特集オフィス・サービスウエア(6)/SDGs対応さらに強まる/素材メーカー編

2020年07月02日 (木曜日)

 新型コロナウイルスの感染拡大により、プロモート商材をアピールする機会が減っている。川上となる繊維素材の停滞は、オフィス&サービスウエアにも多大な影響を及ぼすだけに、“アフターコロナ”を見据えた動きは重要だ。中でも、生産から供給、リサイクル、廃棄に至るまで、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みはコロナ禍を経て、一層強く求められる。

〈抗菌・制菌で新タイプ開発/東レ〉

 東レは2019年度、高耐久防汚加工「テクノクリーン」、高耐久防汚・抗菌加工「同DE」、梳毛調・ストレッチ「マニフィーレ」、ストレッチ「ライトフィックス」、吸汗速乾・防透け「スプリンジー」などの販売が好調で、年度終盤で新型コロナウイルス感染拡大の影響に見舞われたものの、「前年並みの業績を確保できた」と言う。

 20年度については、新型コロナ禍の影響で「先を見通しにくくなった」としており、引き続きテクノクリーンやスプリンジーなど戦略素材群の打ち出しを強める。

 新型コロナ禍に伴い、ここに来て引き合いを集めているという抗菌加工、制菌加工の新タイプ開発に力を入れており、早ければ「20秋冬から販売をスタートさせたい」考えだ。

 新型コロナ禍でユニフォームを洗濯する頻度が高まるとも見通しており、洗濯耐久性をアップさせた新素材、より高温での洗濯にも耐える新素材の開発にも意欲を示している。

 サステイナビリティー(持続可能性)への関心が高まるに伴い、19年度はペットボトル再生ポリエステル「エコユース」、部分バイオポリエステル「エコディア」の販売を伸ばせたという。

 20年度は、ペットボトルのトレーサビリティー(追跡可能性)にまでこだわって開発した「&+(アンドプラス)」を20秋冬から本格販売。旺盛な引き合いを背景に拡販への手応えを強めている。

〈素材を高めて存在感/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、オフィス、サービスウエア市場にPTT(ポリトリメチレン・テレフタレート)繊維「ソロテックス」をはじめとする機能素材を積極投入する。新型コロナウイルス感染拡大の流行で市場には不透明感が漂っているが、素材力でシェアアップを図っていく。

 オフィスやサービスウエア向け素材の販売は、新型コロナの感染拡大の影響を正面から受けている。例えばオフィスユニフォーム用素材は、テレワークや在宅勤務が定着すれば需要が大きく縮小する可能性もある。そうした中、素材の開発・提案に継続的に力を入れて存在感を高める。

 軸になるのは機能性。ストレッチ性に優れ、快適な着用感を生むソロテックスがオフィスユニフォーム分野を中心に販売を伸ばしているほか、梳毛調ストレッチ生地「トリクシオン」も差別化定番として安定した人気を誇っている。

 トリクシオンは他素材との組み合わせでバリエーションを拡充させるほか、タイの織物・染色加工会社タイナムシリインターテックスでの生産を増やして顧客のコスト抑制要求にも応じる。トリクシオンに限らず、海外拠点での生産は強化するが、同時に北陸や新潟などの国内産地も守る。

 抗ウイルス素材の開発も進めている。多様なタイプを用意し、早い段階で販売を始める。

〈グループ会社との連携強化/日本毛織〉

 2020年11月期の上半期(19年12月~20年5月)は、当初より東京五輪特需の反動減は想定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けた。新規やリピート案件が3~5月の外出自粛要請により動きが止まったことで、民需は減収となった。6月に入り営業活動を本格的に再開。

 羊毛の国際価格は下落傾向だが、これは世界的需要が一時的に減少したものであり今後は需要の回復や中国の買い付け動向などにより上昇することが想定される。

 ウールの特性を生かした軽量で防シワ性に優れた高機能素材「ミライト」、ストレッチ性とソフトな風合いが特徴の環境配慮型素材「プラビナ」に注力。「年内には、さらにSDGsに焦点を合わせた新商品の投入も予定している」と衣料繊維事業本部の細田直樹ビジネス販売部長。グループ会社とともに、ユニフォーム分野をトータル提案できる営業を強化する。10月には内見会も予定。

 ウールと難燃合繊を合わせた防炎複合素材「F―DEX(エフデックス)」を使った“炉前服”の需要開拓も。

〈シャツ・ブラウスにニット提案/東洋紡STC〉

 東洋紡グループでは、かつてウールを扱う東洋紡テクノウールがオフィスユニフォーム向けのテキスタイル販売を担当していた関係から東洋紡STCはワーキング分野での取り組みに重点化してきた経緯がある。

 しかし、「Zシャツ」に代表されるニットでオフィス・サービス用途の開拓に取り組んできた結果、「別注も含めて評判は上々」としており、今後も同用途に向けた商品開発、企画提案を強化し拡販を目指す。

 大手都銀の店舗集約などオフィス・サービスユニフォームを取り巻く経営環境は「2020年度もしんどい」と見通しているものの、シャツやブラウスのニット化という追い風も背景にニットの販売が引き続き堅調を維持しているため、20年度もニットのバリエーションを打ち出し新規販路の開拓に力を入れていく。

 肌側にポリエステル、外側に綿を配した「Zシャツ」、ドレスシャツ向けを主力に展開中のポリエステル100%による「Eシャツ」、ポリエステル高率混の「Uシャツ」などを製品OEMも交えた企画提案で打ち出し、オフィス分野での拡販・浸透に取り組んでいく。

 ここに来て引き合いを集めているというサステイナブル(持続可能性)では、ペットボトル再生ポリエステル「エコールクラブ」、バイオポリエステル「エコールクラブ・バイオ」、生分解性素材「ダース」の3本柱を重点的にプロモートしたい考えだ。