特集 SDGs(8)/持続可能な開発目標に貢献するカケン

2020年06月25日 (木曜日)

〈超極細繊維捕集試験に取り組む/顧客要望でオーダー対応〉

 カケンはマイクロプラスチック問題に取り組む。洗濯で出る繊維くずの量を測定するというもの。ISO規格化に向けて日本化学繊維協会と活動している。その一方で、「マイクロファイバー捕集試験」を要望のある企業に対してオーダーメード形式での対応を始めている。

 昨年6月に大阪で開かれたG20サミットでは海洋プラスチック問題も話し合われた。首脳宣言では、新たな海洋プラスチック汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有し、海洋プラスチックごみの削減に取り組んでいく。日本政府は廃棄物管理、海洋ごみの回収などの技術推進のために途上国における能力強化を支援する「マリーン・イニシアティブ」も発表した。

 世界中で海洋プラスチックごみ問題への関心が高まる中、繊維製品から発生する繊維くずの排出抑制の対策を検討する動きもある。欧州ではEURATEX(欧州繊維産業連盟)を中心に、生地段階での繊維くず脱落評価法を検討しており、カケンも日本繊維産業連盟を通じ、日本化学繊維協会とともに評価方法の技術会議に参加している。

 一方、顧客からの相談や問い合せもあり、顧客満足度を上げるため、新しい取り組みとして個別の「マイクロファイバー捕集試験」要望への対応をスタート。「現状がどうなのかをまず知らないと、あらゆる問題は解決できない。顧客から洗濯後の繊維くずの測定を要望されている。中には合成繊維だけが悪いのか、天然繊維はといった指摘もある。このため、国際標準化とは別に繊維くずの測定を始めた」という。

 海洋ごみに汚染された海がプラスチックスープとも表現される。オランダのNGOは昨年、グローバル企業に繊維くずについての呼び掛けを始めている。「本来は世界で統一された方法や基準値があればわかりやすいが、それがない。試験方法でさえも数年かかりそうだ。その間、検査機関として何もしないわけにはいかない。決まった方法はないが、顧客と一緒に検証するイメージで取り組みを開始した」。そうしたデータで、糸や生地の構造を変えることで変化するかといった検証もでき、SDGsが一歩でも前進することになる。

〈カケンテストセンター 技術部長 宇佐美 博司 氏/CSRをHPで表明/安心・安全・快適を支援〉

 カケンは3月からホームページでCSR(社会的責任)への取り組みを公開した。SDGs(持続可能な開発目標)との関連も説明している。宇佐美博司技術部長に、CSR活動について聞いた。

  ――CSR、SDGsが話題です。

 3月にCSRについての取り組みをホームページにアップしました。多くのステークホルダーに向けたものですが、掲載以前から職員に対してCSR教育も進めてきました。改めてCSRに取り組むというより、すでに取り組んできたことがたくさんあります。今の企業にとって、CSRを表明したり、活動していないと、就職規模の学生や顧客の信頼を失いかねません。

 カケンはメーカーではなく、検査機関です。このため、SDGsにしても、具体的数字は示しにくい点があるかもしれませんが、測定ということで、一部でもSDGsの目標に貢献できればという思いでやっています。SDGsもCSRの一部の活動として啓もうし、表明しています。

  ――具体的には。

 CSR推進の基軸として5つの領域を設定しました。サステイナブルな経営基盤づくり、公正な試験検査の提供、社会への貢献、環境への配慮、職員の尊重です。それぞれがSDGsの17のゴールに対してどう関連するかも明記しました。

 対照表も設けました。カケンは社会的責任に関する国際規格であるISO26000をCSR推進のグローバルな共通指標として捉えています。対象表では、このISO26000とカケンのCSR活動と、SDSとの関連性について説明しています。

 例えば、ISO26000の「組織統治」は、カケンの重点領域の「サステイナブルな経営基盤作りに」に関連し、それはSDGsの8「働きがいも経済成長も」、11「住み続けられるまちづくりを」、13「気候変動に具体的な対策を」に当たります。職員にも顧客にもわかりやすく示しました。

  ――ホームページでCSRを表明する企業が多くなりました。

 財団ですので、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資は関係ないかもしれませんが、コロナ禍の下、ニューノーマル(新常態)になるといわれています。SDGsは貧困や環境だけでなく、サーキュラーエコノミー(循環経済)も対象になる。経済活動も持続可能性を念頭に置いて動いています。カケンも持続可能性は重要です。検査機関ですから、測定を通じてモノ作りのアドバイスを行い、より良い製品ができれば、持続可能性にも貢献できると考えます。

  ――コロナ禍で、マスク関連試験依頼が殺到しました。

 VFE(ウイルス飛沫捕集効率)試験はカケンが開発した独自のものでしたので、マスクや医療用ガウンを含めて世界中から問い合わせがあります。社会の安心・安全・快適を支えていきます。