2020年春季総合特集Ⅴ(5)/トップインタビュー/トンボ/社長 近藤 知之 氏/海外でのモノ作り、制服販売を/攻めの姿勢貫く

2020年04月24日 (金曜日)

 トンボは昨年5月、瀧本を子会社化し、ユニフォーム最大手としての一歩を踏み出した。学生服を中心にモデルチェンジ(MC)の獲得が好調で、同社との相乗効果の発揮も目指す。2022年6月期に目標とする売上高400億円は「射程内にある」と近藤知之社長。併せて海外市場の深掘り、海外企業との連携も視野に、長期的な戦略を計画する。(インタビューは4月8日)

  ――10年後の繊維業界と御社の展望を。

 各産地は強みを生かし、辛抱強く生き残ると思います。一方、当社の10年後の夢としては、海外でのモノ作りの拠点整備や制服販売を考えています。海外アパレルと提携し、日本人学校やアジア圏、英国連邦の学校に販売したいですね。

  ――新型コロナウイルスの影響は。

 足元の業績は堅調ですが、新型コロナ禍が一部の商品や地域の販売に響き、長期的に見ると予測がつきません。学校の休校、夏物を含めた納品の延期などで数字は流動的になる可能性はあります。納期調整など実務面でも対応が必要です。

  ――20年入学商戦の状況を。

 公立高校の生徒数の大幅な減少など逆風はありますが、制服MC校は約100校を獲得しました。一方、店頭は新型コロナの影響で苦戦し、買い控えや、洗い替えの購入の減少が目立ちます。

 地域ごとに見ると、大都市圏の東京・大阪・名古屋は増収で、福岡も博多や北九州の中学校でジェンダーレス制服の採用が寄与して堅調に推移しています。その他地域は生徒減の影響で減収となっています。

 少子化の加速で公立高校などの入学者数が大幅に減ることも予想されるため、販売の余地がある私学でのMC獲得に向けて営業を強化するなど対応を検討します。大都市圏での販促も強め、関東エリアで目標とする売上高100億円の達成に向けて努力します。

  ――20年6月期の進捗(しんちょく)をお願いします。

 19年7月~20年3月までの売上高は微増となりましたが、価格面の競争が加速し利益は減少しています。今後は4~6月の状況次第ですが、グループ35社連結で395億円前後(前期売上高382億円=トンボグループと瀧本単体の単純合算)を見込んでいます。

 スクールの売り上げは横ばいで推移しています。堅調にMCを獲得した一方、全体的な生徒減、特に公立高校の入学者数の減少が響きました。

 スポーツも微増で、マーチングバンドなどクラブ関係を合わせて300校のMCが貢献しました。新規は大半が昇華転写プリントです。自社ブランド「ビクトリー」の新素材体育着「ピストレ」も堅調に採用を獲得しています。

 ヘルスケアはわずかに増収で推移しています。「ヨネックス」ブランドの販売が好調で、入院患者向けのコンフォートウエアも増加しています。一方、ニットの病衣は伸び悩み、介護施設などの職員向けの従来のケアウエアも減少しました。

  ――新たな商品の販促や企画は。

 2月にイタリア・ミラノの服飾学校「イスティテュート・セコリ」と産学連携の契約を結びました。同国のモノ作りによる「機能性+デザイン」、着やすさといった価値を商品戦略に落とし込み、差別化を図ります。

 素材面ではニットに着目していて、ボトムにも使えるニット素材を開発します。同校のパターンも活用していきます。

  ――LGBT(性的少数者)への対応を。

 全国的に、対応した商品の採用が増えています。福岡県のように、中学校の詰め襟服・セーラー服からブレザー・スーツに変更する傾向が見られ、今後更に増えると思います。スカート・パンツの選択制の導入も目立ち、コーディネートの関係で上衣をマイナーチェンジするケースも見られています。

  ――昨年5月に瀧本を子会社化しました。

 19年7月~20年3月の売り上げは微減で、既存の採用校も減らしましたが、生徒減の中では健闘しました。営業エリアの細分化など組織変更で販売を強化し、グループ傘下の小売店の勉強会なども検討します。

  ――工場などの新たな設備更新は。

 茨城県笠間市で21年7月に竣工予定の物流センターは、今年5月ごろの着工を目指しています。スポーツで支持される昇華転写プリントは、採用が堅調なことから次年度に専用のCAM(自動裁断機)とプリンターの増設が必要になりそうです。

  ――中期3カ年計画「アクション400」の初年度の出足は。

 22年6月期に計画する売上高400億円は、射程内にあります。コストダウンと価格改定、人手不足などによる生産キャパシティー減少への対応、海外を含め新しいマーケットの開拓など課題に対処していきます。不透明な環境の中、従来と同じことばかりでは衰退するのみです。攻めの姿勢を貫いていきます。

〈10年前の私にひと言/諦めずよく頑張った〉

 常務から専務に昇格したのが10年前の2010年9月で、「自分に一言」声をかけるなら「諦めずよく頑張った」と近藤さん。営業一筋でさまざまな壁が立ちはだかる中「心が折れそうになったこともあった」が、株主総会で次期社長就任を前提に専務に就任した。長年、吉田松陰が弟子の山田顕義に贈った詩から「“志は高く腰は低く”」をモットーに仕事にまい進してきたが、続けてきた努力が報われた瞬間だった。

〈略歴〉

 こんどう・ともゆき 1980年テイコク(現トンボ)入社。99年営業統括本部販売統括部長、2001年取締役営業統括第一営業本部長、03年常務、10年専務。12年9月社長。