特集 アパレル総合19秋冬(8)~企画&トレンド~/デニムカジュアル編

2019年06月25日 (火曜日)

〈環境配慮型商材打ち出し/豊島〉

 豊島は、国内の繊維業界ではいち早く環境配慮型商材の開発や普及に取り組んできた。オーガニックコットンブランド「オーガビッツ」、「テンセル」リヨセル、廃棄予定の食材を染料に使用する「フードテキスタイル」などが代表例だ。日本環境設計とは古着のリサイクル事業「ブリング」を推進している。

 近年はファッション業界でもサステイナビリティー(持続可能性)を重視する動きが加速し、豊島の取り組みへの注目度が高まっている。そうした業界へ向けて、素材作りに対するサステイナブルな姿勢を表す企業ステートメント「MY WILL(マイ・ウィル)」を打ち出していく。具体的には、綿や麻など天然素材の掛け合わせや環境に配慮した新しい加工法を提案する。

 象徴的な商材として挙げられるのが、製法から環境負荷低減にこだわった「サステイナブル・デニム」。レーザー加工やオゾンウオッシュを活用し、水の使用量を約85%も削減した。ステッチやファスナーテープには再生ポリエステルを使用。ストーンウオッシュで使う軽石も、オリーブの種を代用する徹底ぶり。エコを意識した新しいカジュアルを発信する。

〈“大人可愛い”を表現/ビッグジョン「ブラッパーズ」〉

 ビッグジョン(岡山県倉敷市)は、レディース向けジーンズブランド「ブラッパーズ」を刷新した。“美脚ジーンズ”など長年開発してきたパターンを生かし、一段とはき心地の良さや女性らしいシルエットを追求。コーディネートできるトップスも開発した。

 股上を深くするなど最近のトレンドに落とし込み、“大人可愛い”を表現できるブランドとして、新たにターゲットを30代からに設定。より女性らしいシルエットを追求した。

 素材は綿100%のほか、「テンセル」リヨセル混といったデニム素材を使い、「はいたときに、ソフトで心地良さを実感できる」ものを厳選。テーパード、スリムなどジーンズのほか、フレアスカートにも見えるワイドパンツ、“スーパーフレア”など8型を商品化した。

 トップスとのコーディネート提案も強化。ライトブルーに白のTシャツといった同系色の濃淡による配色“トーンオントーン”による着こなしがしやすいアイテムをそろえる。

〈高単価モデルに期待/アークデニムファクトリー「マインデニム」〉

 新興ジーンズ企業のアークデニムファクトリー(東京都渋谷区)は、自社で製造販売するジーンズブランド「マインデニム」の取引先が計40アカウントに拡大した。婦人・紳士ともにブラックのスキニージーンズがアイコンになり、3万~4万円台の高単価モデルがリード商品になっている。

 同ブランドは、16秋冬シーズンから販売をスタート。著名芸能人などを担当するスタイリストの野口強氏がデザインを監修し、商品は岡山県の自社工場で生産している。ジーンズの価格帯は2万~6万円台で、リジットタイプからペイント加工を施したデザインまで豊富なバリエーションを提案している。

 野口氏が得意とするインポートブランドとのスタイリングやPR活動が奏功し、30~40代の男女が主力購買層になった。19秋冬は、デニム素材のロングジャケットやワークジャケットなど、ジーンズから派生したアイテムも打ち出す。着心地を重視した超長綿の採用をはじめ、ストレッチ素材を配合した混紡ジーンズも特徴になっている。

〈コーデュロイの商品も/カイタックインターナショナル「ヤヌーク」〉

 カイタックインターナショナルは、米国発のジーンズブランド「ヤヌーク」19秋冬企画で、非デニムのアイテムを拡充する。メディアでの露出やブランドの知名度を生かしながら、20代後半~30代女性に訴求。非デニムは約50SKU(在庫管理の最小単位)の品ぞろえになる予定だ。

 コーデュロイ素材のセットアップやブロードのロングシャツ、ニットウエア、ミリタリージャケット、カーゴパンツといったアイテムを投入。ラベンダーなど、アイキャッチを引くカラーでMDを構成する。

 同社では「マーケットでセットアップが注目されており、デニム以外の素材で作り込んだ。定番のデニムジャケットやジーンズも従来通りに提案する」と説明する。

 同ブランドの中心顧客は40代前半で、明るいカラーの非デニム商材で若年層を取り込む狙い。デニムでは表現できなかったディテールやカラーを打ち出し、フレッシュなモチーフを展開。フリー客にもアピールする。

〈インディゴ系でバリエーション/ブルース「KURO」〉

 ブルース(東京都渋谷区)が展開するジーンズカジュアルブランド「KURO(クロ)」は、インディゴ系のジーンズ品番を強化している。19秋冬シーズンに向けては、紳士で細身のテーパードシルエット、婦人でワイド系ハイウエストのジーンズをそろえる。同社では「嗜好(しこう)品としてのジーンズではなく、コーディネートの一部としてシルエットを選定している」と分析している。

 紳士では、そのほかにも甘織りで仕上げたルーズデニム生地を継続提案するなど、素材感で差別化を図った。「甘織りジーンズが定着してきた。リピーターも増え、(甘織りの)デニムジャケットも店頭で動いている」と話す。紳士はアウター類も堅調で、ウール素材のボリュームコートにも期待感を示している。

 婦人では、ワイド系ハイウエストのジーンズに加え、ストレッチ性の強いスキニータイプやスリムテーパードのジーンズを並べる。店頭では、体形を隠すよりも、健康的に見せるタイプが動いている。ダメージやリメークとも異なる奇麗めの洗い加工で表現する質感の支持が厚いようだ。

〈カイハラ/デニムトレンドに期待感〉

 デニム製造のカイハラ(広島県福山市)の第1四半期(2019年3~5月)は、ライフスタイルやスポーツなど新しい分野へのデニムの採用が広がり、国内向けの販売、米国向けを中心とした輸出も前年同期を上回るペースで拡大した。貝原淳之専務は「市況はまだまだ悪い」と話すものの、「海外の著名デザイナーからコレクションでのデニム採用が増える傾向にある」と指摘。デニムトレンドが回復基調にあることを期待する。

 スポーツは来年の東京五輪・パラリンピックを見据え、スポーツブランドによるアスレジャー向けを中心に「さまざまな企画が増えている」(貝原専務)。海外ブランドもデニムを企画に取り込んでいこうとする動きが増え、先行きの需要に若干の明るさが見えてきた。

 今期は紡績からロープ染色、織布までの一貫生産できる強みを持つからこそ開発できた「特許に絡む新しいデニム」の商品化も現実味を帯び、デニムだけでなく非デニムも含めて新たな取り組みを模索。5月にはホームページも刷新、毎週情報を更新し「デニムだけでなく、いろいろな情報を発信」しながら、消費者へ直接訴えデニムへの関心を高める。

 さらに「将来的にはバイオーダー、B2Cによるオリジナル商品の展開も考えていかなくては」と新たな市場深耕も見据える。