LIVING-BIZ vol.60(3)/寝具寝装 モノ作り

2020年07月15日 (水曜日)

〈羽毛吹き込み機を提案/サプリナ〉

 裁断機製造のサプリナ(大阪府忠岡町)は、半自動型の羽毛吹き込み機を提案している。別注にも対応し、羽毛ふとん用の需要を取り込む。

 同社は裁断機製造技術を生かした裁断関連機器の別注が主力だが、大阪府内の顧客から羽毛ふとんの吹き込みを内製化したいと発注があったことから羽毛吹き込み機を製造。羽毛吹き込み機メーカーが減り、「設備について相談するところがない」などとのユーザーの声も踏まえて商機があると判断し、販売に乗り出した。

 羽毛吹き込み機はハイパワー工場用。半自動だが、デジタル計量計器でふとんのマス目ごとに2グラム単位で充填できる。吹き込みはフットペダル式でオンオフが簡単に切り替えられる。

 羽毛投入ノズルは位置固定式で首を自在に振れ、一人で楽に作業できる。吹き込み時は、サイクロン機能で羽毛のごみを自動的に分離除去する。

 作業テーブルの下に装置を組み込んだシンプル設計で、本体寸法は幅1800ミリ×長さ1800ミリ×高さ800ミリ。顧客ニーズに合わせてカスタムメードする。

 価格は1台200万円から、納期は約3カ月。

〈寝具素材使ったマスク/大津毛織〉

 大津毛織(大阪府泉大津市)の寝装営業部が製造販売する寝具素材を活用したマスクが人気を呼んでいる。

 マスクは綿の4層立体構造。表地と裏地は、無着色の生成ガーゼを使用。もともと寝具「ピュアコットンガーゼ」の生地で、無添加で晒しを行い、肌がデリケートな乳幼児やアレルギーを持つ人へも訴求している。

 中材には脱脂綿(裏側)と、ポリプロピレンのスパンボンド不織布(表側)を使用する。寝具と同様のキルトパターンで仕上げた。

 マスク中央内側にパイピングを設けることで立体的にし、口元がマスクに当たらないように工夫した。「産地のネットワークを生かしたメード・イン・ジャパンのモノ作り」(同社)も訴求する。

 今年2月に発売し、数万枚売れている。新聞社の通販でも販売している。価格は2枚組で3300円(税込み)。洗濯耐久性が高く、繰り返し洗って使えるため、コストパフォーマンスは高い。

 夏向けには、和紙をスリットしてポリエステルと撚糸した和紙57%、ポリエステル43%のマスクも6月から販売。伸縮性のあるポリエステルを使用した「ホールガーメント」製。フィルター生地などを差し込めるポケットを設けた。2枚組で3300円(同)。

〈衛生加工シリーズ訴求/シキボウ〉

 シキボウは、新型コロナウイルスの感染防止のニーズの高まりを踏まえて、衛生加工シリーズの提案を強める。

 抗菌・抗ウイルス加工「フルテクト」は、繊維に加工した抗ウイルス剤が、繊維上に付着したウイルスのエンベロープ(ウイルスの外側にある膜状構造)に作用し、感染力を失わせる。コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を持つことが確認されており、コロナウイルスの亜種である新型コロナウイルスに対しても同様の効果があると推定されている。

 フルテクトはこれまで工業洗濯に対応した耐久性を確保できていなかったが、工業洗濯後も機能が低下しない高耐久タイプを開発。リネンサプライサービスが前提となる病院向け寝装品やユニフォームなどへの提案を加速する。一般寝装品への提案も強める。

 制菌加工「ノモスEX」なども訴求する。ノモスEXはSEK制菌加工マーク認定を取得し、工業洗濯100回後も効果を持続する。病院向けで実績のある素材だが、一般寝装向けへも本格展開する。

 抗菌防臭の「ノンスタック」、繊維上のアレル物質を減少させる抗アレル物質加工「アレルオフ」も訴求する。

〈夏用マスク販売10万枚/オーシン〉

 寝具製造販売などのオーシン(福井県越前市)の夏用マスク「ウォーターマスク」が売れている。5月15日に発売後、約6万枚を販売。受注分を含めると、10万枚に上る(6月5日時点)。

 同マスクは、指定外繊維(パルプ)60%、ポリエステル40%の保水シートを内蔵。マスクを水に浸し絞って使うと、水分が蒸発する際に周囲の熱を奪う気化熱効果でひんやりする。表面は綿やポリエステル、内側はポリエステル100%のメッシュの5層構造となっている。

 保水シートやメッシュは、寝具関連素材を活用。国内の自社工場で生産する。価格は1枚900円。

 発売当初は自社オンラインショップで販売していたが、6月上旬からホームセンターなどにも並ぶ。建築や工事、倉庫、輸送、農業など屋外で活動する業務用途からの問い合わせも多い。

 同社は今年3月、マスク不足の中で、寝具用素材を活用して社員用にガーゼマスクを生産。福井県にも1万枚寄付した。その後、一枚当たり180円で販売すると「飛ぶように売れた」(同社)。暑くて蒸れる夏向けのニーズを踏まえて、同社の寝具とメディカル部門のノウハウを生かし、ウォーターマスクを開発した。

〈使い捨てカバーを備蓄販売/田村駒〉

 田村駒は、医療機関や宿泊施設のリネンサプライ用途で新型コロナウイルスの感染リスクを軽減するため、不織布製のディスポーサブル(使い捨て)カバーセットの備蓄販売を始めた。

 感染症患者が使用したシーツやカバーなどのリネン製品は、医療機関内で消毒などを行った上で、リネン業者へ受け渡すこととなっている。しかし、新型コロナ感染症患者が多数入院し、消毒作業に大きな負荷が掛かることなどから、やむを得ない場合は外部委託できることになったが、受託業者が感染リスクを恐れて引き受けに難色を示すケースが発生している。

 同社では、その課題を踏まえて短期利用を目的とした不織布製の使い捨てカバーセットを提案する。掛けふとんカバー、シーツ、枕カバーの3点セットで、肌触りの良いスパンレース使い。一般的なポリエステル100%ではなく、レーヨン50%混にすることで吸湿・吸水性を高めた。さらに一般的なリネンシーツに比べて重量が約60%軽くなるため、廃棄・焼却処分しやすい。

 洗濯して使う織物製品と比べて同社の不織布製品は若干割高になるものの、感染リスクを軽減するメリットをアピールして浸透を図る。

〈抗ウイルス生地・製品を受注生産/東洋紡ユニプロダクツ〉

 東洋紡ユニプロダクツのライフスタイル事業部寝装グループは、新型コロナウイルスの感染で関心が高まっている抗ウイルス生地・製品の受注生産を始める。

 抗ウイルス後加工の「ナノバリアー」は、ポリエステルスパンボンド不織布「エクーレ」をベースに提案する。不織布使いは医療施設のリネンサプライ向けディスポーサブル(使い捨て)のシーツやピロケース、カバーなどへ訴求する。

 ナノバリアーは、ハイマルチフィラメントのポリエステル「シルフローラX(テン)」のスムース、防ダニ生地「アルファイン」でも展開し、ふとん“側”(中わたを入れる前の半製品)などへ提案する。

 アクリレート系繊維自体に抗ウイルス機能を付与した抗ウイルス素材「ヴァイアブロック」使いも提案する。一般寝装向け織物のふとんカバー地などを試作している。

 銀イオンを担持したアクリル繊維「アグリーザ」もアピールする。抗菌性や制菌性を超える性能がある“除菌”として打ち出しており、黄色ブドウ球菌や大腸菌、白癬菌、サルモネラ菌などの数を減らす効果が実証されている。

〈抗ウイルスやサステ重点訴求/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングは、寝装向けで抗ウイルス加工やサステイナブル繊維を重点素材に位置付ける。

 抗ウイルス加工は新型コロナウイルスの影響で「寝装向けでもニーズが出ている」とし、後加工で抗ウイルス機能を付与した商材を試作している。7、8月をめどに同商材の提案を始める。

 同社は、ケミカルリサイクルを中心とする再生ポリエステルを「エコフレンドリー」ブランドで打ち出し、今年度からの本格販売を始めている。寝装向けでも積極提案し、21春夏向けまでに採用を目指す考えを示す。

 寝装向けは、細番手糸使いの中高級品ゾーンを得意とする。細番手糸プラス抗ウイルス加工、細番手プラス再生素材も追求する。

 岡崎事業所(愛知県岡崎市)の合繊、ユニチカテキスタイルの常盤工場(岡山県総社市)の紡績、ユニチカスピニング(長崎県松浦市)のウールやポリエステル短繊維の紡績など、グループ企業を活用した国内のモノ作りも訴求する。

 2020年3月期の寝装関連は、羽毛ふとん“側”(中わたを入れる前の半製品)地が伸び悩んで苦戦した。その中で高級ゾーン向けは比較的底堅かった。

〈新規案件の拡大へ/モリリン〉

 モリリンのリビンググループの2020年4~6月期は、新型コロナウイルス感染拡大による小売りの臨時休業などで苦戦したが、巣ごもり消費で勢いを増す通販関連、営業継続店舗が多かったホームセンター向けが健闘した。抗菌性など清潔・衛生を訴求した軽寝具が好評だ。

 中国の合弁工場(南通茉莉林紡織品、青島森銘寝装用品)、モリリン・リビング・インドネシアの生産はほぼ通常に戻ったが、海外出張が困難なためオンラインでの商品確認、商談が続く。働き方を含め、新しい生活様式に合ったサプライチェーン展開、商材開発に力を入れる。

 社内連携の強化では、羽毛のリサイクルシステムで成果を上げつつある。リビンググループが生産・販売する羽毛ふとんを下取り・回収し、アパレル部門がダウンウエアなどに再製品化する。回収した羽毛ふとんを側地と羽毛に解体し、取り出した羽毛を洗浄して再製品化する。昨年来推進し、導入ブランドが徐々に増えてきた。

 この流れを拡大するとともに、寝具製造卸へは新規商材提案や羽毛ふとんのクリーニング・リフォームなどコトの発信、緒に就いた異業種とのコラボレーションなど新規案件の拡大を推進する。