特集 スポーツ19秋冬編(2)/ウエアで広がる/アウトドア←→タウン

2019年08月06日 (火曜日)

 アウトドアウエアと日常で着られるタウンユースの融合が進む。スポーツで培った機能性をデーリー向けに抽出、ベーシックなデザインに落とし込むスタイルは、年齢や性別を絞り、シーズンごとに進化している。サステイナブル(持続可能な)提案も一般の認知度が高まるにつれて前面に出てきた。19秋冬の最新商品を紹介する。

〈「ホグロフス」/サステ提案「テイクケアタグ」/アシックスジャパン〉

 アシックスジャパンが国内展開するスウェーデンのアウトドアブランド「ホグロフス」は19秋冬、冬山やアウトドアで要求される機能性を改めて打ち出す。近年は軽量化競争のようになっているが、メーカーとして安心感と信頼性を価値として重視した。

 「L.I.Mシリーズ」の新作ジャケット(3万6千円)は防水性に優れたゴアテックス素材を採用、3ウエーの調節機能付きフードは頭頂部をラミネート加工で強化。胴回りやサイド、インナースリープは無縫製で耐摩耗性をアップし摩擦を軽減する。ミニマルデザインの先駆けとなったシリーズで、軽量で無駄を省いたデザインに堅ろう性を感じさせる。

 ホグロフス製品は「テイクケアタグ」を付けて販売している。地球環境保全に持続性が最も高いガイドラインとして表示するもので、アパレルは①ブルーサイン認証②リサイクル素材使用③オーガニックコットン使用――という基準を、2017年時点で全体の71%まで満たしている。

〈好調「デサント」さらに拡販/「アンブロ」来年から反転/デサントジャパン〉

 デサントジャパン・第一部門は「デサント」「ルコックスポルティフ」などアスレ6ブランドを展開しており、19秋冬では、好調な「デサント、ルコック、シューズをさらに伸ばす」。

 主力のデサントで18秋冬では14%の増収を確保。アスレが18%増、シューズが28%増だった。アクティブスーツが好調だったほか、大谷翔平選手の活躍が店頭消化を後押ししたと言う。

 19秋冬では、全体で10%増を計画。2月に東京・渋谷に旗艦店・デサント トウキョウをオープンしており、今後も直営店、アウトレット店の出店を加速する。

 ルコックでは18秋冬、アパレル・アクセサリーが9%増、レディースシューズがけん引したシューズが25%増。19秋冬に向けては、順に3%増、20%増を目指す。

 一方、アンブロでアパレルの苦戦が続いており、「本来のサッカーブランドとしての再構築」に取り組み、2020年度から攻勢に転じたいと考えている。

〈大人のライフスタイル提案/19年度で20億円めざす/ミズノ「Go to by mizuno」〉

 山用のアウトドアウエアを中心に展開してきたミズノのライフ&ヘルス事業部。ライフスタイルへも領域を広げるため、17春夏から大人のアクティブなライフスタイルを提案する「Go to by mizuno」の販売をスタートさせた。

 本格販売へと移行した19春夏では、パーカ(3万円)、シャツ(1万5千円)、トレッキングパンツ(同)などのアイテムを投入。販路を百貨店や好日山荘のような専門店などへも広げ、ブランドの浸透に力を入れてきた。

 19秋冬では、今のところ前年同期比10%増で推移しており、「徐々に広がりを見せ始めている」との手応えを示す。

 2019年度で20億円の売り上げを計画。今後は航空系ブランドとのコラボレーションや「リテール以外の販路開拓も強化」し、20年度で30億円以上を計画する。

 トラベルをコンセプトの一つに掲げており、ミズノと契約するサッカーJ2のヴァンフォーレ甲府、徳島ヴォルティスの選手たちが移動着として着用し始めた。

〈独自素材「オムニ」拡充/防水・保温・軽量化/コロンビアスポーツウェアジャパン〉

 コロンビアスポーツウェアジャパンは19秋冬、独自技術「オムニ」のバリエーションを掛け合わせたアイテムを拡充する。主力ブランド「コロンビア」では冬の定番「オムニヒート」シリーズから防水×保温×ステッチレス、リフレクティブ+起毛プリントの2種類のダウンジャケットをリリース。

 防水×保温×ステッチレスのダウンジャケット(2万9千円)は防水透湿機能「オムニテック」と、生地を織る際に熱圧着でダウンのマスを同時に作るステッチレス仕様を融合。ステッチがないため軽量で、縫い目に伴って生じる「コールドスポット」も減らせる。

 リフレクティブ+起毛プリントのタイプ(5万4千円)は、「オムニヒート3D」のリフレクティブを起毛プリントすることで見た目も暖かい。2層構造の「ターボダウン」で保温性をさらに高め、表面はオムニテックで防水する仕組みを持つ。改めてアウトドアブランドとしての機能性を発信していく。

〈「パワーウォーキング」普及へ/19秋冬にウエア初投入/クラボウインターナショナル〉

 クラボウインターナショナルは、同社初の製品ブランドとして「パワーウォーキング」のウエアを19秋冬から投入する。

 同ブランドは競歩競技モスクワオリンピック金メダリストでドイツ人のハートヴィッヒ・ガウダー氏が提唱する「足だけでなく体全体で歩く」ウオーキングスポーツ。正しい歩行姿勢を定めておりドイツでは既に認知度の高いスポーツ。同社は健康志向の高まり、ウオーキング人口の増加などを背景に今後日本にも普及することを見越し、商標権者とそのウエアの日本国内独占使用権を締結した。

 素材選定や製品デザイン、縫製などを同社が行う。

 製品開発に際しては、吸汗速乾、撥水(はっすい)、ストレッチなどの機能にこだわった上で、メッシュ構造による快適性、反射テープによる安全性、フラットシーマによる着用感などを追求した。

 19秋冬にパンツ、ジャケット、インナーなどを用意。カタログ通販、テレビ通販、ネット通販、小売りなどさまざまな販路に向け、ブランドの認知度向上と拡販に臨む。

 販促活動としては、ウオーキング教室や大会参加者への販売やスポーツジムへの販売によって口コミでの拡大を狙うほか、市民マラソン大会への提案や、健康増進による医療費削減を想定して医薬品業界への訴求も進めていく。

〈3ブランドの強み生かす/好評素材の展開拡充も/ゴールドウイン〉

 今期4~6月も好調なゴールドウインのアウトドア事業。20春夏は「ザ・ノース・フェイス(TNF)」「ヘリーハンセン」「ゴールドウイン」それぞれの強みを磨き、より一層の拡大を図る。

 TNFは革新的な通気性が特徴の透湿防水素材「フューチャーライト」の拡大や、世界のTNF全体で日本を含む4カ国の東京五輪ナショナルチームユニフォームを手掛けるスポーツクライミングを軸に、19春夏比2桁%増の販売を目指す。

 フューチャーライト使いは登山向け主体だったが、来春夏からハイキングやランニングシーンのレインウエア、シューズなどにも拡大。ソフトシェルの着心地でタウンユースなど汎用性の高いアイテムも投入する。

 ヘリーハンセンは五輪を機に、核であるセーリング用ウエアの進化、マリンスタイルのトレンドを絡めたアウトドアウエアの拡充で顧客のさらなる拡大を狙う。アウトドアウエアではレインスーツを環境に配慮したリサイクルナイロン使いに変え、今春夏好評の「ゴアテックス」使いのジャケットを拡充する。

 ゴールドウインブランドは、16秋冬から推進するブランドの総合化と通年化を加速。アスレチック、アウトドア、高機能アンダーウエア「C3フィット」の3カテゴリーで、スポーツからアウトドア、日常まで多様なシーンに訴求していく。

〈アウトドア起点で拡大/漁業用ビブも新登場/モンベル〉

 モンベルは19秋冬、漁業用ビブや車椅子ユーザー向けパンツを新たに投入する。アウトドア用のウエアで培った機能性やデザイン性のノウハウを生かし、展開分野の拡大を図る。

 農業や林業向けに続き、同季初めて漁業用のアイテムを開発した。漁業用ビブ「フィッシャーマンビブ」は、重量感があり防水に特化した一般的な漁業用ビブに比べ、蒸れを放出する高い透湿性を兼ね備えた軽量タイプ。

 立体裁断で動きやすく、すっきりとしたシルエットながら厚手のインナーを重ね着してもごわつかない。

 取り外し可能なサスペンダーとサイドジッパーで楽に脱ぎ着できる上、接着処理した縫い目のない裾で保水もしにくい。赤、青、黄の明るいカラーバリエーションで、女性や若い人への訴求力も高める。

 車椅子ユーザー向けには、「パラ トラウザーズ」のパンツを展開。長時間座ることを考慮し、尻に縫い目のないパターンを採用した。

 撥水(はっすい)加工しているため、小雨程度なら難なく弾き、汚れも付きにくい。大きく開くサイドジッパーと長めにとったフロントジッパーで脱ぎはきも簡単。既存の車椅子用レインウエア、レインレッグカバー同様、使いやすさにこだわっている。