産資・不織布通信(36)/クラレ 繊維資材事業部/「ベクトラン」増設を検討
2020年05月25日 (月曜日)
クラレの繊維資材事業部は「ビニロン」や高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」、ポリエステル短繊維などを展開している。
現在、2020年(12月期)を最終年度とする中期計画に取り組んでいる。19年までは計画を多少下回る水準で業績が推移したが、20年に入り新型コロナウイルス感染症拡大の影響が出た。3月中旬から「状況は急速に悪化してきた」としている。
このため、主力の「ビニロン」で顧客フォローを改めて強化するとともに、新興国へのアプローチを徹底し、新型コロナ禍収束後に「V字回復させたい」との考えだ。
ビニロンをFRC(繊維強化セメント)用途を主力に展開しており、19年は前年並みの販売量を維持した。しかし、この数年は安価なビニロンを手掛ける中国勢との競合激化で販売量を伸ばし切れていないのが実態という。
グローバルなマーケットでは新興国を中心に今もアスベストを使用する国が存在しており、新興国でアスベスト規制が進むと世界的に数万トン規模で新規需要の発生が見込めるという。このため、東南アジアやインドへの販促を通じ新規顧客開拓に力を入れる考えだ。
ブレーキホースが主力の「ビニロンVIP」。新型コロナ禍でユーザーからの承認が遅れている。新型コロナ禍の終息後、ユーザーからの承認が取れ次第、販売増に合わせたペースで設備対応に取り組んでいく。
スーパー繊維、ベクトランは好調を続けており、年産千トンの設備がフル操業中。ロープやテンションメンバー向けの販売が拡大しており、船舶係留用のホーサーからも多くの引き合いを集めているという。21年からの中計に「増設を織り込みたい」との意欲を示している。
新規PVA繊維「クラロンK―Ⅱ」では、コンクリート補強のような高強力を生かせる用途に向けた販売が鈍化しているため、「ここをテコ入れしたい」という。
ポリエーテルイミド繊維「クラキス」では、難燃作業服や航空機用途への参入を目指してきたものの、部分的な採用にとどまっている。
しかし、事業部方針としてベクトランで培ってきた高温溶融紡糸による品種拡大を掲げており、クラキスによる商品開発、用途開拓を引き続き促進。「ジェネスタ」の繊維化にも力を入れていく。