしベッドマットのウレタンの上に置く防炎材用途で豊富な実績を持つ。最近では紡績可能な「FRL」が高級ベッドマット向けで底堅い需要がある。競合品と比べて品質が高いことが需要家の間で評価された。

 洗濯耐久性を持たせた「FRX」で防炎服用途への提案も強化する。既に海外の紡織企業が性能テストを開始するなど今後の展開への期待が高まる。同社では寝装用途を主力とするFRLに加えて、FRXとDFGで防炎服など新規用途の開拓を進め、防炎難燃レーヨンの販売拡大を目指す。

 そのためFRXの増産に向けて益田工場(島根県益田市)での生産体制整備にも取り組む。

〈ダイワボウプログレス/綿100%を生かす「プロバン」〉

 ダイワボウプログレスが製造販売している難燃生地「ダイワボウプロバン」。ユニフォーム用途などで豊富な実績を持つが、綿100%の素材特性を生かした用途でも採用が拡大する。

 ダイワボウプロバンはノンハロゲンの難燃加工のため処分時も有害物質の発生が抑えられることが特徴。さらに綿100%生地への後加工のため、コットンの風合いや吸湿性に優れる。こうした特徴を生かし、作業ユニフォームのほか溶接作業時などに着用する工業用エプロンなどで採用が進む。

 綿100%の特性を生かした用途としてタオルでも使用されている。難燃性のある合繊を使ったタオルも存在するが、いずれも吸水性に乏しく、使用現場で不評となりやすい。このため綿の吸水性を維持しながら難燃性を付与できるダイワボウプロバンの評価は高い。

 近年、防炎規制の強化に加えて、労働環境の安全性に対する社会的な意識が高まっている。このため難燃素材を使った作業服のニーズが一段と高まった。こうした需要の高まりに対してダイワボウプログレスは綿100%というダイワボウプロバンの特徴が生かした提案を進める。