特集 オフィス&サービスウエア(5)/快適、エコ、審美性/多様なニーズとらえる素材力/素材編

2019年07月01日 (月曜日)

 ユニフォームの要となる耐久性や機能性は、素材が担う。ビジネスユニフォームにはイージーケア性やデザインを引き立てる風合いも重要なポイントだ。SDGs(持続可能な成長)がキートレンドとなった今、生産から供給、適切な廃棄やリサイクルなど、環境への配慮が改めて注目されている。

〈ワークウエア用の織物開発/ストレッチと低価格実現/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、ワークウエア向けの織物「ラクラクワーク」を開発した。ストレッチと強度の高さが特徴で、ワークウエアに合うように価格も抑えた。2019年末に発売し、初年度は15万㍍の販売を目指す。

 ワークウエアは、細身のシルエットやストレッチ性の高さがトレンドになっている。ワークウエアショップなどで販売されている商品の一部には、伸縮性を高めるためにポリウレタンを使うものもあるが、洗濯を繰り返すと劣化しやすい面がある。

 同社は、ストレッチ性の高いポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」を展開するが、価格面などからワークウエアでの使用は難しかった。このため新たに、ユニフォームに合う糸を開発した。捲縮(けんしゅく)性のある仮撚糸を高速で作ることで、価格を抑えた。特殊捲縮糸を使うことでさまざまなワークシーンに対応するストレッチ性を持ち、洗濯耐久性にも優れる。

 緯糸にはバイオ原料を使ったポリエステル「プラントペット」を使うこともでき、環境に配慮したユニフォームにも対応する。このほか、高視認性安全服向けの素材「テクシャス」は、日本保安品協会が定める一般向けの規格に合うカラーを新たに加えた。バリエーションが豊富で、歩行者や自転車に乗る人のベストなどに向く。

 帝人フロンティアの19年3月期のユニフォーム事業の売上高は西日本のワークウエア需要が全体を押し上げ、前年同期を上回った。20年3月期は、19年比で10~15%の増収を見込む。繊維素材本部ユニフォーム部の門脇秀樹部長は「海外からのワークウエア需要も増えており、営業を強化する」と話す。

〈機能や風合い「見える化」/データ活用し分かりやすく/東レ〉

 東レは、糸や生地が持つ機能や、風合いを顧客に分かりやすく伝える取り組みに力を入れる。昨秋開いたユニフォーム総合展では、防シワ、吸汗速乾、遮熱、ストレッチなどの機能を実物の展示や映像で紹介した。

 例えば、オフィスウエア向けの重点素材「マニフィーレ」は、シワになりにくい素材の特徴が分かるように、実際に3日間着用した生地を比較展示した。マニフィーレは、高級梳毛の上質感と発色の良さでスーツとして定評がある。消臭効果がある「ムッシュオン」の引き合いも多い。

 サービスウエアでは、工業洗濯に対応する防汚加工素材「テクノクリーン」を提案する。

 ユニフォーム総合展では、滋賀県大津市の素材開発拠点「テクノラマGⅢ」で測定したデータも紹介した。2018年に開設したテクノラマGⅢは、従来の人工気象室を拡充した。猛暑の屋外から冷房が効いた部屋に入った時の急激な温度変化など、日常生活で体験することが多い環境に合わせた実験ができる。

 環境に配慮した素材では、ペットボトルなどを原料にしたリサイクルポリエステルや、サトウキビを原料の一部にした植物由来の「エコディア」なども提案する。

〈ハイブリッドエコ素材/「プラビナ」提案開始/日本毛織〉

 日本毛織はビジネスユニフォーム向け高機能素材「ミライト」に、今期から環境配慮型素材「プラビナ」を加え提案を強化している。ウールと部分バイオポリエステルを融合したプラビナは、仕立て映え、着心地、耐久性に環境面への配慮を打ち出し、国内の企業社会でも潮流となっているサステイナビリティー(持続可能性)需要に訴求する。

 前期(2018年11月期)はスクール、ビジネス用素材は官需は価格改定に伴う前倒し需要により増、民需は期待されたオリンピック需要が少なく前年比減となった。対して今期は、交通業界向けなどで更新案件が進む。「2020年を区切りに、制服を変えたいという要望があった」と言う。

 プロモート商品のミライトは、ウールの特性を生かした防シワ性が評価され、交通会社や接客サービスを行う業種で好評を得ている。

 プラビナは「プラントペット(植物由来PET)」と「バイオ技術」「羊毛(ラナ)」を合わせた名称。優れたストレッチ性とソフトな風合い。既に引き合いも増えており、今後は注力素材の新たな柱としていく考え。

〈女性の働きやすさ重視/遮熱や防汚素材の開発進む/ユニチカトレーディング〉

 女性が働く環境が多様になる中、ユニチカトレーディングは、それぞれの現場に合う、糸や生地の開発を進めている。

 例えば、オフィス向けには、クーリング性に優れた機能繊維「サラクール・エブリー」を提案する。太陽に含まれる赤外線を効果的に遮り、季節を問わず快適に着用できる。ウール混の上質さも感じることができる。

 インバウンドの増加で、好調な飲食業には、杢(もく)調、かすり調の「ファナトーン」を打ち出す。触ると麻のような感触で、和風レストランや、旅館といったサービス業に向いている。

 医療サービス向けには、3層構造のポリエステルで防透性に優れた「クールアート20」、工業洗濯をしても防汚や制電性が持続する「ナノアクア」を重点素材に据える。ナノアクアシリーズでは、泥や粉末汚れに強い「ナノアクアMD」、制電、撥水(はっすい)性に優れた「ナノアクアEG」もそろえる。

 トップスからボトムスまで幅広い用途に合う「ヴォル」は独自のノズル設計、紡糸技術を使ったポリエステル中空繊維と特殊仮撚技術を施し、深みのある色と、ストレッチ性を持たせた。

 環境配慮素材の開発も進める。昨秋開いたユニフォーム素材展では、原料をポリマーの段階にまで戻して紡糸する、ケミカルリサイクルポリエステル糸を紹介した。