夏季総合特集Ⅱ(6)/検査機関の次世代事業は

2019年07月23日 (火曜日)

 サステイナビリティー(持続可能性)の潮流は、サプライチェーン全体に広がっている。検査機関の新機能もそこに向かう。

〈グローバルネット広げる/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、「カケン多言語表示サービス」を展開する。海外17カ国の法規制に対応したアパレル製品の表示(絵表示、組成表示、原産国表示、デメリット表示、警告表示)を提供。副資材メーカーと表示連携システムを構築し、試験データに基づいた10カ国語の表示を配信する。

 安心・安全では有害化学物質を分析するほか、グローバルマネジメント室が、RSL(制限物質リスト)を作成、対象物を分析・試験する。ビューローベリタスとも提携し、中国やベトナムの工場廃水チェックもできる。

 上海科懇検験服務ではCSR審査・指導を進める。事前指導を実施することで、監査不合格のリスクを軽減し、繊維系に特化したCSR監査リポートを作成。IRCA(国際審査員登録機構)に準拠した免許有資格者指導を基に実施する。日本アパレル・ファッション産業協会の「CSR憲章」策定にも協力した。

 新たな機能試験の開発にも注力する。大阪事業所は1月から、国内で唯一の評価機関として、JIS L1950に規定された生地の防蚊性試験を開始。環境面ではマイクロプラスチック問題にも取り組む。

 中国、ASEANに多くの試験拠点を設けるが、「カケンインド バンガロール事務所」を新規に開設。試験は香港検査所で対応している。

〈グローバルにCSR対応/ニッセンケン〉

 「エコテックススタンダード100だけでなく、ステップ、さらにメイドイングリーンへとつなげていきたいという企業が出てきている」。ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の駒田展大理事長は、サステイナビリティー(持続可能性)の潮流と認証制度への関心の高まりがあると言う。

 繊維製品の有害物質に対する世界的な安全証明「エコテックススタンダード100」は人体への有害物質だけでなく、環境ホルモンなど地球環境の安全性にも寄与する。最近はエコテックスファミリーとして、使用薬剤の認証システム「エコパスポート」、持続可能な繊維生産の認証システム「ステップ」、消費者へ生産情報を伝えるラベリングシステム「メイドイングリーン」も展開する。

 中国を中心に海外展開を進め、インドにもジャイプル事業所を設立した。テクニカルテキスタイルに関するインド唯一の団体である「インドテクニカルテキスタイル連盟(ITTA)」とこのほど、製品認証サポートなどに関する了解覚書を締結した。両国のテクニカルテキスタイル市場の促進が目的。国際的なセミナーなどを協働で運営するほか、製品試験基準の開発を共同で促進、インド製品の受容性を高めるため、製品の認証を得るサポートも行う。独自のグローバルネットワークを広げる。

〈サステ分野の事業化推進/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、既存事業の延長線上で新規事業に取り組む。抗菌防臭加工は、制菌や抗ウイルス性試験などに発展し、国内外で試験体制を構築した。繊維だけでなくプラスチック製品などの抗ウイルス性試験方法にも着手。同試験方法は5月にISO21702として発行された。

 QTECは抗菌製品技術協議会(SIAA)によるこの規格の国際標準化で、SIAA抗ウイルス委員会(国内会議)の委員長、国際会議の日本代表のエキスパートを務めた。プラスチック製品などの抗ウイルス加工SIAAマークは7月から運用されており、QTECは試験受付を開始した。

 環境系への有害化学物質の排出ゼロを目指す「ZDHC」にも加盟している。これまでの工場審査、監査業務の経験を活用して、製品安全に加え、産業従事者の労働衛生と環境保全に向けた活動を展開していく。

 加入によりZDHCのメンバーブランド企業との直接間接に取引のある企業に対し、日本語による情報提供と支援を行う。化学物質の適正管理を志向する企業にも、ZDHC方式の取り組み支援が可能と言う。

 有害な化学物質だけでなく、「工場で働く人の人権などについての監査体制を整え、ワンストップ監査を目指す」方針。サステイナビリティー(持続可能性)分野での事業化を進める。

〈QCに加えCSR監査も/ボーケン〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、「お客さまと共同で品質保証を行うパートナーへの変革」を目指す。クオリティ試験センターは従来行ってきた品質試験業務に加え、商品開発段階から、品質管理サポート業務を行い、モノ作り全体の品質サポートを進める。

 同センターは工場監査支援業務も実施する。縫製検査工場認定制度の審査から、是正・改善、指導まできめ細かく対応。フォローアップ監査も実施する。このQC監査と同時に、「CSR監査も行っていく」。現在、中国では上海、常州、青島の拠点にQCチームを置くが、これと連動する形で、上海と青島にCSRチームを配置する準備を進めている。「CSR監査は現地スタッフが行えるよう体制を整えていく」と言う。

 海外販売のサポートでは、海外のネットワークを活用し、グローバル試験センターを開設。欧米規格のISO、AATCC、ASTM規格などの試験を東京事業所や常州試験センターで対応する。

 情報面でも支援する。今月は「海外の有害物質規制とその動向(EUと北米を中心に)セミナー」を東京と大阪で開いた。26日には「アセアン内販セミナー」をボーケン東京本部ビルで開催。タイ・インドネシア・ベトナムで衣料品を販売する際に知っておくべき法規制(表示や安全性)について解説する。