特集 商社OEM2019(2)/新時代迎える商社の製品事業

2019年06月26日 (水曜日)

〈幅広い用途に機能性を/サステの潮流に対応/蝶理〉

 蝶理は、素材・製品OEM/ODMで、得意とする合成繊維の機能性を幅広い用途に提案する。独自開発したストレッチ性のある糸「テックスブリッド」をはじめ、機能性素材を「北陸合繊」として打ち出す。

 今月上旬に東京都内で開いた「20春夏総合商談会」では、テックスブリッドについて、フルアイテムへの展開や異素材とのブレンドを提案した。特にメンズでは、ポロシャツなどのニット製品にも使用し、幅広い用途に対応する機能性を訴求した。中国で生産する機能性合繊についても、軽量感とイージーケア性を持たせた「アーバン・ファンクション」として披露した。

 商談会では、ファッションとエコロジーの共存をテーマに、サステイナビリティー(持続可能性)の潮流に対応する商材も提案した。基軸に据えたのが、オリジナル商材の「エコブルー」と「ナチュラル・ダイ」。

 エコブルーは、廃棄されたペットボトルを100%使った再生糸。国内外のサプライチェーンを活用し、ペットボトルのチップ化から紡糸、織り編み、染色、縫製・加工までの工程を整備したリサイクルシステムを運用している。

 エコブルーと合わせ、裁断くずを原料とするリサイクルコットン「リカバー」、サトウキビの廃糖蜜を使用した東レの部分植物由来ポリエステル繊維「エコディア」もエコ素材として打ち出した。

 ナチュラル・ダイは、植物や鉱物から抽出した天然色素を繊維に固着させる染色法。天然繊維以外の合繊や化繊に染色することもできる。

 展示会では機能性にサステイナブル対応も加えることで、素材の提案力を高めた。今後も、産地に根付いた強みを発揮していく。

〈原料起点で独自価値/社内外で連携進展/ヤギ〉

 ヤギは製品OEM/ODM事業で、「原料起点のオリジナルバリュー」をテーマに社内連携、グループ間協業を推進する。既に原料や生地からの差別化商品開発が幾つもスタートを切っており、全社方針に掲げる「キラーコンテンツ創出」の具体化が見られる。

 2019年3月期の同社製品事業は前期比増収増益だった。専門店系などの新規開拓が進んだことがその要因。新規開拓に力を発揮したのが、2年前に立ち上げた「オリジナル・バリュー・フォー・リテーラー(OVR)」という全社横断型のプロジェクトチーム。原料、生地、製品という縦割り組織にOVRという横串を挿すことで強みとする原料や生地からの製品提案が進み、業績伸長に寄与した。

 OVRの目的は「次世代型OEM」を作り上げること。その基本となるのが原料、生地からの差別化。第一弾として投入したのが「マルチエフェクト」という生地群。生地部門との協業により「さまざまな機能を組み合わせられる」という同生地群を製品提案につなげた。反響はかなり大きいという。

 ベトナムではグループの生地商社、イチメンとの備蓄販売もスタートを切り、中国では同じくグループの山弥織物の撚糸技術を生かしたコンパクトヤーンの備蓄販売を始める。両国事業とも生地販売、製品受注の両方に対応するもので、「顧客の“顔”は見えている」(山岡一朗取締役営業第二本部長兼第二部門長)ため順調に拡大すると見る。

 今期は「事業環境としては厳しさが続く」と見通すが、ライセンスビジネスの拡大、デジタルプラットフォームとの協業、限界利益率の追求などを推し進め、新領域を開拓する。

〈独自性で利益向上図る/適地適品生産も追求/クラボウインターナショナル〉

 クラボウインターナショナルの2019年3月期は、主力の製品OEM/ODM事業でカジュアル分野の不振が続いていることなどを受けて前期比減収減益となった。今期は適地適品生産や独自性の追求、グループ連携、素材からの付加価値化などを進め、特に利益の向上に努める。

 西澤厚彦社長によると前期は、天災など天候不順、供給過剰を背景として売れ行き不振、価格訴求型商品の要望増、直接貿易の拡大などマイナス要因の多い期だった。今後もこうした要素は継続すると見るが、事業拡大、とりわけ利益率の向上に向けて、さまざまな施策を推進する。

 その一つが適地適品生産の追求によるコスト低減と納期対応。同社縫製地の65%(金額ベース)を占める中国では主に多品種・短納期型の商品を作り、インドネシアでは自家縫製工場のアクラ・ベニタマ(AKM)を軸に縫製拠点拡大を図る。バングラデシュでは主に価格訴求型商品に対応し、ベトナムでは、隣国タイのタイクラボウなどの生地を活用してSPA向けなどを作る。竹田、村上の国内縫製工場では日本製商品の良さをアピールする。

 売り上げよりも利益にこだわるが、その確保策として独自性を重視する。特殊機能性レーヨン「ルナセル」、健康志向の高まりを受けてドイツの企業と独占使用契約を締結した製品ブランド「パワーウォーキング」、抗菌・抗ウイルス加工「クレンゼ」などがそれに該当する。それぞれ知名度向上に力を注ぎながら製品事業の独自性向上につなげる。

 素材からの差別化では他にも、ストレッチ商品やオーガニックデニム、極厚デニムなどの開発、提案を進める。

〈スポーツ・ユニフォームで強化/「Zシャツ」「Eシャツ」が順調/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは2019年度で中期4カ年計画の2年目を迎えている。衣料繊維事業では体質改善を強化しながら、スポーツやユニフォームで海外生産、製品OEMをリンクさせた拡大戦略に取り組む。

 スポーツでは、インドネシアの拠点である東洋紡マニュファクチャリングインドネシア(=TMI、編み・染め)、STGガーメント(縫製)を駆使し、ニットやスポーツシャツ、ビジネスシャツを生産。テキスタイル販売や「Zシャツ」ブランドによる製品展開を進めてきた。

 このビジネスをスクールユニフォームへも拡大。「Zシャツ」をシャツ向けに、「Xジャケット」をブレザーや学生服をターゲットに打ち出している。この間、自社の強みを発揮できる独自素材との一貫型OEMに絞り込む作業を進めてきており、19年度でこの作業を終わらせる。

 ユニフォームでは、TMI、STGガーメントやベトナムの東洋紡ビンズン(縫製)を駆使した製品OEMも交え、ユニフォーム・シャツビジネスの拡大を計画する。

 合繊ニットを導入しドレスシャツ用途へのアプローチに力を入れており、郊外型量販店やスクールで販路を開拓。ポリエステル・綿の丸編み「Zシャツ」、ポリエステル100%の丸編み「Eシャツ」の販売が順調と言う。

 このほどポリエステル100%やポリエステル70%・綿30%で開発した経編み「Aシャツ」を開発。20秋冬から販売を開始する。

 現在、東洋紡ビンズンはフル操業を続けており、今後も自家工場をフル操業させながら、周辺に確保する協力工場で増産分をカバーし製品OEMビジネスを伸ばす。

〈事業可視化、効率化推進/事業部横断でサステ素材/日鉄物産〉

 日鉄物産は市場変化に即したOEM/ODMを目指す。デジタル技術の導入による事業の可視化、効率化を加速させ、サステイナブル(持続可能な)素材を積極的に提案する。

 デジタル化では、社内システム「ウインズ」のリニューアルを行う。業務情報の共有化を目的にして導入したが、生産管理まで広げる。3Dグラフィックを使用したサンプル作りも進め、効率化だけでなく、高品質化も追求する。

 4月には衣料品電子商取引(EC)向けにIT活用のノウハウを提供するメイキップ(東京都新宿区)に出資し、資本業務提携を結んだ。メイキップのノウハウや技術をOEM/ODMの縫製や検品に取り入れて業務の効率化を図るのが狙い。

 商社OEMは素材軸を切り口にした提案が広がる。同社の場合、昨年4月にサステイナビリティータスクフォースのチームを立ち上げ、事業部横断でサステイナブル素材の開発を進めている。

 5月に開かれた「20春夏レディス合同展示会」では、エシカル素材「エス」を提案。レンチング社のリサイクルリヨセル「リフィブラ」とペットボトルをリサイクルしたマイクロポリエステル原料を、毛羽の少ない「ボルテックス」渦流精紡で糸にし、布帛や丸編みで展開する。

 ニットではキュアテックス(東京都世田谷区)と協業し、マニラ麻100%の和紙糸を展開。清涼感があり、切れにくく、ナイロンや綿との撚糸タイプもそろえる。

 インドのパンジャブ州立農業大学とは、白以外の色の実を付ける綿花の共同研究も始め、染色の廃水問題にも着手、地球環境保全にも挑戦する。

〈独自性高い素材を提案/ファッション向けにも訴求/田村駒〉

 田村駒は、機能性に富んだ独自性の高い素材を提案することで、OEM/ODMの差別化を図る。

 接触冷感の素材シリーズ「グレーシャー」は、UVカット、吸湿速乾、イージーケア、軽量などの多機能性を発揮する。異形断面により肌に接する面積を広げ、冷感効果を高めたものがある。これまでスポーツ中心に提案していたが、20春夏からはファッション素材としても訴求する。

 接触冷感素材を使用した持続性冷感素材「トワクール」も、熱中症対策に提案する。接触冷感生地、保水シート、ダブルラッセルの3層構造が、高い冷感効果をもたらす。ぬらすことにより、気化熱で高い冷感性を発揮し、保水シートがこの効果を長時間持続させる。

 トリコット素材「コンフィール」は、吸水速乾に優れ、シワになりにくいのが特徴。一部でキュプラを取り入れている。紳士服チェーンに採用されるなどメンズ中心に展開してきたが、今後は色のバリエーションを増やし、レディース向けにも提案する。

 20春夏から新たに打ち出すのが、麻を他の天然素材や合繊と組み合わせた「ハイブリッド麻素材」シリーズ。麻特有の柔らかな風合いを保ちながら、エコと機能性を兼ね備えた生地をそろえた。

 生地には、欧州の検査機関の厳正な管理下で栽培された麻を使用。吸水速乾に優れた機能性ポリエステル「クールマックス」など幅広い素材を組み合わせた。

 綿、「テンセル」リヨセル、再生ポリエステルとの4者混紡もシリーズに加え、サステイナビリティー(持続可能性)への対応も訴求する。

〈高付加価値を追求/特性生かした素材開発/豊島〉

 豊島は、付加価値が高いOEM/ODMを追求する。既存顧客に対し「マインドに刺さる」提案をしていくため、さまざまな仕掛けを打ち出す。

 今月上旬に開催した「20春夏素材展示会」は、豊島の提案力をアピールする場となった。九つのコーナーから、素材にストーリー性を持たせた提案を行った。

 展示会では、素材作りに対するサステイナブル(持続可能な)姿勢を表す企業ステートメント「MY WILL(マイ・ウィル)」を初めて披露した。オーガニックコットンブランド「オーガビッツ」を展開するなど、繊維業界ではいち早くサステイナビリティー(持続可能性)に取り組んできた同社だが、今後は天然素材の掛け合わせや環境配慮型の加工法の提案にも力を注ぐ。

 コットンについては、オーガビッツに加え、トルコ産オーガニックコットンを基軸に据える。トルコの紡績工場と国内独占契約を交わしており、トレーサビリティー(追跡可能性)も万全だ。

 麻については、リネン、ラミー、ヘンプの特性を見直して素材開発した。機能性を持たせた素材は「LIN+」と名付けて打ち出す。

 ニットについては、4カテゴリーに分けて11素材を紹介した。欧州の糸を使ったバングラデシュ生産組み立て、ドライタッチ素材、端境期素材、ファンシーヤーンとバリエーションをそろえた。

 トレンドを発信する「WILL」ブースでは、生活を楽しむ女性をイメージし、大きな花柄をあしらった製品などを出品した。

 コストパフォーマンスに特化したブースでは、素材背景と生産背景を活用し、取引価格以上の商品価値を提供できる体制を説明した。

〈ソフトな麻生地を開発/素材重視の方針鮮明に/三井物産アイ・ファッション〉

 三井物産アイ・ファッションは、OEM/ODMのベースとなる素材開発に力を注ぐ。4月の機構改革で、各事業部から素材担当者をMD企画部に集め、カテゴリーを越えた開発に本腰を入れ始めた。

 5月下旬に都内で開いた「20春夏素材展示会」で素材(生地)重視の方針を打ち出した。新開発のソフトな麻生地「クラッシュリネン」や紙糸を使った「ワクロス・ハイブリッド」などを生活の場面に応じて提案した。

 クラッシュリネンは、乾燥状態の原料から繊維を取り出す独自製法で、綿ライクの肌触りとシワを防ぐ機能性を持たせた。麻100%からポリエステルとの混紡まで幅広くそろえ、男女問わずジャケット、シャツ、ボトム用途に向ける。

 ワクロス・ハイブリッドは吸湿・放湿性に優れ、ムレを軽減する。抗菌防臭性や紫外線吸収力も備える。糸の中の空隙により、軽量で通気性が高く、年間を通じて快適さを維持する。デニムにも展開している。

 機能性素材では、表側が撥水(はっすい)で裏側は吸水拡散の「3XDRY」、洗えてフッ素フリーの撥水ニット、レーヨンだが撚りでウオッシャブル機能を付与した素材、ギリシャ綿を強撚した開発素材などを打ち出した。

 生産面でも、ASEAN地域の最重要拠点であるベトナムの体制を強化した。ニットのOEM/ODMを低価格帯にも広げるため、ハノイの新たな協力工場で編み立てする生産スキームを構築した。低コストで高級な風合いのニットを製造し、OEM/ODMの差別化を図る。

〈ベトナムの現地化加速/デジタル化で効率性向上/スミテックス・インターナショナル〉

 スミテックス・インターナショナルは、ベトナムと中国で築いた生産背景を生かし、OEM/ODMの対応商品の間口を広げている。

 ベトナムでは、素材から縫製まで一貫生産体制を整え、中高級布帛製品を手掛ける。

 ホーチミンでは、SGS(サミット・ガーメント・サイゴン)と連携し、重衣料から中軽衣料や婦人物までの製品をカバー。26ラインが稼働しているが、大口顧客に対しては、ラインを調整して小ロットの発注にも対応すると言う。

 約3年前に中部のダナンで開設したベトナム第2工場は、年内にも12ラインに拡大する計画。当初はパンツ中心だったが、トップスまで手掛けるようになった。

 1990年代に進出した優位性を発揮し、ASEANシフトの中核を担うベトナム事業は現地化が加速している。近年は素材開発にも力を注ぎ、直接貿易の体制強化を図る。

 着実に成長を遂げるが、人手不足という課題にも直面している。今後もコストを抑えながら品質を向上させるため、デジタル化による業務の効率化に取り組む。縫製現場では、デジタルミシンの導入を進めている。25年以上をかけて積み重ねてきた品質への信頼を死守する。

 一方、中国はASEANシフトの影響はあるが、内販の顧客との取引は堅調に推移する。豊富な素材がそろう環境を生かし、ボリュームゾーンを中心に日本向けの高品質のモノ作りを維持していく。

 現在は電子商取引(EC)分野からのOEM/ODMの引き合いが増えていると言う。新しいマーケットへの挑戦も前向きに検討している。