環境特集(6)/日々高まるエコへのニーズ/サステ素材を前面に

2019年06月17日 (月曜日)

〈生分解性と機能生かす/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは、天然由来繊維であるレーヨンの環境に優しい特性を生かし、そこに機能性を付与することで新たな需要の創出に取り組んでいる。

 近年、合成繊維製品から発生するマイクロプラスチックによる海洋汚染への懸念が高まったことで生分解性を持つレーヨンへの注目が高まった。こうした流れを受け、同社はこのほど海水中での生分解性も確認したレーヨン短繊維「DRコロナ」を開発した。日本で生産されている再生セルロース系繊維で海水中生分解性を確認したのは初めてとなる、

 DRコロナは欧州の検査機関で、国際規格であるASTMに基づいて海水中生分解性を確認しており、これを生かして紡績向けと不織布向けともに日本だけでなく欧米にも幅広く販売することを目指す。

 もう一つ取り組むのが機能レーヨンによる需要創出。例えば撥水(はっすい)レーヨン「エコリペラス」は、通常は吸水性の良さが特徴のレーヨンを撥水機能化することで、衛生材料などで従来とは異なる用途を開拓することが狙いとなる。世界的に“脱プラスチック”の流れが強まり、生分解性繊維の需要も高まった。エコリペラスで合繊代替の需要掘り起こしを進める。

〈オーガニックの社会的価値も/大正紡績〉

 オーガニック綿を使った紡績で代名詞的存在となっているのが大正紡績。こうした強みを生かし、環境だけでなくオーガニック綿が持つ社会的な価値も打ち出す。

 近年、企業活動では「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の視点が重要になる。同社ではオーガニック綿を通じて環境に加えて栽培農家の雇用創出、所得向上など社会的な価値の実現も目標とする。

 このため世界各地のオーガニック綿を発掘し、商品化するなど商品のバリエーション拡大に取り組む。シルクやリネンなど他のオーガニック原料との混紡も強化する。

 再生原料へのニーズも高まっていることからオーガニック綿の反毛を活用した商品開発にも取り組む。近年、国内で反毛工程を担える企業は少ない。このため自社で反毛機を導入することも検討している。

 紡績である同社にとって、こうした取り組みを実現するには糸のユーザーである産地の織布・編み立て企業、アパレル・流通、デザイナーとの連携が不可欠であり、これまでもチームでのモノ作りで成果を上げてきた。価値観を同じくする企業と環境や社会的価値を共創することを目指す。

〈広がる「冷却下着ベスト型」/帝国繊維〉

 暑熱環境下での熱中症対策・安全対策として注目される帝国繊維の「冷却下着ベスト型」。昨年の「猛暑対策展」出展以来、問い合わせやデモ機の貸し出し依頼が増え、今年3月から着々と販売を伸ばす。建設業関連に加え、自動車メーカーや製造業の倉庫を含む物流関連からの注文が増えている。

 冷却下着ベスト型はベスト内部に張り巡らせたチューブの中を約4℃の冷水が循環し上半身を涼しく快適に保つ。このため外気を遮断する防護服の中でも効果を発揮。密閉した空間での塗装作業時にも最適だ。宇宙航空開発機構、日本ユニフォームセンター、島精機製作所とともに開発し、帝国繊維が販売する。

 腰に下げるタンク型は約60分、リュック型は約120分連続使用可能。電源につなぐ4キロ程度のチラー型は長時間使え、フォークリフト操縦者などの労働環境改善にもつながる。最近ではカー用品メーカーでも取り扱われ、バイクを含むレーサーや一般ドライバーにも広がりを見せる。家庭洗濯でき速乾性が高いのも好評の理由。

 今後はスポーツ後のアイシング、介護・医療分野での活用も視野に入れ、チラー型は電源不要のバッテリー化、タンク型とリュック型は軽量・小型化、装着性や冷却持続時間の向上を検討する。

〈YKK/サステの推進室新設〉

 YKKのファスニング事業本部は4月1日付で、「ファスニングサステナビリティ推進室」を新設した。吉岡麻子同室長は「より良いものが求められる中で、サステイナブル(持続可能な)素材の要望が高まり、社会的にも対応しなくてはいけない時代になった」と、背景を説明する。

 社会の動きを見ながら、顧客のサステイナビリティー(持続可能性)への要望を受けて一元的なファスニング戦略を立案・実施していく。同室は8人だが、あらゆる部署と連携して商品・技術によるブレークスルーを追求する。「量的成長と環境対応の両立を図り、持続可能な社会の実現を目指す」

 理想は「ゆりかごからゆりかごへ」。「使用後も元の商品に戻す資源循環。限りある資源をループさせる」そして「気候変動へ対応していく」ことが商品や生産の方向性となる。リサイクルファスナー「ナチュロン」、6月発売の新商品の植物由来エコファスナー「グリーンライズ」を提案する。「既存ファスナーも環境に配慮した施設・設備で生産しており、耐久性も高い」と語る。

 YKKは昨年、SAC(サステイナブル・アパレル連合)に加盟した。同社は1993年に「エコテックススタンダード100」認証を取得、94年に「YKKグループ環境宣言」を制定し、2013年からは独自のコンプライアンス基準「YGCC」の運用を開始。安全衛生・労働条件・環境など現在は約460項目を管理する。第三者機関の監査も受ける。

〈「フォレシカ」浸透に力/ヤギ〉

 ヤギは今年4月にデビューさせたエシカル生地シリーズ「フォレシカ」の市場浸透を図る。糸・わた、生地、製品というそれぞれの事業でエシカル商材を投入してきたが、今後は「点を面にしていく」とし、全社方針に掲げるエシカル指針「ヤギシカル」に基づき、地球環境保護を追求しながら、同時にビジネス拡大に挑む。

 フォレシカの第1弾として投入するのは、レンチングのレーヨン繊維「エコヴェロ」とインド産オーガニックコットンの混紡糸を使った編み地。まずは天竺とスムースの2品番から展開し、備蓄も行いながら顧客の反応を見てバリエーションを拡大していく。

 実販売はこれからだが、既に多くの問い合わせを得ており拡販に手応えがある。グループのイチメンとの協業により織物も投入予定。第2弾としてリサイクルポリエステルの投入を予定するが、オーガニックコットンでGOTS認証を取得していることと同様、各種認証取得で“本物”を訴求する。

 同社は事業部横断組織「エシカル委員会」を昨年末に立ち上げた。営業、人事、総務など複数部署から兼任人員を集結させたもので、「エシカルマガジン」という社内メールマガジンを配信するなど社内の意識向上に努めている。

〈エコプロジェクト始動/モリリン〉

 モリリンは3月1日、「モリリン・エコプロジェクト」を始動させた。 同日付で新設された素材開発部が推進役となり、サステイナビリティー(持続可能性)を確かなものにするために、さまざまな角度からの提案を行うことで、SDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献する。

 同プロジェクトが、エコ素材やトレーサビリティー(追跡可能性)の保証ルールを規定。日本ユネスコ協会連盟の維持会員となり、同プロジェクトで規定した素材の使用時に下げ札を発行し、同連盟が主催する「世界寺子屋運動」を顧客と共に支援する。

 強みの一つである素材開発力を生かし、エコロジーを意識した繊維の提案にも一段と力を入れる。

 加えて、無駄な物を作らないことにも取り組む。まずは、得意とするニット製品で、企画から紡績、編み立て、染色、縫製、検品、物流までの各段階がデジタル技術を活用して情報をリアルタイムで共有。同時に、必要な生地は染め上がり、あるいは生機の状態でモリリンが一部備蓄する。さらに、同社が導入した3D・CADを活用して、現物サンプル作りを必要最小限にとどめることなどで、企画から製品完成までの期間を、最短で3週間に縮めることを狙う。

〈広がる「オーガビッツ」の輪/豊島〉

 「MY WILL(マイ・ウィル)」――。豊島は意志を表す言葉に、社員一人一人が持続可能な地球環境保護を目指す決意を込めた。オーガニック素材やリサイクル技術を活用し、これまで以上に環境負荷を低減する取り組みに力を注ぐ。

 オーガニックコットンの普及を通じて社会に貢献するプロジェクト「オーガビッツ」は、同社の環境保護活動の象徴でもある。2005年に開始以来、地道にアパレル業界に働き掛けた結果、アイテムの生産累計は約684万枚に達し、参加するブランドも100を超えた。東日本大震災の被害を語り継ぐための植樹「さくら並木プロジェクト」や、途上国で生きる少女たちの支援への寄付活動でも成果を上げた。

 現在、サステイナビリティー(持続可能性)への対応が迫られる国内のアパレル業界では、オーガビッツで培ったノウハウが一層求められている。ニーズに応えるため、オーガビッツを軸にサステイナブル素材の開発を進めていく。

 廃棄予定の野菜や食材を染料に使用するプロジェクト「フードテキスタイル」でも、共感の輪を広げていく。環境保護を当たり前とする、新しいアパレルの在り方を提示する。

〈ボタニカルダイを刷新/新内外綿〉

 新内外綿は、植物や果実など天然由来の染料によるトップ染め杢(もく)糸「ボタニカルダイ」をリニューアルする。「OCS」や、「エコテックススタンダード100」といった世界で通用するオーガニックや安全の認証も強みに国内外へ改めて発信する。

 色数は従来20色近くあったが、これを売れ筋の色に厳選し半数近くにまで絞り込む。番手は逆にこれまでのオーガニックコットン100%30番単糸のみの備蓄に加え、綿30%・「テンセル」リヨセル70%混の40番単糸も在庫して需要に応える。これに伴い見本帳も全面的に新しくする。

 ボタニカルダイは、天然由来染料と化学染料とを複合することで、草木染めならではの色調と、実用的な染色堅ろう度を併せ持つ。

 用途としては、手芸糸、ホームウエア、レディースカットソーなどで実績がある。昨今、ファッションやライフスタイル分野で世界的に環境配慮への意識が高まっていることから、国内外で関心が高まっている。今月、中国の行政関係者がこの素材の情報収集に同社を訪れた。

 新たなボタニカルダイは9月3~6日に東京ビッグサイトで開かれる「東京インターナショナル・ギフト・ショー」の同社のブースで初披露する。