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三陽商会・大江副社長インタビュー/RMBは比較論点がない/第1段階は構造改革のみ

2020年05月08日 (金曜日)

 三陽商会は26日の定時株主総会の招集通知を出した。決議事項には第6号議案として米投資家RMBキャピタルの「取締役7人選任の件」が入っている。経営側提案の新経営体制、再生プランと対立するものだ。同社労働組合は経営側提案の支持表明を行っている。新社長に就任予定の大江伸治副社長にインタビューした。大江副社長は株主提案には比較する論点がないと反対の立場をとり、再生プランに着手していると語る。構造改革と成長戦略は両立せず、まず事業構造改革で基礎収益力の回復を図るという考えを示した。

  ――RMBキャピタル(以下RMB)の株主提案「取締役7人選任」について、4月23日の取締役会で「反対」を決議しました。その理由は。

 3月に副社長として入社以来、中山雅之社長、加藤郁郎常務執行役員と再生プランの策定に関わってきました。改革を進めれば必ず再生できるという確信を持って、4月14日に経営新体制と再生プランを発表しました。大手株主にも理解をいただいております。

 RMBの株主提案(3月28日付書面)を受領しましたが、われわれは再生プランを出し、それを執行する経営体制としてこのメンバーが最適と考えます。RMB提案は役員を推挙するだけで、プランの公表もありませんでした。比較する論点がないので反対しました。

 本日(4月30日)、RMBが再生プランなどについて意見表明を行いました。内容は「再生プランは荒唐無稽」とし、7人の中でも特に小森さんにフォーカスしていました。彼らの再生計画もそう変わりませんが、中山さんが役員として残ることに反対しています。責任論もありますが、過去よりこれからどうするかが大事です。事実誤認の部分もありますから、間違った見解については正していきます。

  ――新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が延長される中で、日々厳しさが増す。一日も早く着手するスピード感が重要です。

 既に新型コロナに対するダメージコントロールを徹底して進めながら、事業構造改革に着手しています。例えば、在庫削減に向けて、徹底して仕入れを削減しています。販管費も今期(2021年2月期)20億~30億円削減し、来期は40億円の削減を進めることで、基礎収益力の回復を図ります。

  ――従来のオールドビジネスからの改革は。

 百貨店販売は選別し、直営店とEC(電子商取引)を強化します。ただ、ECが独り歩きし、リアル店舗とパイの食い合いをする状況になりかけています。あくまでリアル店舗とECが連動したオムニチャネル化を目指します。そのために、EC部隊はスタッフ部門でしたが事業本部のラインに入れました。

 「それ以上の成長戦略はないのか」とよく聞かれますが、事業構造改革と成長戦略は同時にはできません。両方を同時に進めたため、どちらも中途半端になったのが今の三陽商会の現状です。構造改革で収益バランスが整った上での成長戦略と考えます。ゴールドウインでも、まず販管費を大きく削減するなど事業構造改革で収益基盤を整えました。第2フェーズとしてどこに攻め筋があるのかと「ノースフェイス」に注力。卸からリテールに転換しました。

  ――5事業本部を1事業本部にし、一元コントロールします。

 各ブランドのクリエーションの部分と、商品の仕入れや在庫管理の問題は別です。一元管理といっても、在庫やコスト、調達オペレーションなどの分野です。特に在庫管理は強化します。ブランドの個性はもっと磨くことが大事です。こだわりのマーケットは残ります。

 ハイエンドに近いミドルアッパーがターゲットです。根幹ブランドは「フィロソフィー」を含めた「マッキントッシュ」「ポール・スチュアート」「エポカ」「クレストブリッジ」。「エヴェックス バイ クリツィア」「アマカ」も個性があり、採算もいい。「100年コート」はモノ作りのポリシー、「エコアルフ」はCSRの一環と考えます。赤字ブランドは今期中にメスを入れます。

  ――新型コロナの収束は読めませんが、商品戦略は。

 春夏商品はダメージコントロールとして処分していくしかありません。秋冬から商品を徹底的に絞り込んで、プロパー販売対応していきます。

〈RMBキャピタル/経営側提案に反論/委任状の勧誘を開始〉

 RMBキャピタルは4月30日、三陽商会の新経営体制、再生プランに対し、「非現実的で抜本的な見直しが必要」と意見表明し、26日の定時株主総会に向け委任状勧誘を開始すると発表した。

 経営側提案の再生プランについて「売り上げ計画、利益見通しは甘い」と反論。不採算事業は今年度中の見極めではなく、早急に撤退・大幅縮小するべきとした。新型コロナウイルスの影響についても、さらに厳しいシナリオが必要と言う。

 新経営体制は、小森哲郎氏(元マッキンゼー・アンド・カンパニー)を社長にし、「経営側提案の大江氏、加藤氏の取締役選任は支持する」と変更したが、引き続き中山社長の退任を求めている。

 今回、新たに「RMBの再建計画」を加えたが、内容は150店舗よりさらに踏み込んだ店舗削減、「ラブレス」「キャスト」の完全撤退か店舗の大幅減、三井物産や八木通商との業務提携など。仕入れ・在庫管理やプロパー販売比率向上などは経営側提案と大差なかった。「小森新社長のリーダーシップのもと状況分析を行い、新・再生プランを策定し、実行する」と、今後への考えを述べるにとどまった。

〈三陽商会労働組合/株主提案に「反対」表明/経営側提案を支持〉

 三陽商会労働組合は4月30日、RMBキャピタルの取締役7人選任を内容とする株主提案について「反対」を表明した。経営側提案の「大江社長・中山副社長体制」下での再生プランについては「実現できる」とし、「実行を支えていく」と明らかにした。

 同組は、「株主提案は経営計画が示されず、ビジョンすら不明確」と評価。RMBキャピタルのこれまでの経緯を踏まえると会社買収の意図があり、「従業員を含む会社のステークホルダーの利益・将来を真剣に考えて業務執行を行うか大きな疑問が残る」と、断固反対した。

 経営側提案については、4月27日に会社が組合に説明。危機的状況の中で、従業員にとって一刻も早い再生が重要という立場から、「大江社長・中山副社長体制」を支持。会社の再生プランは「従業員にも相応の負担を伴う内容」としながらも、「事業規模を縮小して赤字体質から脱却するという方向性は十分理解できる」とし、その実行を支えていくと意見表明した。