合繊メーカー 20年3月期連結/新型コロナ禍で減収減益/全社も繊維も苦戦

2020年05月29日 (金曜日)

 合繊メーカーの2020年3月期連結決算が出そろった。期後半に発生した新型コロナウイルス感染症拡大の影響で東洋紡を除く4社が減収営業減益にとどまった。東洋紡は昨年の火災事故に伴う受取保険金106億円の計上で純損益が黒字浮上した。ユニチカは50億円弱の特損計上で純損失を強いられた。新型コロナで先行きを見通しにくいため、東レ、帝人を除く4社が通期業績予想の公表を見送った。

 東レの繊維は本体が減収大幅営業減益、国内、海外ともが減収減益。国内では、衣料・産業用途で荷動きが低調だった中、ユニフォームや欧米スポーツ向けを伸ばした。

 炭素繊維複合材料では営業利益を80%強伸ばした。航空機向け、圧縮天然ガスタンク・風力発電翼向けが好調だったほかスポーツ向けも回復し総じて堅調に推移した。需給バランスの改善で汎用品の値戻しも進んだ。

 旭化成は住宅、ヘルスケアの増収で歴代2位の売上高を確保。マテリアルは中国や自動車市場の減速で減収大幅減益に。18年に買収した米セージ社の連結効果が通年で発生したものの、各種繊維製品、タイヤ向け合成ゴム、エンジニアリング樹脂などの苦戦でパフォーマンスプロダクツは大幅減益となった。

 帝人は減損損失、構造改善費用の計上で純利益を大きく落とした。マテリアルでは、自動車需要の減少でアラミド繊維の販売量を減らしたものの、売り値、構成差で収益を改善した。繊維・製品では、スポーツや紳士重衣料が苦戦する一方、産業資材のインフラ補強材などが好調だった。

 東洋紡は産業マテリアル、繊維・商事が苦戦。一方、フイルム・機能樹脂の大幅増益、ヘルスケアの大幅増収で微増収営業増益を達成した。産業マテリアルのエアバッグは火災事故などで苦戦。スーパー繊維「イザナス」、「ザイロン」は好調だった。繊維・商事では、中東向けトーブの販売が好転し、企業別注向けのユニフォームが堅調だった。

 ユニチカは売上総利益率を改善したものの減収、販管費増で営業減益。繊維では、スポーツやレディス、寝装、ポリエステル短繊維などが低調で営業損失を強いられた。不織布では、スパンボンド、スパンレースとも低調だった。

 12月期決算のクラレは1~3月期の業績を発表。3・3%の減収、18・2%の営業減益となったが、前年の減損損失33億円がなくなったため純利益で増益を確保した。