紡績/抗ウイルス加工を拡充/新型コロナへの効果も推定

2020年04月24日 (金曜日)

 新型コロナウイルスの感染拡大を背景に紡績各社が製造販売している抗ウイルス加工生地・製品への注目が高まっている。これを受けて各社ともラインアップの拡充や性能評価の強化を進める。日本の抗ウイルス性試験は国際標準規格(ISO)とも整合しているため海外販売の可能性も高まる。

 抗ウイルス加工は繊維上に付着したウイルス数を減少させる加工。インフルエンザウイルスとネコカリシウイルス(ノロウイルス代替)を対象に性能評価を行う。このうちインフルエンザウイルスへの抗ウイルス機能は、ウイルスのエンベロープ(ウイルスの外側にある膜構造)に作用することで機能を発現する仕組みが一般的。現在問題となっている新型コロナもエンベロープを持つウイルスのため、既存の抗ウイルス加工が効果を持つ可能性がある。

 こうした中、シキボウは繊維評価技術協議会(繊技協)が認証する「SEK抗ウイルス加工マーク」も取得する抗ウイルス加工「フルテクト」で従来から研究機関で保有されているコロナウイルス(ヒト)に対する抗ウイルス性能試験を実施。コロナウイルス(ヒト)に対する抗ウイルス効果を確認した。

 コロナウイルス(ヒト)は、新型コロナではないが、新型コロナも通常のコロナウイルスの亜種のためフルテクトは新型コロナに対しても同様の抗ウイルス効果が期待できると推定される。こうした結果を受けてシキボウはフルテクトを防護服やマスク、医療従事者向け衣料に使われる不織布に施し、製品の性能向上を進める。

 日清紡テキスタイルも新たに抗ウイルス加工生地「バリエックス」を開発し、白衣やシャツ地に本格投入する。将来的にはワークウエアやサービスユニフォームなどユニフォーム用途全般へも提案を進める。SEK抗ウイルス加工マークもインフルエンザウイルスを対象とした試験で取得した。

 クラボウもSEK抗ウイルス加工マークを取得している抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」の提案を強化。ユニフォームに加えて、マスク、カジュアル、スポーツ・アウトドア、インテリア、雑貨など幅広い用途に提案し、生活空間全体の衛生に貢献することを目指す。

 大和紡績はSEK抗ウイルス加工マーク取得の制菌・抗ウイルス加工生地「クリアフレッシュV」の機能加工剤を安全性の高い無機物系に変更している。これにより後加工だけでなく化学繊維への練り込み加工の可能性も広がった。これを生かし、加工対象素材拡充に取り組む。

 SEKマーク認証の抗ウイルス性試験方法・基準は「ISO18184」として国際標準化されており、日本産業規格(JIS)も「JIS L1922」として整合化されている。このため機能性の評価は国際的にも通用する。既に新型コロナ問題を契機に日本の抗ウイルス加工に対して海外からの引き合いも増加傾向。今後、海外での普及する可能性が高まる。