特集 スクールユニフォーム(6)/アパレル各社編/岐路の中で企画に磨きを

2020年05月27日 (水曜日)

 学生服メーカーの今入学商戦は、市場全体の制服モデルチェンジ(MC)校数が増加したものの、公立を中心に生徒数の減少に悩まされた。新型コロナウイルスの感染拡大も影響し、来入学商戦に向けた経営のかじ取りは難しさを増している。各社は岐路の中で商品・サービスの企画に磨きをかける。

〈MCは前年並み約100校/海外連携や昇華転写増設を/トンボ〉

 トンボは今入学商戦、公立高校の生徒数減少や新型コロナの感染拡大に影響を受けたものの、MC校数については前年並みの約100校を獲得した。「バーシティメイト」が採用の大半を占めたほか、「イーストボーイ」も私学を中心に採用されるなど堅調に推移。LGBT(性的少数者)に配慮した制服の増販も寄与した。

 今後は、海外との連携も視野に採用校の拡大を目指す。2月にはイタリア・ミラノの服飾学校「イスティテュート・セコリ」と産学連携の契約を締結。同国のモノ作りによる「機能性+デザイン」、着やすさなどの価値を企画に反映させ、商品の差別化を図る。

 スポーツは、ライセンスブランド「ヨネックス」と自社ブランド「ビクトリー」で販売比率が高い昇華転写プリントの拡大に取り組む。「今後も増加傾向は続くとみられ、生産体制を整えていく必要がある」(高本慎一執行役員営業統括本部販売本部長)。CAM(自動裁断機)とプリンターの増設を視野に入れる。

 ビクトリーは、女子バレーボールチームの岡山シーガルズ(岡山市)の公式ユニフォームにも採用されるなど認知度が向上。販売が好調な新素材体育着「ピストレ」を中心に引き続き拡販に努める。

〈教育事業が学校以外にも/非認知能力の向上を支援/菅公学生服〉

 菅公学生服は今入学商戦、一部エリアの学校の統廃合などに影響を受けたものの、スクールとスポーツのMC校数で前年並みの勝率を確保した。

 スクールでは、「カンコーインフィニスタ」で昨年投入した詰め襟学生服「スマート&ブラック」の販売が堅調に推移。トリアセテート糸の深い黒色のほか、「スマートなシルエットが学生に好まれている」(問田真司常務)。インフィニスタで展開する織物に近い上質感のニットシャツも、イージーケア性などが好評で「予想を超えて増販した」。

 スポーツは、販売が本格化して2年目に入る「カンコープレミアム」の累計採用校が100校を超えた。防風性やシンプル路線で評価が高い。

 教育ソリューション事業は案件が100件を超え、前年から約20件増加。「“人作り”のニーズが高まり、学校だけでなく企業などにも広がっている」(問田常務)と言う。

 非認知能力の向上に向けた教育に評価が高く、企業のほか、団体や学童保育などと商談が進む。具体的な案件はこれからだが、「社員研修などへの応用を想定」(曽山紀浩取締役開発本部長)。企業から学校向けの案件で連携を要望する声も上がる。

 来入学商戦に向けては、新型コロナの感染拡大でネットによる商談などが営業の主体になる。地道な学校との関係作りに加え、商品企画も再考。スマート&ブラックでウール混率のバリエーションをそろえるなど企画の幅を広げる。

〈過去10年で最多のMC/コラボや防災教育が貢献/明石SUC〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は今入学商戦、過去10年で最多のMC校を獲得した。今後も新型コロナ感染拡大の影響が想定されるが、コラボブランドや防災教育「明石SUCセーフティプロジェクト」(ASP)の拡販などで、MCの獲得や店頭商品の拡販につなげる。

 今入学商戦は、公立を中心に少子化の影響を受けながらも学校への地道な提案が実り、MCの獲得につながった。アイドルグループAKB48の衣装制作などを手掛けるオサレカンパニー(東京都千代田区)とのコラボブランド「O.C.S.D.」も9校(累計24校)を獲得するなど堅調に推移。同社のネットを活用した発信なども貢献した。

 ただ、2020年5月期の見通しについては、新型コロナ禍で体操服や水着など夏物の納入に遅れが出ている。技術系学校の実習服や看護系学校の白衣も停滞が目立ち、影響が無視できない状況になってきた。

 そうした中、コラボ商品と併せてASPの取り組みで来入学商戦に向けて制服採用校の確保を図る。柴田快三常務営業本部長は「防災のプロジェクトが4年目に入り軌道に乗ってきた」と話す。教材やヘルメットなどの販売は新型コロナの影響を受けず堅調に推移。学校の防災意識の高まりによるもので、今後はニーズに対応してSDGs(持続可能な開発目標)を学習できるすごろくや、飲料水を確保できるリュックなど新商品を開発する。

〈ブラッシュアップ地道に/店頭商品の企画も強化/オゴー産業〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は今入学商戦、新型コロナの感染拡大に影響を受けたものの、生地やシルエットを刷新するブラッシュアップの提案などによって前期に近い売上高を確保した。

 学校の再開が遅れる中、半袖シャツや水着など一部夏物の納品が遅れ先行きは不透明な状況だが、来入学商戦も制服の単純な仕様変更にとどまらず「ブラッシュアップという形の提案を地道に続ける」(片山一昌経営企画部長)。

 一方で、大手と異なる切り口の販促も強化する。文具メーカー・サクラクレパス(大阪市中央区)とのコラボレーションでは、4月に小学校低学年向けの体操服やポロシャツ、ソックスなどの店頭販売を開始。提携店舗を増やしており、引き続き拡販を図る。

 同コラボレーション商品では「第2弾」の打ち出しも検討。サクラクレパスのブランドを軸にしながらカジュアル路線も視野に入れ、体操服などで学校の標準品の許容範囲に収まる商品企画を考える。

 SDGsへの対応を視野に、昨年発表の商品も拡販する。寒暖の調節でエアコンの消費を抑えることができる学生服シリーズや、丸洗いができて環境への影響が少ないデニム調学生服「ディーモ」などの価値を訴求する。

〈生徒減を受け商品企画再考/“フリーダム”で付加価値を/児島〉

 児島(岡山県倉敷市)は今入学商戦、少子化の加速による生徒数の減少が響いたものの堅調にMC校を獲得した。売り上げは前年から横ばいを見込んでいる。一方で、強みを持つ地方では生徒数の減少が目立っていることから、商品企画を再考する。

 体操服は今年、自社ブランド「コロンバイン」で“フリーダム”をテーマに新しい切り口の商品を検討。「安全・安心・愛」のベースは変えずに、「高視認性や防汚加工、LGBTへの対応などで付加価値を高める」(山本真大副社長)。引き続き、MC校数の拡大や1校当たりの販売額の向上を目指す。

 新型コロナの感染拡大の影響により一部の学校で採寸や入学式が延期となったものの、全体的には分散式などの対応が取られたことで、納入もおおむね円滑に進んだ。中国の自社工場も稼働が順調に回復し、店頭用の詰め襟学生服やセーラー服などの安定供給に努めた。

 人件費や原材料費などの高騰を受けて「取引先にコスト増加分の値上げをお願いしている」が、新型コロナで訪問が制限されているため、理解を得るには時間を要すると考えている。

〈メイキップ/サイズ情報収集に新風/ネット上で簡単に〉

 IT技術の進化によって、自動採寸が取り沙汰される昨今。学生服業界でも検討が進むが、新たにネットを活用したサイズ情報の収集に可能性が見え始めている。

 ウェブサービスの企画・開発・運営を行うメイキップ(東京都新宿区)がこのほど、サイズレコメンドサービス「サイズ収集さん」を始めた。B2B2C向けで、業務用ユニフォームやオリジナルTシャツ、学生服の作製に利用できる。

 電子商取引(EC)サイト上で体に合うサイズを確認できる独自システム「ユニサイズ」を活用。購入履歴の洋服サイズと個人の体の数値、二つのデータを基に高い精度のフィッティングを実現した。

 利用者はスマートフォンなどでチーム名、カラー、デザインなどを入力。サイズは着用者が個別に登録する。サイズ調整などの手間が格段に少なく操作もシンプルで、ネット販売などを行う企業が既に運用を始めている。

〈業務改善で黒字浮上狙う/「全員攻撃・全員守備」徹底/瀧本〉

 瀧本の2020年6月期決算は、前期比減収で赤字も残る見込みだ。期初から想定していたことながら、新型コロナ禍の休校措置によって追加発注や買い替え需要が消滅、計画以上の悪さになった。新型コロナ収束を願いつつ、来期は「全員攻撃、全員守備」(藤原竜也社長)を心掛け、特に業務改善に取り組んで黒字浮上を目指す。

 昨年9月にトンボから派遣されて就任した藤原社長は、「強い瀧本を取り戻す」という考えのもと、新規校獲得に優先的に取り組んだ。「瀧本は元々企画力やデザイン力の高い会社」だが、営業力が伴っていなかったと分析。「全員攻撃・全員守備」を標ぼうして学校訪問時の人数を増やしたほか、新規獲得数速報制度の導入などでモチベーションを喚起、営業スタッフの東西交流も促した結果、「攻めの文化が戻ってきた」との手応えを得る。

 来期は内部業務改善を重視する。計画生産によるモノ作りの平準化などを推進し、3期連続赤字を回避する。そのための組織改正も実施する。攻めの戦略としては、九州地区での拡販に改めて力を注ぐ。

〈計画生産で納期徹底図る/早期の受注活動推進/ハネクトーン早川〉

 スクールネクタイ製造を手掛けるハネクトーン早川(東京都千代田区)の2020年入学商戦は、本数ベース、売り上げ共に前年比微増となった。セーラースカーフは減少傾向だが、リボン、ネクタイなどの他商品で単価の改善が進んだ。ただ、早川智久社長は「前年分の在庫調整と若干の新規案件によるもの」として、慎重な姿勢を見せる。

 栃木県下野市内の自社工場では今春も新卒3人、中途3人の従業員を採用。5月中に2人の追加採用も予定しており、人材の補充と育成により安定した生産体制構築を図る。デザイナーなどを対象にした工場見学の機会も増やしていきたいと言う。

 来期に向けては、値上げに伴う受注時期の調整と工場運営の見直しのほか、SDGs(持続可能な開発目標)を切り口にした提案などに取り組んでいく。学生服アパレルによる教育支援事業が拡大していく中で、ネクタイアパレルとしてできることを探っていく方針。

 「営業担当には早期受注を心掛けるよう徹底していき、これを受ける生産面も納期に追われるようなことなく計画的に運営できるようにしたい」と早川社長。多品種小ロットの傾向だが集約も必要になってくる。その中でオリジナル商品をどう展開するかがキーポイントだ。出荷管理の合理化も検討している。

〈ショールームを再開/EC販売も強化図る/佐藤産業〉

 ニッケグループのユニフォームアパレル佐藤産業(東京都千代田区)は、今期の入学商戦は前年並みだったとした。東京都内の私学中高一貫校や大学付属校からの受注が下支えした。新型コロナの感染拡大による影響については、おおむねなかった。

 一方、原材料や物流コストの上昇、価格要求に加え、地方では百貨店、販売店の縮小が進む中、周辺環境の悪化は懸念材料として残る。来季は外注や内製化の効率性を再度見直し、生産コストの削減を図っていく。

 ニッケのプロモート素材「ミライズ」を採用した詰め襟学生服「エレガンスブラック」は、ウール高混率60%ながら家庭洗濯に対応するなどのメリットを打ち出す。ミライズは特許技術「インスパイラルスピン製法」による糸で織られた素材。ウール糸の内側にポリエステルをバネのように入れた糸構造で、表面はウールの美しさを保ち、かつ家庭洗濯も可能になった。ウール本来の特性も随所に生かし、商品名になっている深い黒、軽量で滑らかな着心地、程よいストレッチ性、表面はテカリや毛玉を抑え、上質感をキープする。

 この他、成長に合わせて袖出しが2段階でできる「袖丈2段階グローイング」「消臭脇パッド」「抗菌裏地」などの工夫を凝らしている。高級ラインの「エッセスコラ」、ベーシックデザインに機能性・快適性を加味した「グリーンメイト」とともに、引き続き提案を強化していく。

 2020年は創業120周年の節目の年。東京本社内に15年ぶりとなるショールームを開設した。20点以上のサンプル品を展示し、学校関係者などに案内する。新型コロナの影響が見通せない中、来季に向け電子商取引(EC)の強化も推進していく方針だ。

〈オリジナル生地を開発/日中間の学校長交流も/吉善商会〉

 吉善商会(東京都中央区)の2020年入学商戦は、新規案件として公立、私立合わせて5校の受注などがあり、売り上げは前期より若干伸びた。8社によるコンペを勝ち抜いた案件もあり、商品の競争力には自信を持つ。オリジナルの無地生地の生産に当たっては、品質に対する要望に細かく応えてくれるという尾州の工場に新たに委託。新型コロナの感染拡大への対策はできており、現在のところ大きな影響は出ていない。

 来期に向けて「利益が出にくくなってきているため、製造原価の大幅削減を図っている」と、吉村善和社長は話す。既に加工料金が高い協力工場の見直しを進めており、製品の品質を満たし、納期を順守できる協力工場を長野県内で新たに確保した。仕入れ商品についても同等の品質で比較しながら価格見直しを行っている。社内では、生産から販売まで一貫したシステムを構築しており、業務の効率化を進めている。

 吉村社長が理事長を務める日中新世紀会の活動も積極的に行っていく。今年は新型コロナの影響を見ながらになるため姉妹校交流、相互訪問は慎重に検討中だが、中国政府の招待による学校長の訪中事業については参加校を拡大したい意向。都内20校に加え、新たに神奈川県内より10校を追加予定。教育機関などの視察を通して交流を深めていく。

〈明石SUCとコラボで累計24校/デザイン力前面に打ち出す/オサレカンパニー〉

 エンターテインメント業界の衣装・装飾品製造業などを手掛けるオサレカンパニー(東京都千代田区)は、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)とともに学校制服ブランド「O.C.S.D.」(オサレカンパニースクールデザイン)を展開している。2015年秋にブランドを立ち上げ、17年4月に4校で採用されたのを皮切りに、現在までに累計24校の実績を持つ。今年の入学商戦では9校が新たに追加された。

 エンターテインメント業界での衣装制作を強みに、アイドルグループAKB48のアーティスト衣装では学校制服をモチーフにした衣装を展開していたオサレ社。そのリソースを実際の学校制服でも生かせると判断した。学校制服分野への進出は、アニメや漫画など“クールジャパン”を取り入れた取り組みで実績があった明石SUCへの提案から始まった。明石SUCも生徒募集の観点から生徒目線でのデザインを要望する学校が増え始めていたことから新たな取り組みとしてコラボレーションに賛同。オサレ社がデザイン・広報支援、明石SUCが制服製造という互いの長所を生かした役割分担でコラボレーションが成立することになった。

 今後は、まだ採用実績がない東北エリアをはじめ全国での展開を目指す。さらに来期の入学シーズンに向けて、新たなコラボレーションアイテムとして小学生向け通学カバンで「RAKURI(ラクリ)」ブランドを立ち上げる。軽さや成長への対応、耐久性、収納力を兼ね備えた商品を提案する。

〈学生向けコートに注力/中国ネット通販絶好調/このみ〉

 フリー学生服販売のこのみ(新潟県妙高市)は2020年春の入学商戦において、中学標準服が順調だったが、高校のフリー学生服は苦戦した。東京、大阪、香港の店舗「CONOMi」が新型コロナの感染拡大による影響を大きく受けたことによる。特に香港は昨年発生したデモの影響も残り、厳しい状況を強いられている。

 昨シーズンから参入した指定制服の製造と販売が好調だ。2年目となる学校からはジャージーや他商材への広がりも見せる。教材メーカーを初期営業の代理店とする営業では、今春分で受注案件が出た。「最新の機能性を持つ商品を一般的な学生服より価格を抑えて提供している点が評価された」と相浦孝行社長。昨秋、新潟県上越市内に標準服をメインとした新しいスタイルの店舗をオープンさせ、想定以上に推移しているという。

 制服生地は、素材メーカーとともにオリジナル品を開発し、国内の協力工場で生産。引き続き素材の特性を生かした機能性を向上させていく。

 店舗とネット通販の販売比率は8対2。ネット通販は徐々に増えている。秋冬に向けて、学生向けコートにも注力する。昨年はシーズン半ばで在庫がなくなるほど好評だった。コート購入の男女比率は3対7と言う。

 中国での内販強化に向けたネット通販が絶好調。「日本でのネット通販の売り上げを1年目にして抜くほどの勢いがある」と相浦社長。来期に向けては、新型コロナの影響で見通しが立たない状況ではあるが、夏くらいに収束に向かえば来春には前年並みの売り上げは確保できるのではないかとみる。