2020夏季総合特集(6)/コロナショックに負けない/事例研究/わが社の戦略

2020年07月20日 (月曜日)

〈東レ/PPSBがマスクで伸び/世界の3極でフル操業に〉

 東レの不織布・人工皮革事業部門不織布事業部は、ポリプロピレンスパンボンド不織布(PPSB)の販売を伸ばしている。下支えするのが、新型コロナウイルス禍で需要が拡大したプリーツマスクだ。中国と韓国、インドネシアの3極における4~6月のPPSB設備はフル操業になった。

 新型コロナの感染拡大でマスク着用が常態化。マスクメーカーによる増産や新規参入、中国での生産増強などでマスク用PPSBの需要が伸長した。同社は紙おむつ用PPSBを主力としてきたが、技術力や品質、安全性はマスク用途でも高い評価を得る。

 高品質で安心・安全なマスク用PPSBは今後も需要が続くとして積極展開を図る。国内では滋賀事業場内の試験設備の量産化対応を進めている。マスク向けではメルトブロー不織布も供給している。

 松下達部長は「紙おむつやマスクをはじめとする幅広い用途で顧客と取り組みを深めながら東レ独自の“味付け”を施した製品を届ける」と強調し、「毎年1桁%台後半の成長を目指す」とした。

〈旭化成/キュプラ長繊維不織布に脚光/消毒用ワイパー用途で〉

 旭化成のキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」が順調な動きを見せる。衛生用品などを販売する白十字が展開している消毒アルコールタオル「ショードックスーパー」に用いられ、新型コロナウイルス禍で需要が拡大した。2020年4~6月は前年の販売数量を大きく上回る水準で推移している。

 マイクロファイバー使いによる拭き取り性能などが評価を受け、ショードックスーパーには25年以上前から使われている。ベンベルグ事業部ベンリーゼ営業部は「新型コロナ禍で近年にはない増販」と話すが、消毒用アルコール不足という問題がなければさらに販売が伸びた可能性がある。

 ベンリーゼはショードックスーパーのほか、大手の付属機器メーカーが販売しているOA機器用ウエットワイパーの基布としても使われる。パソコンなどを拭き取るためのワイパーだが、テレワークなどで使用頻度が高まり、ベンリーゼの動きも活発化した。

 消毒アルコールタオルやワイパーを使うという習慣は定着が予想され、ベンリーゼへの引き合いはこれからも続きそうだ。

〈東洋紡STC/抗ウイルス・制菌に引き合い/「ナノバリアー」「ヴァイアブロック」打ち出す〉

 新型コロナウイルスによる感染症拡大に伴い東洋紡STCには抗菌素材、制菌素材、抗ウイルス素材などへの引き合いが舞い込んでいるという。

 同社ユニフォーム部門はサステイナビリティーへの要望が強まっている最近の状況を踏まえ、ペットボトル再生ポリエステル「エコールクラブ」、バイオポリエステル「エコールクラブバイオ」、生分解性素材「ダース」の3本柱による拡販に取り組む一方、抗菌素材、制菌素材などによる商品開発、企画提案にも同時並行で力を入れている。

 抗ウイルス加工を施した「ナノバリアー」への「引き合いが非常に強い」としており、まずドレスシャツや病院・食品白衣での拡販を先行させ、メンズワーキングなどへも広げていきたい考えだ。「一時の流行ではなく、いかに定着させられるかが問われている」との認識だ。

 インナー部門は寝装や家電用フィルター用途などへの販売を先行させた抗ウイルス素材「ヴァイアブロック」の市場浸透を目指しており、レディースやメンズ肌着、アウターへの売り込みを強化している。

〈ユニチカトレ―ディング/ネット通販に参入/産資製品・生活雑貨の販売検討〉

 リアル店舗からの販売が縮小を強いられる一方、伸び続けるネット販売。繊維流通における変革に対応していくため、ユニチカトレ―ディングは4月、新しい組織として新事業開発室による取り組みを立ち上げた。

 2~3年後をにらみ、新規ビジネスを創出するための模索に着手しており、2020年度は「まず土台作りに重点化」し、次年度くらいから実際の新規ビジネスが滑り出す見通しだ。

 衣料品の店頭販売の不振に新型コロナウイルス禍が追い打ちを掛け、衣料品を取り巻く環境がさらに激変することを見据え、同社は自社のサイトを立ち上げ「ネット販売に乗り出していきたい」との意欲を示している。

 既に産資部門が一部で製品の販売を手掛けており、こことの交通整理を行いながら、産資関連の製品、新型コロナ禍で需要が急増しているマスクのような生活雑貨の販売を計画する。

 新型コロナ禍で「抗ウイルス、防護関連の商材が引き合いを集めている」ともしており、例えば子供服向けに抗ウイルス機能を持たせたテキスタイルの提案なども検討している。