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三陽商会、RMBキャピタル/激しい委任状争奪戦の行方は/株主総会は今月26日――

2020年05月21日 (木曜日)

 三陽商会の大江伸治副社長は本紙のインタビューに応じ、同社株式の約6%を保有する米投資ファンド・RMBキャピタルが「委任状の勧誘を開始する」と発表したことについて「RMBの対案には比較論点がない」と述べた。同氏は26日の株主総会で社長に就任する予定だが、外部人材の社長登用といったRMBの株主提案に反対する意思を表明。昨年末から続く水面下の交渉が決裂したことで、株主総会に向けた激しい委任状争奪戦が展開されている。(市川重人)

 三陽商会は今年3月、三井物産出身でゴールドウインの経営再建に関わった大江氏を副社長に迎え、4月中旬には「再生プラン」を公表。株主総会後に大江氏を社長に昇格させ、在庫削減に向けた仕入れ抑制や販管費の大幅カットを軸とした構造改革の内容を明らかにしていた。

 一方のRMBは、4期連続の赤字を回復させるには「あまりにも甘い見通し」とし、マッキンゼー出身でカネボウの社長などを務めた小森哲郎氏の社長選任やブランドのスクラップと大幅な店舗削減を要求。さらに三陽商会の中山雅之現社長の責任問題から、同氏の取締役再任に対して反対の意思を明確にした。

 RMBの株主提案では、三陽商会がライセンス展開する「マッキントッシュ・ロンドン」のブランドホルダーである八木通商との間で合弁会社を設立するなど、事業の選択で大胆な発想が見られた。三陽商会が2021年度の営業黒字化を目指す「再生プラン」を「非現実的」と評し、より踏み込んだ再建計画が必要としている。

 取材に応じたRMBキャピタルの細水政和パートナーは「弊社が筆頭株主だが、株主は機関投資家や個人株主など広く分散している。より合理的な提案が支持される可能性が高い」と自信を示した。加えて「複数の機関投資家と接触し、弊社のプランに好感触を得ている」とした。さらに株式の買い増しについては「ノーコメント」としている。

 こうした経緯を踏まえ、大江氏は「キャピタルゲイン(売買差益)を得ようとするファンドがアパレルのオペレーションはできない。ボトムラインを押さえてから攻めるべき分野を見極める」と語気を強めた。再生プランの正当性を株主に周知し、スピード感を持って再建に取り組む考えだ。

 大手アパレルとファンドの委任状争奪戦では、02年の東京スタイル(現TSIホールディングス)と村上世彰氏が率いる村上ファンドの争いが記憶に新しい。当時はステークホルダーを重視するファンドのロジックが投資家に響かず、東京スタイルの多数派工作が勝利した。

 しかし現在では、企業統治に対する考え方が変わり、ファンドに賛同する冷静な機関投資家が増えている。三陽商会に約5%を出資するシンガポールの投資ファンド、ひびき・パース・アドバイザーズも既にRMBに原則賛同する方針を明らかにしている。

 機関投資家に影響力を持つ米国の議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が中山氏の取締役再任に反対を推奨したものの、大江氏の社長選任と、付随した(三陽の)会社提案に賛成の意向を示した。三陽商会の再生プランに理解を示し、RMBが推す小森氏の社長選任には反対を推奨。これにより、委任状争奪戦の行方はさらに混沌としている。