特集 SDGs(6)/廃プラスチック問題に対応

2020年06月25日 (木曜日)

〈アパレル業界のSDGs/“グリーン”へと向かう/サステイナブル素材使用〉

 三陽商会のスペイン発のサステイナブル(持続可能な)ファッションブランド「エコアルフ」は5月30日、国内3号店となる店舗「エコアルフ二子玉川」(売り場面積は約130平方メートル)を、玉川高島屋S・C南館1階(東京都世田谷区)にオープンした。当初は4月23日開店の予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大で延期されていた。

 新店舗は「自然と都市が共存する二子玉川らしさ」を表現するため、持続可能な資源(木・鉄・コンクリート・植物)を使用しながら、クリーンでモダンな空間を作った。

 店舗中央に並ぶ商品を置く台の側面には、回収したペットボトル、そのペレット、チップ、わた、生地を順にディスプレーし、回収から再生までのプロセスを見える化した。ハンガーを掛ける什器(じゅうき)も、建設の足場で使われた板やサステイナブル素材である竹で作った。5月30日は「ごみゼロの日」でもあり、「無駄は、無駄にするから無駄になる」というショップのメッセージを発信する。

 二子玉川はファミリー層が多く、婦人、紳士、キッズのほか、シューズ、アクセサリー、ヨガで商品構成。半期で200型を提案する。「開業延期中はブランドサイトのサステイナブルコンテンツの充実を図った。その結果、フォロワー数は倍に。ヨガウエアはサイズ感やフィット感を気にする人もいる。リアル店舗で安心して選べるようになった」と言う。

 同店は、ショッパーはなく、残反で作ったオリジナルエコバッグを販売。シューズも環境に配慮したオリジナル箱に入れて渡す。

 同社の「エヴェックス バイ クリツィア」もサステイナブルを意識するが、20秋冬では河田フェザーが手掛けるプロジェクトによって回収されたリサイクル原料の「グリーンダウン」を中わたに使用したダウンを提案。表地にも一部リサイクル素材を使用する。

 他のアパレルブランドも20秋冬にサステイナブル素材の扱いが増えている。イトキンの「ジャンニ ロ ジュディチェ」はアウターにウール中綿やエコファーを採用した。オンワード樫山もサステイナブルウールやオーガニックコットンを使った紳士服、婦人服を展開。フランドルもキュプラなど再生繊維を積極活用するほか、買い物袋もエコ素材に変更していく予定だ。

 ワールドはサステイナブル素材を使用するほか、同社グループのユーズドセレクトショップ「ラグダグ」と協業したリメークブランドなど、ブランド間でのコラボレーションを強化している。

 新型コロナ禍にあるが、欧州ではサーキュラーエコノミー(循環型経済)への動きが止まらない。欧州議会は経済復興政策においても、気候変動対策を重視する。ファッション業界は“グリーン”の方向に向かう。

〈海洋プラスチックごみ問題/解決に向けた取り組み進む/消費者の理解・協力も〉

 プラスチックは利便性が高く、現代社会に欠かせない材料の一つだ。生産量は世界で増え続け、1964年に1500万トンだったプラスチック製品は2000年代半ばに3億トンを超えた。一方で海域に流出するプラスチックは年間約800万トンといわれる。海洋に流出したプラスチックはさまざまな問題を引き起こし、世界中で対策が講じられている。

 海域に流出したプラスチック(海洋プラスチックごみ)がもたらす弊害は、まず生態系を含めた海洋環境への影響が挙げられる。サイズが5ミリ以下の微細なプラスチックごみ(マイクロプラスチック)は魚介類に蓄積し、人体にも害を及ぼす可能性が指摘されている。そのほか、観光や漁業への影響、船舶航行障害などが懸念されている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で話題に上る機会が減ってしまった感があるが、解決が求められていることに変わりはない。日本では産業の枠を超えて幅広い企業が参加する団体「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」が活動を行い、個社レベルでも多様な取り組みが見られる。

 海洋プラスチックごみ問題解決で重要視されるのが、プラスチックの削減やマテリアルリサイクル率の向上、ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装、生分解性プラスチックの開発と利用、紙・セルロース素材の開発など。これらの中でもマテリアルリサイクル率の向上がポイントの一つとされている。

 廃プラスチックのリサイクルを見ると、サーマルが60%近くを占め、マテリアルは二十数%、ケミカルは数%程度にすぎない。ただエネルギー回収(サーマル)は欧州ではリサイクルとは認められていない。そのような意味で回収を含めた、マテリアル、ケミカルリサイクルが注視されている。

 その中でも先進的な取り組みを見せているのがセブン&アイ・ホールディングスだ。グループの環境宣言「グリーン チャレンジ2050」を定め、プラスチック対策ではイトーヨーカドーなどの店頭にペットボトル回収機を設置し、回収したペットボトルを原料とした再生糸を使った機能性肌着を販売している。

 再生糸を使用したポリエステル肌着は白さを出すのが難しかったが、東レと協栄産業(栃木県小山市)との連携によって解決した。企業間連携だけでなく、「洗浄したペットボトルを持って来てくれるお客さまの協力も大きい」(セブン&アイ・ホールディングス)と話す。

 そのほかでも植物由来樹脂を原料としたスパンボンド不織布、生分解性プラスチックを用いた衣料用接着シートなどの開発が進んでいる。