特集 ボディー&レッグファッション(2)/女性の美しさを彩る

2020年06月19日 (金曜日)

〈トリンプ・インターナショナル・ジャパン/長く愛される商品を軸に/「恋するブラ」は20周年〉

 トリンプ・インターナショナル・ジャパンは、トリンプブランドの「天使のブラ」「恋するブラ」、直営店「アモスタイル バイ トリンプ」で販売する「夢みるブラ」など、多くの支持を集める商品を展開する。20秋冬シーズンもこれらのロングセラー商品を軸に女性の美を演出する。

 同社のブラジャーの人気の一つがフィット感だ。「一度着用したらまた着けたくなる」と自信を示す。ただ機能だけでなく、世界のトレンドをいち早く取り入れたデザインなども強み。日本の女性の好みと融合することによって多くのリピーターを獲得するに至っている。

 それらを代表するのが恋するブラ。今年20周年のロングセラーアイテムで、20秋冬は“メルシー”(仏語でありがとう)をデザインに取り入れる。同じくロングセラーの天使のブラは「天使のブラ スリムライン」と「天使のブラ 魔法のハリ感」の二つを軸に展開する。

 アモスタイル バイ トリンプは、新型コロナウイルスの感染拡大前は夢みるブラが順調な動きを見せていた。緊急事態宣言が解除されてからは「少しずつユーザーも店舗に戻ってきている」とし、「夢みるブラを中心に再活性化」を目指す。

 フィッティングの大切さを発信するキャンペーン「#メジャー・フォー・ミー たかが下着が、わたしを変える。」も継続して取り組む。

〈グンゼ/暖冬を想定した商品構成/アウターの流れにも対応〉

 グンゼは、暖冬傾向が続く中、シーズン商品を軸に据えるのではなく、年間で使用できる商品のラインアップ、カップ付きインナーを中心としたファンデーション強化に力を入れる。20秋冬シーズン向けでは、「ホットマジック」で二つの商品を打ち出し、「トゥシェ」ブランドの新商品も販売する。

 ホットマジックブランドで販売する「あったかCOTTON」は発熱機能を付与した綿100%インナー。わたを改質するのではなく、使用する糸を甘撚りとすることで吸水量を高めて発熱するという。ふんわりと柔らかい風合いで体を優しく包み込むのも特徴の一つだ。

 同ブランドでは、薄手のカップ付きインナーを新発売する。こちらは綿ではなく、アクリル・レーヨンなど。初秋から春先まで着用できる。

 トゥシェブランドから新投入する「ドレス ミー」も暖冬、アウタートレンドに対応するインナーだ。女性が下着を購入する際のポイントの一つがアウターから見えないこと。その一方で“魅せる”場合もあり、そのどちらもかなえる。

 このドレス ミーはアウターとのコーディネートを楽しむ、レースを組み合わせたデザインインナー。

 シーズンレスで活躍するレース付きコットンリブ、吸湿発熱素材を使った滑らかで暖かい薄手タイプの2グループがそろう。

〈フジボウアパレル/根強い人気の差別化定番/着膨れしない綿インナーも〉

 フジボウアパレルは、シーズンに捉われない差別化定番品の打ち出しで全体の底上げを図る。春夏向けでは「涼ブラ」が根強い人気を誇り、新型コロナウイルス感染拡大前の出荷分は順調だった。20秋冬に向けては、肌側が綿のフリーカット生地を使用した「ウォーキング ナチュラル」などの提案に重きを置く。

 ウォーキング ナチュラルは、縦・横・斜めの8方向に伸縮する生地を用いており、自然でストレスフリーな着心地を付与している。ハーフトップは食い込みが気になる背中とアンダー部分を段差レス仕様とした。パワー感のあるメッシュ生地をフロントに使い、カップ裏にパワーネットを配して胸の揺れを抑える。

 ショーツは、抜群の伸び感が心地よく、ヒップをつぶさない丸み設計になっている。

 20秋冬向けでは薄くて暖かいインナー「ヒートエディット」の綿混タイプも積極的に展開する。これまではアクリル・トリアセテート複合の生地を使用して厚みは0・37㍉だったが、綿混タイプは綿・ナイロン・レーヨン複合ながら厚さ0・5㍉を実現した。

 綿の優しい肌触りを持ちながら、従来品と同様に暖かく、着膨れしない。吸湿発熱や抗菌防臭、静電気防止機能も付与している。転写ケアラベル仕様でチクチク感を解消し、脇縫いなしで着用快適性も高めた。

〈島崎/ネットとリアルの両面で/自社ブランドに新製品〉

 婦人インナー製造卸の島崎(埼玉県秩父市)は、自社ブランド「フリープ」の販売を確実に伸ばしていく。新型コロナウイルス感染拡大の影響下にあった4、5月のネット販売が前年を40、50%上回った。20秋冬はネット販売強化と実店舗を通じたファン拡大の両面でブランドの成長を図る。新商品や新色も投入する。

 フリープは、2007年に展開を始めた婦人インナーブランドで、縫製仕様の工夫や使用する生地の厳選などによって生み出した快適な着心地が特徴だ。都心百貨店やネット販売でリピーターを獲得し、ユーザーを増やしてきた。新型コロナ禍に襲われた20年4月期も前期並みの販売を確保した。

 下支えしたのはネット販売だった。もともとネットの比率が高かったが、前期は50%を超えた。都心百貨店が臨時休業を余儀なくされ、「もともと百貨店で購入していた顧客がネットに流れてきた。新規会員も目立った」。電話やファクスでの注文もかなり伸びた。

 20秋冬に向けてもネット販売は継続強化する。会員制交流サイト(SNS)などでの発信でブランド認知を高めるとともに、「実店舗で商品に触れて、良さを実感してほしい」とするなど、オンとオフの両面で伸ばす。商品ではシンプルシリーズで3L~5Lサイズの本格販売を開始するほか、他のシリーズで新色を追加し、新鮮味を付与する。

〈アツギ/気温変動に左右されない商品/健康への取り組みも注視〉

 アツギは、レッグファッションアイテムの展開で、シーズンMDを強化して気温変動に左右されない付加価値商品の提案に力を入れる。そのほか、20秋冬はライフスタイル提案や健康への取り組み強化などを柱とし、新商品も積極的に打ち出す。環境配慮型原料の採用も進める。

 シーズンMD強化では、「アスティーグ」でプレーンタイツの主力ラインを柔らかく暖かいプレーティング規格の【暖】と【熱】に統一し、薄手の40デニールから超厚手の180デニールまでをカバーして気温変動に応じる。着圧だけだった厚手セパレートを【暖】にも追加する。

 健康を維持するために適正な体温にまで基礎体温を上げる「温活」に着目した新シリーズも発売。体を冷やしたくない女性のニーズを満たす暖かく、柔らかく、蒸れないなどの特徴を、キュプラ繊維の採用で実現した。

 ライフスタイル提案では、スポーツ庁が提唱する官民連携プロジェクト「ファン プラス ウォーク プロジェクト」に賛同し、「アツギ ザ レッグ バー」でスニーカー通勤に最適な商品を投入する。健康への取り組みでは「歩く」をテーマとし、ハイウエストボトムを打ち出す。

 環境配慮ではキュプラのほか、ナイロン原着糸、リサイクルウール、オーガニックコットンなどを活用する。

〈三笠/健康焦点の自社製品伸長/ネット販売強化に視線〉

 靴下製造卸の三笠(横浜市)は、靴下卸として創業するが、2011年に奈良工場を設立し、設備(編み機)投資も積極的に行うなど、メーカー色を強めている。OEMをメインとするが、健康に焦点を当てた「TSUBOレシピ」をはじめとする自社製品の販売も順調に伸びている。

 自社製品で人気のTSUBOレシピは、靴下にデザインされた足つぼをセルフで押す商品や足裏に滑り止めを採用したタイプなどをラインアップ。カタログ通販などで販売してきたが、販路が広がってきた。自社製品では、スポーツ靴下やヨガ用靴下といったアイテムも商品化している。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で20春夏の靴下市場自体は勢いをなくしたが、無店舗を主力販路とする同社の販売は順調だ。今後は既存の販路に加えて、ネット販売の拡大に力を入れる。ショッピングモールではなく自社サイトを充実する方針で、新ブランドの投入も検討する。

 インフラでは新たに物流の拠点を奈良県内に設ける。横浜市内に物流センターを持っているが、新拠点を作ることでリスク分散につなげる。既に土地(約3千平方メートル)は購入済みで、1300~1650平方メートルの建屋を建設する。新物流センター立ち上げ以降は、東日本と西日本の配送を振り分ける。生産面でも国内強化を加速する。

〈福助/セーターのような靴下/素朴感やはき心地が魅力〉

 福助は、手作りセーターのような暖かさがあふれる婦人靴下のシリーズ「CRAFT KNIT(クラフト ニット)」を商品化した。一般的な靴下編み機だけでなく、「ホールガーメント(WG)」横編み機やインターシャなどを使った。20秋冬から「フクスケ」ブランドで販売を開始する。

 新シリーズは、素朴なデザインや柔らかなはき心地にこだわった“はくニットウエア”のイメージ。WG横編み機で作ったソックスは一体成型のため無駄がなく、リンキングを必要としないのが特徴だ。環境への優しさに配慮しているほか、はき心地にも優れているという。

 一方のインターシャは、色糸を1本1本切り替えて編み上げる手法を取るため、正確さと根気が不可欠な手の込んだ作業が求められる。複数の色を使っても異なる色の糸が重なり合うことがなく、薄い編み地に仕上がる。多くの色数を使用できるので、精緻な柄の表現も可能。

 フクスケブランドでは、紡績工程で生まれる未利用綿(落ちわた)を活用する。未利用綿100%で紡いだ糸を使い、インターシャソックスとして打ち出す。地球に優しいエコロジー素材を使ったギフトボックスも展開する。

 女性のクローゼットをイメージした「フランティカ クローゼット」では「萌え袖グローブ」などを新投入する。

〈良品計画/店内で動く靴下編み機/自分だけの一足を作る〉

 良品計画が展開する無印良品の錦糸町パルコ店。売り場を歩くと、靴下編み機が目に飛び込んでくる。その靴下編み機は実際に稼働しており、消費者はオリジナルの1足をオーダーすることができる。サービス開始から1年以上が経過し、多くの人が自分用やプレゼント用の靴下を作った。その人気は今も続いている。

 「無印良品の靴下の良さを多くの人に知ってもらいたい」――靴下編み機の導入には同社のそのような思いが込められている。錦糸町パルコがある東京都墨田区は繊維企業が集うモノ作りの街として知られ、新サービスを導入するなら錦糸町パルコ店という流れは当然だったのかもしれない。

 「靴下工房」と名付けられたそのサービスは、消費者にパソコンで絵(デザイン)を描いてもらい、それを靴下の柄で再現するものだ。価格は紳士、婦人、子供のいずれも柄入りで600円(税込み)、無地で400円。ミニセット機も設置しており、一貫で仕上げる。納期は平均1週間だ。

 2019年3月のオープン当初から話題を集め、家族連れや女性の姿が目立った。利用者は自分が描いた絵が靴下になることに驚くという。会員制交流サイト(SNS)で取り上げられたことで注目度は一気に高まる。新型コロナウイルスでスケジュール変更を余儀なくされたが、イベント開催やサービスの充実を進める。

〈ナイガイ/イラストレーターと協業/テレワーク対応商品も〉

 ナイガイは、2020年に100周年の節目を迎えた。20秋冬は100周年記念商品のラインアップを強化しており、イラストレーターの小鈴キリカさんとのコラボレーション、アートディレクターの祖父江慎氏との協業などを進める。定着が予想されるテレワークに対応するスタイルも展開する。

 小鈴さんとコラボレートするのは「ナイガイ スタイル」。同ブランドはおしゃれで個性的なデザインが特徴の商品がそろう。同社ならではのモノ作りの技術が生かされており、婦人と紳士ともに足元からスタイリングと快適さが楽しめる。小鈴さんのイラストで男女同じデザインの靴下を打ち出す。

 祖父江氏とは、10年以上のロングセラーとなっている商品のブランドカテゴリーである「ナイガイ トラディショナル」で協業し、祖父江氏がデザインした“初めて地上で歩いた怪魚”「つちふみくん」をデザインに取り入れる。高級ソックスの「スペリオール」などで展開する。

 新型コロナウイルスの感染拡大によってもたらされた新たな働き方に応じる売り場も提案する。「テレワークや在宅勤務はある程度定着する」と予想し、レギンス・レギパンや着圧ソックス、ホームソックス(ルームソックス)などを積極訴求する。今後は同社商品だけを扱う売り場を拡充していく。

〈鈴木靴下/初のレディース肌着発売/米ぬかの保湿と美肌成分〉

 靴下製造卸の鈴木靴下(奈良県三宅町)が独自の米ぬか繊維を使ったレディースインナーを開発した。7月から同社の製品ブランド「ヌーカ」の商品としてオンラインショップで発売する。靴下メーカーの同社が肌着を開発するのは初めて。

 生地の混用率は綿45%・ナイロン35%・レーヨン20%。レーヨンには鈴木靴下がオーミケンシなどと開発した、米ぬかオイルを練り込んだ独自繊維を用い、生地にするとしっとりとした肌触りになり、肌を乾燥から守る保湿効果が得られるほか美肌成分も含まれる。

 編み地は同じ奈良のニット地製造業が作った。天竺編みを応用した特殊な編み方で肌側に米ぬか成分を含んだ糸が当たるように編まれており、縦にも横にも伸びる。ポリウレタンを使わず、生地が劣化しにくいのも特徴。

 縫製や設計で肌への刺激をできるだけ少なくした。一般的な肌着は両脇の下から裾にかけて縦に縫製が入るがこれを無くしたほか、縫合部分は縫い代が外側に出るようにし、洗濯絵表示タグも表側につけた。

 タンクトップ、長袖の2タイプあり、同じ生地のレギンスも用意した。色は生成りと黒の2色。サイズは1サイズのみだが一般的なMからLまで対応できるという。まずは米ぬか繊維シリーズを購入したことのある愛用者に提案する。価格は3千円前後となる。売れ行きを見てサイズ展開やアイテムの幅を広げる。

〈ヘヴンジャパン/補正インナー、ネットで好調/SNSや動画でPR強化〉

 レディースインナーSPAのヘヴンジャパン(大阪府河内長野市)がネット通販で補正インナーの売り上げを好調に伸ばしている。2020年3月期の売上高は前期比10%増の10億円だった。4月の売上高(出荷ベース)は前年同月比7%減だったものの、5月は50%増と反転したという。今期売上高は30%増の13億円を目指す。

 前期からツイッターでの宣伝を増やしたり、インスタグラムで自社制作のライブ番組の配信をしたり、会員制交流サイト(SNS)での情報発信を強化していたことが奏功したようだ。4月にテレビ番組で取り上げられたことも追い風になった。

 今期に入ってからはロングセラーのブラジャー「脇肉キャッチャー」シリーズ、就寝時用ブラジャー「夜寄るブラ」、服装に合わせてストラップレスでも着けられるブラジャー「みだしな美」、ノンパテッド風脇高ブラ「セルフィットブラ」が売り上げをけん引する。

 同社はネット通販サイトではできない実物の肌触りの確認や試着を可能にする対面接客型のフィッティングサロンを東京と大阪に持つ。今期は愛知と北海道でそれぞれ1店舗の開設を計画する。既存店はオフィスなど多様な業種が入るビルにあるが新店はショッピングモール内のテナントの活用も検討する。

〈砂山靴下/かかと専用消しゴム登場/「レーダー」とコラボ〉

 レッグ関連製品を企画・製造・販売する砂山靴下(東京都葛飾区)は、文房具などを展開するシード(大阪市都島区)のプラスチック消しゴム「レーダー」とのコラボレーションによるフットケアアイテムを開発した。かかと専用の“消しゴム”として全国のバラエティーショップやドラッグストア、文具店、土産物店などで展開する。

 新商品の「Radarかかと消しゴム」は、硬質ウレタンフォーム製の軽石。気になるかかとや肘をこすると角質が消しゴムのかすのようにボロボロと出てくる。滑らかにこすれるため皮膚も傷付けにくいという。シルク、アルガンオイル、ヒアルロン酸、パール、豆乳、クレイパウダー、ホタテ殻パウダーの7種の成分を配合している。

 レーダーは、1968年に誕生した、青いケースの消しゴム。砂山靴下がフットケアでのブランドライセンスを取得した。公式ツイッターアカウントでツイートしたところ、発売前にも関わらず、大きな話題を集め、販売目標は3千個だったが、1万2千個の量産体制を取った。

 同社は、多様な取り組みを行っており、20秋冬からはスウェーデン発のライフスタイルブランド「moz(モズ)」の展開に乗り出す。ルームソックスや紺ハイソックスなどのレッグウエアをラインアップして、幅広い年代の女性に向けて訴求する。

〈東洋紡STC/「爽快コット」にオーガニック版/インナーにも消臭機能〉

 東洋紡STCは21春夏向けのインナー・肌着素材で、オーガニックコットンで開発した「爽快コット―O」「デオドラン―O」を打ち出す。インナー業界でもサステイナビリティー(持続可能性)への注目度が高まっていることに対応した。

 爽快コット―Oはオーガニックコットンをミックスした綿100%の紡績糸で、吸汗速乾性能に優れているほか、清涼感が特徴。

 最近はインナー素材にも消臭機能が求められているとしており、デオドラン―OにはPHコントロール性能、消臭性能を付与した。

 既にオーガニック繊維に関するOCS認証を取得しており、今後はより取得が難しいといわれるGOTS認証の取得にも乗り出し、オーガニックコットンによる商材であることをPRしたい考えだ。

 21春夏では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、ここに来て注目を集めているという抗ウイルス素材「ヴァイアブロック」による開発に力を入れており、アウターやメンズ肌着も含めて売り込んでいく。

 アニオン性官能基を利用した高機能な抗ウイルス素材で、数年前にマスクや寝装関連、家電用フィルター向けの販売を立ち上げていた。21春夏では、ヴァイアブロック20~30%・綿70~80%の混紡糸を投入し拡販を計画する。

〈ラッセル地のヴィオレッタ/編み地でボディーライン美しく/スポーツインナーでも活躍〉

 繊維専門商社、ヤギ傘下のヴィオレッタ(大阪市城東区)は品質の高いストレッチラッセル編み地をインナーアパレルに供給する。

 体のラインを美しく見せるガードルや補整ブラジャーなどレディースインナーで多く採用されている。この編み地特有の高いキックバック力を利用しスポーツインナーのパーツとして使われるケースもある。

 衣料用の生地はコスト削減を狙って中国、東南アジア以遠へと生産地が移転して久しいが、ストレッチラッセル編み地に関しては製造に高い技術が必要なことや染色加工工程が編み工程とセットで進出する必要があるなど、海外移転のハードルが高いため、今でも10社ほどが国内に残っている。

 同社は石川県加賀市の工場に32台、大阪府岸和田市の協力工場に10台のラッセル編み機を持つ。近年、業容拡大のテーマとなっているのが新規販路の開拓だ。

 従来、ガードルに多く採用されていたが、若年層になるにつれてガードルというアイテムの認知度が薄れ、同社の売り上げが徐々に低下する一因にもなっている。

 そこで近年、アウター向けでの提案を強めている。ラッセル編み地は特殊な製造機器を使うため工程価格の柔軟性がないため、高価格帯ゾーンのジャケット、パンツなどに独特の質感をアピールする。最近では徐々に百貨店アパレルに採用されるケースも出ている。

〈レンチング/塩素フリーの「テンセル」/循環型素材の普及にも力〉

 レンチングはインナー素材として環境への影響に配慮した素材の打ち出しを強める。その一つが新たな漂白技術で作る「テンセル」モダール繊維だ。繊維の漂白に塩素を一切使わないため環境に優しい。さらに塩素漂白されたものよりも繊維が柔らかくなるという。「エコピュアテクノロジー」としてアピールする。

 この技術を使った素材かどうかを、製造工程をさかのぼって識別することも可能でサプライチェーンの透明度も高まる。衣料繊維由来のマイクロプラスチックが海洋を汚染するという指摘もあり、より環境への責任が求められる時代になることから、今後注目を集めそうだ。

 資源循環型の経済に貢献する繊維の普及にも力を入れる。「リフィブラテクノロジー」は衣料生産などから出るコットン廃棄物を高い割合でアップサイクルして、生地や衣類用の「テンセル」リヨセル繊維を作る技術だ。廃棄するものを使って新たな繊維を生産し、最終的に廃棄されても、生分解性により土に戻るという仕組みだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、テンセル「リヨセル」製品への抗ウイルス機能付加にも取り組んでいる。加工は機能テキスタイルの開発からアパレル生産も行うハップ(東京都中央区)が行う。まずはTシャツを試作してインスタグラムでフォロアーにプレゼントするなどしてマーケティングをスタートした。

〈セーレン/着るデオドラントにロングキャミ/肌触りと臭いケア両立〉

 セーレンは、高性能消臭アンダーウエアブランド「デオエスト」から、夏に人気の「デオエスト クール」シリーズの女性用「消臭キャミソール・ロング」を販売している。「ワンピースやスカートの際、ボトムスの汗や臭いが気になる」という声に応えた新商品だ。

 デオエストは2010年から販売しているブランドで、臭いに困っている人をはじめ、幅広い層に愛用されている。デオエスト クールは、接触冷感素材を使用。特に綿は繊維の空隙を減らし、表面を滑らかにすることで涼感性を向上させ快適な肌触りを実現した。消臭性能はこれまでと変わらない。

 これまでさまざまな商品を開発してきたが、今回も女性の悩みを解決に導く商品を打ち出した。ひんやり、さらさらとした肌触りと、ボトムスの汗や臭いのケアを両立させた。わきの臭い対策では大型の消臭汗取りパッドが付き、アウターとの丈調整ができるようアジャスター付きの肩ひも仕様とした。

 同社は、多様な場面で「臭いが気になる」「一瞬で臭いをなくしたい」といったニーズが高まっていることを受け、広島大学の大毛宏喜教授監修の下で高性能消臭製品の研究開発を始めた。さまざまな臭いを瞬間的に消し、かつ洗濯耐久性を持つ素材の開発に成功し、デオエストの販売をスタートした。