三陽商会/体制刷新、再生プラン発表/2年後の黒字化目指す

2020年04月16日 (木曜日)

 三陽商会は14日、5月の株主総会日付で大江伸治副社長執行役員の社長昇格、中山雅之社長の副社長降格という新体制を決めた。同時に「再生プラン」も発表。基礎収益力の回復と、そのための事業構造改革を基本方針に、2022年2月期に売上高550億円、営業利益15億円を目指す。今期については新型コロナウイルスの影響を加味し、二つのシミュレーションを行ったが、営業損失は避けられない見通しだ。

 中山社長は「新しい経営体制を本日の取締役会で決めた。非常時であり、大江副社長と役割を交代した方が、金融機関や株主などの理解を得やすい。私は土台を支える。既存の取締役は退任する」とし、4期連続の赤字責任を問う株主RMBキャピタルとも協議していく考えを示した。

 大江副社長は「百貨店中心(売上構成比62%)で、ビジネスがリニューアルされずオールドモデル化している。オペレーションコストが高く、リスクマネージメントも甘い」と、現状を指摘。「目前の新型コロナ対応を含め容易ではないが、不退転の覚悟で臨む」と決意表明した。

 現状打破は「ブランドバリュー/ブランドプレステージを向上させることで収益を上げるマルチブランドビジネスモデル」を目指す再生プラン。「過大な売り上げを前提にした緩慢な計画だったため、結果として不徹底に終わった」という反省から、調達原価低減、建値/総消化率の改善、不採算事業の抜本改善で、21年2月期に粗利率を3・8%改善し黒字化する。

 百貨店販路は選別強化・高効率化し、不採算売り場は撤退する。直営店は強化拡大。現在の1050店舗のうち、約150店舗を削減する。EC(電子商取引)はリアル店舗との連携で底上げし、EC化率は15~20%に高める。ブランディングは強化する。新事業は今年度中にめどを付け、整理する考え。

 組織は事業部門を1事業本部制にして指揮命令系統の明確化、全ブランドの一元コントロールを図る。ECを事業本部内に移管するほか、販売員の評価制度も見直す。

 新型コロナ対策として、今期はECを通じた販売の最大化を図る。仕入れは平常に比べ下半期さらに30%削減、20年2月期比で110億円程度削減、21年2月期末在庫は30億円程度削減する。新規出店は延期・凍結し、販売スタッフの一時帰休なども検討。影響が3~8月継続した場合、売上高440億円、営業損失60億円、1年間継続した場合は売上高355億円、営業損失105億円を見込む。

 大江伸治(おおえ・しんじ) 1971年4月三井物産入社、97年7月繊維第三部長、2004年4月理事コンシューマーサービス事業第一本部副本部長、07年6月ゴールドウイン取締役専務執行役員総合企画本部長、14年4月取締役副社長執行役員社長補佐、19年4月顧問、20年3月三陽商会副社長執行役員。

〈販売不振で計画未達〉

 三陽商会の2020年2月期連結決算(19年1月~20年2月の14カ月)は売上高688億円(当初計画比36億円減)、営業損失28億円(34億円減)、経常損失28億円(36億円減)、純損失26億円(33億円減)と、計画未達に終わった(短信既報)。冬物衣料販売の不振、新型コロナウイルスの感染被害拡大に伴う消費減退などによるもの。

 粗利率は46・4%で計画の49%を2・6ポイント下回った。値引き販売の拡大、過剰在庫処分などによる。販管費は人件費を計画通り圧縮したが、積極投資で販管費比率は2・4ポイント上昇し、営業利益率は5ポイント悪化。不採算売り場の減損、撤退費用引当なども増加した。

 ブランド別では「エポカ」が増収、直営業態を広げた「マッキントッシュ フィロソフィー」も前年レベルを維持した。EC売上高は84億円で前年比25%増。EC化率12・7%、自社EC比率は74%だった。