変わるファンド 対立から対話へ?/三陽商会の株主総会から

2020年05月28日 (木曜日)

 三陽商会が26日に行った株主総会は、米投資ファンド・RMBキャピタルが提案した経営陣の刷新案が否決され、会社側の経営再建案が可決された。耳目を集めた委任状争奪戦は三陽商会が勝利したものの、課題は山積している。RMBの細水政和パートナーは「今後も株主であり続ける」と話し、経営手法を注視する考えであることも分かった。

 「物言う株主」との関わりについて、村上世彰氏が率いる村上ファンドと交渉した経験のあるアパレル関係者は、交渉した2000年代前半と今では「ファンドの考え方が違う」と話す。

 当時の村上ファンドは保有株式の出口戦略に重きを置き、増配やキャピタルゲイン(売買差益)を得る戦略を推し進めていた。村上ファンドの利益追求に嫌悪感を露わにする人も多く、アパレル業界では「一刻も早く退場してくれ」と話す経営トップもいたほどだ。

 一方、取材に応じた交渉経験者は「確かに、当時はファンドに早く出て行ってもらえるかが課題であり望みでもあった」と明かした。世間のファンドに対するイメージが悪く、企業価値の向上やガバナンス改革で「ファンドは(世間に)実績をアピールする必要があった」としている。

 しかし現在では、社外取締役の選任や取締役会の評価、さらに配当や利益還元を積極的に進める企業が増加。ガバナンスの重要性は飛躍的に高まっている。物言う株主の存在が、日本の株式市場で果たした役割は大きいと見るべきだろう。

 近年はファンドや主要株主が“力任せ”に利益還元を迫る形ではなく、周囲の機関投資家と意見調整しながら“企業と対話”するスタイルが増えている。三陽商会が株主還元を手厚くするかは未定だが、RMBの細水氏も対話する考えを明らかにしている。