特集 オフィス&サービスウエア(3)/競争力強化へ次の一手/不透明市場に備える/商社編

2019年07月01日 (月曜日)

 2019年は先進国の経済が勢いを欠き、国際通貨基金(IMF)が世界経済の成長率見通しを下方修正するなど、不透明さは晴れない。ユニフォームの生産、供給を担う商社は、品質と納期を維持しながら、競争力強化のため次の一手を探る。グローバル化する人やモノの動きを見据え、新たな価値を追求する取り組みを紹介する。

〈価格以外の価値を追求/サプライチェーンの透明性確保/日鉄物産〉

 日鉄物産のユニフォームのODM/OEM事業は、オフィス、サービス、ワーキングの各分野とも堅調に動く。繊維事業本部機能衣料部の岸本孝男担当部長は「東京五輪・パラリンピックの後にも2025年の大阪での万博など明るい要素が続く。ユニフォーム業界には追い風では」と期待する。

 日鉄物産は18年11月に、環境への負荷を最小限に抑える、サプライチェーンの構築と、労働環境の改善を目指す、米国の団体「Sustainable Apparel Coalition(SAC)」に加盟した。

 SACは、アパレルや靴製品を中心に、小売りや縫製工場、素材メーカー、政府機関など約240の企業や団体でつくる。日鉄物産が開いた19秋冬総合展では、素材や企画、工場、ロジスティックス、リサイクルの五つのグループごとに展示した。

 SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む企業が増え、従業員が着るユニフォームは、環境に配慮した生地に加え、ウエアを生産する縫製工場の安全性や労働環境の透明性も求められるようになってきている。岸本担当部長は「素材調達や縫製、物流などの透明性を確保し、価格だけではない価値を提案していきたい」と強調する。

〈“不透明”にバランスで臨む/取引先との信頼関係強化/丸紅〉

 丸紅のユニフォーム事業は2019年6月まで計画通り堅調を維持する。2月~4月の繁忙期の生産・供給も安定していた。「市場全体で見るとワークウエアは電動ファン付き作業服の好調が際立つ。一方でオフィス・サービスの定番商品はやや鈍く夏物の出荷の動向を懸念している」(機能繊維部)と言う。

 海外では、日米貿易摩擦の影響で、ASEANでの米国向け生産がさらに増え、現地の工場がタイトになる予測もあるが、同社の事業には現時点では影響はほぼない。

 消費、為替、コスト、カントリーリスクなど、国内外でさまざまな課題に直面しながらユニフォーム事業を進めてきた。「ユニフォームの需要は比較的安定しているが、コストに物流の状況が厳しくなっていく中で、価格、品質、納期への要求は依然として高い」状況が続く。OEMを主力とする商社として「バランスを取りながら生産・供給体制を維持し、取り引き先との信頼関係をより深めていく」ことを重視する。

 海外の生産拠点はベトナムだが、さらにインドネシアやバングラデシュのポテンシャルにも注目する。「人件費や原材料費だけでなく、技術者の派遣なども行って日本の企画力と品質に応えられる工場を探している」と言う。

 「市況は不透明といわれ、確かに1年、2年先のことも読みにくい。そんな時こそ品質の維持やコスト削減など、商社がソリューションを提案できる部分も増えていく」と話す。「取引先との連携をさらに深めるとともに、エンドユーザーまで“安心感”を訴求していく」と不透明な市場の今後に備える。

〈環境配慮の仕組み提案/ファッションテックに投資も/豊島〉

 豊島は、全社挙げて環境に配慮した素材と、リサイクルの仕組みを提案する。20春夏のオフィス、サービスウエアの素材展でも、オーガニックコットンで社会貢献とビジネスを両立するプロジェクト「オーガビッツ」や、再生ポリエステル事業で業務提携する日本環境設計の「ブリング」などを紹介した。

 オフィスウエアは、前シーズンに続き、ニットや大柄の生地を打ち出した。サービスウエア分野での環境配慮素材として、野菜や果物の廃棄部分を特別な技術で染料にした「フードテキスタイル」を提案した。

 同社は、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を活用し、ファッションテック企業への投資も積極的に進める。スマートアパレルを開発する、東京大学発のベンチャー、Xenomaに出資し、ユニフォーム分野でも運送や建設、介護現場などでの活用を模索する。既に着用試験もスタートし、将来の事業の柱に位置付ける。

 生産面では、2018年4月、ベトナムのレディースアウター工場を買収し、オフィスウエアの自社工場「トヨシマ・ロンアン・ガーメント」を設立した。「工場の稼働から1年がたち、自分たちが考えていることができるようになってきている」(東京二部)。自社工場を持つことで、オフィスウエアに求められる高い品質、多品種小ロットのユニフォームの生産につなげている。