帝人/20年度前半はコロナの影響大/モビリティーや衣料品中心に

2020年05月11日 (月曜日)

 帝人は、新型コロナウイルス感染症の影響が2020年度(2021年3月期)もマテリアル領域を中心に継続するとみる。モビリティー向けの複合成形材料やアラミド繊維で需要回復に時間がかかるとするほか、繊維・製品事業でも衣料品の市況低迷を危惧する。ただ、全体として21年1~3月にはおおむね収束するとみる。

 20年度の第1四半期(4~6月)は経済活動への影響は小さくないとしているが、7月から12月にかけて徐々に正常化へ向かうとしている。そうした予想の中でも特に懸念を示すのが自動車や航空機関連。自動車については7月から回復基調に入るとした一方で、航空機は長期化する可能性があるとした。

 同時に新型コロナ禍収束後にも言及し、「帝人グループが自動車や航空機に提供している価値は軽量化。この価値については大きく変わることがなく、われわれの製品やサービスへの評価がこれまで以上に高まることもあり得る」と語った。

 繊維・製品については、外出自粛要請などによる衣料品販売の低迷が19年度の帝人フロンティアの業績に大きく響いたと強調。インフラ補強材などが好調に推移したことで、全体の営業利益は前年度を若干上回ったものの、20年度は衣料品と自動車関連の落ち込みで大幅な減益になることは否定できないとした。

〈アラミド堅調も減収減益/20年3月期〉

 帝人の2020年3月期連結決算は、売上高8537億円(前期比3・9%減)、営業利益562億円(6・3%減)、経常利益543億円(9・8%減)、純利益252億円(44%減)で減収減益だった。アラミド繊維などが堅調に推移したものの、ポリカーボネート樹脂の市況低迷などが全体の数字を押し下げた。

 マテリアル領域は売上高6338億円(5・6%減)、営業利益212億円(9・3%減)。マテリアル事業のアラミド分野はパラアラミド「トワロン」で自動車需要減少の影響を受けたが、売値・販売構成の改善が収益に貢献した。繊維・製品事業は、衣料繊維分野でスポーツ用テキスタイルの国内生産や紳士重衣料が苦戦したが、産業資材分野はインフラ補強材などが好調を維持した。

 今期の業績は、売上高7500億円、営業利益400億円、経常利益400億円、純利益230億円を予想している。

〈新型コロナ/対策支援宣言〉

 帝人は、知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援を宣言した。同感染症のまん延終結を目的とした行為に対して一切の対価や補償を求めず、保有する特許権・実用新案権・意匠権・著作権の権利行使を一定期間実施しない。発起人の一員として今回の宣言に参画した。

 新型コロナ感染症対策のための開発や製造に関して知的財産権の権利行使を行わないことで、同宣言に参加する企業が保有する知的財産権に対する侵害調査やライセンスを受けるための交渉などが不要となり、治療薬やワクチン、医療機器、感染防止製品創出のスピード化につながる。