岐路に立つ商社繊維事業 2019年度決算から(4)/衣料分野に吹いた逆風

2020年06月08日 (月曜日)

〈繊維資材・物資が伸長/東レインターナショナル〉

 東レインターナショナルの2020年3月期(単体)は、売上高5993億円(前期比9・6%減)、営業利益124億円(11・6%減)、経常利益159億円(4・1%減)、純利益111億円(6・4%減)で減収減益だった。世界経済の減速に、新型コロナウイルスの感染拡大が重なったことで、本業のもうけを示す営業利益が2桁%減となった。

 繊維事業の売上高(衣料素材、繊維資材・物資、アパレルの合計)は2975億円で6・6%減。衣料素材とアパレルが数字を落としたが、繊維資材・物資が業績を伸ばし、全体を支えた。繊維資材・物資は9・6%増の571億円。産業資材で自動車用途が低調だったが、綿花取引が堅調に推移した。

 衣料素材は7・2%減の660億円。衣料用ファイバーが国内市況低迷のあおりを受けた。アパレルは10・7%減の1744億円。顧客の販売不振による受注減の影響を受けた。

〈インフラ関連好調/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの20年3月期売上高(帝人の繊維・製品事業グループの数字)は3063億円で3・8%減。産業資材が順調な動きを見せた一方で、衣料繊維が苦戦を強いられた。米国と中国による貿易摩擦などで世界的に景気が減速したことが響いた。

 衣料繊維を見ると、世界的な景気減速が、スポーツ衣料用生地の国内生産の足を引っ張った。19年10月の消費増税や天候不順などで、防寒衣料や紳士スーツビジネスも苦戦。産業資材は高速道路の新設・増設などによるインフラ関連資材が好調に推移した。

 20年度は独自素材を活用した製品までの一貫生産による競争力の強化に取り組む。リサイクルや植物由来原料、海洋マイクロプラスチック削減に貢献する素材の開発推進、環境・インフラ・防災・ヘルスケア関連の拡大にも力を入れる。

〈スポーツ、繊維資材は底堅く/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンス(単体)の20年3月期は、売上高1209億円(4・1%減)、営業利益16億円(14・4%減)となった。繊維、樹脂化学品の2事業本部がともに振るわず、売り上げと、利益ともに前期の実績に届かなかった。

 繊維事業(単体)は売上高563億円(5・1%減)、営業利益8億円(26・9%減)。スポーツ、繊維資材は伸長したものの、インナー、アウター、ライニングが振るわなかった。タイ、中国・上海に展開する子会社の業績は売上高58億円、営業利益2億円。中国、タイともに減収減益だった。

 20年度も繊維事業は苦戦する見通し。特に衣料系で大きな影響を受けると想定し、市場ニーズの変化を踏まえた商品開発を継続強化する。