緊急事態発令・百貨店休業で/春夏在庫はEC軸に処分/夏物以降は発注抑制へ

2020年04月14日 (火曜日)

 「3月の売上高は前年比31%減」(オンワード樫山)、「3月店頭販売額は44%減」(三陽商会)。新型コロナウイルス感染症の拡大で、消費者は外出を控え、週末の店舗休業も実施された。7日には政府が7都府県に緊急事態宣言を発令し、百貨店などが当面の間、平日も休業、さらに対象地域を広げる。商況の落ち込みは4月さらに拡大。アパレルには夏物、初秋物の発注量を絞る動きもみられる。

 東京都は緊急事態措置を10日に発表した。5月6日まで百貨店など生活必需物資の小売関係店舗には当初の「休止要請」ではなく、「協力依頼」を求めた。しかし、実際には都内の百貨店は食品売り場などを除き休業で対処している。アパレルは4月の納品ができない状況にある。

 オンワードホールディングスは「入荷できない商品は物流センターに一度戻し、EC(電子商取引)中心に販売。場合によっては開いている店に送る」対応をとる。ワールドも「春夏の在庫はECを軸に販売。時期にもよるが、再開店舗や別会場催事、グループ内の二次流通も活用」していく。

 TSIホールディングスは「休業店舗の在庫は、営業している店に移動するほか、EC用などに物流センターに戻す。不要不急の商材はそのまま」にする。在庫処分は「乱売にならないよう注意しつつECで対応。時期をずらして売れる商材はMD修正でカバー」する。レナウンもECを強化する。

 フランドルは「4月は仕入れ調整している。春夏在庫はECと営業中の店舗でセール販売。営業再開後に随時セールも予定」。「臨時休業の店舗社員は期間中、一時帰休として休業手当てを支給」する。入庫できない商品は自社倉庫に戻るが、「キャパに余裕はある」から「取引先の休業が多く厳しい」までまちまちである。

 こうした販売面の一方で、夏物の追加生産は大幅に減る見通しだ。「今後の仕入れ・生産は引き付けて行う。数量は検討中」(オンワードホールディングス)、「夏物生産は店舗再開のめどがつかず未定。追加しても短納期対応」(ワールド)、「絞るブランドが多い」(TSIホールディングス)、「6、7月の仕入れを予算比60%で進行予定」(フランドル)、「夏・秋冬物は生産調整」(ヤマトインターナショナル)と言う。

〈東京都内の染色工場/政府の出勤自粛に不安感/休業補償など「分からない」〉

 政府は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、緊急事態宣言の対象7都府県の全事業者にオフィス出勤者を最低7割削減するよう要請した。工場をはじめとする労働集約型産業がどのような対応を求められるのかは明確ではないが、東京都内で製品染めなどを手掛ける染色工場は「操業を停止せざるを得ない状況も出てくる」と頭を抱える。

 都内の製品染め(反染めも含む)は、従業員20~30人規模の企業が多い。既に時間短縮などの措置を講じており、ある工場は「交代で周1日休んでもらい、週休3日体制にしている」とし、「出勤者は平時に比べて5人程度少ない」が、生産スケジュールに大きな影響は出ていないという。

 他の製品染めでも3月から時間短縮を実施している企業は少なくないが、ある染色工場は「当面は通常通りの勤務体制を考えていたが、緊急で会議を開くことにした。部門ごとで1週間ずつ休みを取ることを検討している。ただ、休業補償をどうするかについては今のところ分からない」と語った。

 現状では染色工場に出勤者削減に関する要請は出てきていないようだが、新型コロナのさらなる拡大で強く要望されるようになれば事態は深刻度を増す。工場スタッフがいなければできる仕事量は限られ、場合によっては一旦仕事を休止する可能性もあると話す染色工場も出てきた。

 生産状況については新型コロナ禍前の受注分に関してはキャンセルの要求はない。ただ夏物の追加はないか、減らされているケースがほとんど。晩夏・初秋物は、一部のデザイナーズブランドを除いて話すら上がっていない。他方、Tシャツをはじめとするコンサート・イベントグッズを生産する工場は、催しの中止で大きな打撃を受けている。

〈7都府県以外でも休業・時短営業/小売り〉

 小売り各社は自治体の要請を受け、政府が緊急事態宣言を発令した7都府県以外でも臨時休業や営業時間を短縮するなど、新型コロナウイルス感染症のさらなる拡大防止に努めている。

 百貨店では新たに11日から、岐阜高島屋が食料品フロアと別館を除いて、大丸松坂屋の松坂屋名古屋店と豊田店が食料品売り場を除いて当面の間臨時休業に入った。

 アウトレット業態も同様。プレミアム・アウトレットを展開する三菱地所・サイモンは、10日から御殿場、佐野、鳥栖、11日から土岐、あみの5施設も臨時休業している。これに伴い御殿場の第4期増床エリア開業を延期した。三井アウトレットパークも新たに、10日から木更津店を臨時休業し、11日で終了予定だったジャズドリーム長島の時短営業を継続している。

 イオンに続きテナント賃料減免の動きも加速。イトーヨーカ堂は同社が運営する全158の商業施設内のテナントに対し、3月分の賃料を減免する。月間最低保証売上の撤廃と固定賃料を減額。4月分は追って検討する。