岡山の学生服メーカー/“学校 のアフターコロナ”は/急浮上の9月入学制に困惑

2020年05月22日 (金曜日)

 新型コロナウイルスの感染拡大が学生服メーカーの夏物の納入にも響き、4月以降の受注が停滞し始めている。9月入学制の検討も浮上、導入された場合は大幅な生産や納期の調整が必要になり、困惑の色を隠せない。“学校のアフターコロナ”を前に学生服業界はかつてない局面に入り、大きな構造転換を視野に入れた対応が迫られている。(小野 亨)

 トンボ、菅公学生服、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は学校の統廃合や小中一貫校化、LGBT(性的少数者)への対応などで制服モデルチェンジ(MC)が増加したことによって、4月時点で2019年度売上高の計画達成をほぼ見込んでいた。

 ブレザーなど4月の入学式前に納品する必要がある商品などは“3密”を回避した分散式の採寸などの対応を経て円滑に納入を完了。だが、ここに来て新型コロナ禍で先行きの不透明感が増している。

 「4月半ばから潮目が変わった」と話すのは明石SUCの柴田快三常務営業本部長。20年入学商戦は直近10年で最多のMC校を獲得し、期初の計画を上回るペースの売上高を見込んでいた。しかし、新型コロナの影響で休校が相次いだことで夏服や体育着などの納入に遅れが出ており、「期初の予想より厳しくなる」。

 夏物の納入の遅れは各社に共通する。菅公学生服も「春の部活動の行事や宿泊研修が相次いで中止となり、節約行動が一段と強まっている」(問田真司常務)と実需の減退に危機感を募らせる。店頭販売では、詰め襟学生服やセーラー服などの買い控えや洗い替えの購入をしないケースも増え、販売の鈍化が避けられない状況になりつつある。

 9月入学制の検討が急浮上していることにも、各社で困惑が広がる。導入された場合は「夏服からの入学に対応する必要がある」(菅公学生服の問田常務)、「スケジュールの遅れに合わせていかに生産するかが課題」(明石SUCの柴田常務)など、供給面での大幅な調整を視野に入れる。

 中堅メーカーからも、協力工場との連携などで調整が必要との声が上がる。入学して1、2カ月で冬服の納品が始まるため、小野藤(岡山市)の小野大作社長は「入試制度やスケジュール次第では、規模の小さい協力工場で冬服を生産する時間が取れない」と話す。

 入学する児童を1カ月ずつずらして5年かけて移行する「段階的実施」案なども浮上し、年度ごとに入学者数が変動するおそれも出てきた。オゴー産業(岡山県倉敷市)の片山一昌経営企画部長は、対象児童が一斉に入学する場合、「(初年度で)半年程度工場のスペースが空くことになる」と問題点を指摘。下請け工場を中心に立ち行かなくなる企業が増えるとの見方もある。

 トンボの高本慎一執行役員営業統括本部販売本部長は「受注活動や採寸の在り方自体を再考する時期が来ているのでは」と話す。緊急事態宣言が39県で解除され、前倒しで授業を再開する動きも出てきた。新型コロナ禍が収束し切らない中、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保ちながらの営業も必要になっている。学校のアフターコロナに向けてより慎重で迅速な対応が求められつつある。