合繊メーカー ポリ長婦人服地/ポリ長薄地に追い風吹くか/シルキー合繊前面に

2020年06月19日 (金曜日)

 21春夏に向けた婦人服地商戦が“一応”始まった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、これまでのような商談を進めることができていないものの、合繊メーカーの婦人服地担当者にはシルキー素材復活を期待する声が少なくない。合繊・婦人服地部隊の取り組みを追った。(堤 貴一)

 今年2月のプルミエール・ヴィジョンでは、21春夏に向けた婦人ファッションのトレンドがフェミニンな方向へさらに振れるとともに、シルキーなポリ長薄地織物の露出度が高まる方向に向かうとの観測が少なからず語られていた。

 しかし、新型コロナ禍で20年春夏の店頭が飛んでしまった結果、同シーズンのトレンドがどう動いたのかが分からないまま20秋冬商戦、21春夏商戦に突入。アパレル、生地商とはフェース・トゥ・フェースの商談を行えないまま「五里霧中で、モノ作りが進行している」(各社)のが最近の状況だ。

 東レによると、20春夏では、麻調「リランチェ」や紫外線遮蔽(しゃへい)「ボディシェル」などが好調だったほか、サテンやオーガンジーのような商品群の売れ行きが前の春夏比で「2~3倍に伸びた」と言う。

 21春夏に向けては、ナチュラルな風合い、麻調の表面感を求めるニーズが続く一方、新しいトレンドとしてフェミニンでシルキーな素材感が浮上するとも見通している。

 東レは21春夏から新たに開発したシルキー調のポリエステル長繊維織物「kinari(キナリ)」を発売するとともに、フェミニンな素材感を持たせた素材群を重点的に投入する。新型コロナ禍で21春夏向けの素材展開催を見送ったものの、6月中にオンラインによる素材展を計画する。

 三菱ケミカルはフェミニンなトレンドが継続しつつ、「一方でよりナチュラル、リラックスを求めるニーズが強まる」と見通している。

 このため、いずれにも対応できるような商品ラインの構築を進めており、この一環として「ソアロン」による新素材投入の準備に力を入れている。

 パウダリーなタッチ、ウオッシュドシルクのような表面感を強調した「ソアトリュフ」、よりざっくりとした表面感を持たせた麻調「アイアス」の新タイプ「グランアイアス」の販売を21春夏から立ち上げる。新型コロナ禍に伴う新しいニーズが生まれるとも見通しており、抗菌・制菌加工の開発にも取り組んでいる。

 東洋紡ユニプロダクツによると、トレンドのフェミニン化に伴い19春夏からマイクロパウダータッチが特徴の「ジーナ」「リビエラ」の売れ行きが活発化。20春夏では当初、20%前後の拡販を計画していたものの、新型コロナ禍で「結局、前年並みの販売量に落ち着いた」と言う。

 21春夏に向けては、「けっこうコンサバティブな商品群への引き合いが根強い」と見ており、ジーナのサテン、シフォン、デシンなどを引き続き売れ筋として打ち出したい考えだ。