特集 全国テキスタイル産地Ⅱ(5)/繊維機械/技術サービスを進化

2020年07月31日 (金曜日)

 繊維機械の販売も新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けている。先の状況が読めない中でユーザーの設備投資は様子見となり、進めていた案件が中止・延期になるケースも見られる。緊急事態宣言下の出張自粛で今春の商談は思うように進められず、上海で今秋に予定されていたITMAアジアも来年に延期されるなど新しい提案の場も限られている。このような中、繊維機械メーカーは次に向けた開発に注力するとともに、日本での技術サービスの向上などユーザーとの関係を強めるための新たな取り組みを検討している。

〈資材を中心に堅調推移/ピカノールとエディ〉

 ピカノールの日本代理店を務めるエディは、今年に入って織機販売を伸ばしている。農業資材、工業資材、産業資材など資材関連での受注が堅調で、衣料用途での販売もあった。

 足元は新型コロナ禍の影響で投資計画が様子見になり、進んでいた商談が延期になるケースも出ている。ただ、資材を中心に予定していた計画を着実に進めようとする動きもあると言う。

 今年に入って販売台数を伸ばしているのは、経済が低迷する中でも堅調に推移する資材での引き合いが増えたことに加え、他社製の老朽化した設備を更新する動きも見られた。既に本格生産をやめている織機を使う織布企業も多いが、回転数が低いことやスペア部品の価格が高くなっていることも悩みとしてある。現在の最新機種だと古い機種に比べ、積極レピアで2倍近くの生産性になる。メンテナンスや省スペース化も含め、古くなった機械を複数台廃棄して、最新機種1台に入れ替えるケースも出ているという。

 ベルギーのイーペル工場は新型コロナで3月23日から休止していたが、4月14日から段階的に再開し、現在はほぼ通常の形に戻った。日本での納期も5カ月弱となり、ほぼ工場休止前の状態に戻っている。

 ピカノールのレピア織機は1975年に「PGW」を発売したのが始まりで、今年で45周年を迎える。現在は2015年発売の「OptiMax―i」と18年発売の「GTMax―i 3・0」を旗艦機種としており、今年5月にはレピア織機の生産が累計10万台に達した。

 織機の開発においては、①スマートパフォーマンス②サステイナビリティー③データによる操作④扱いやすさ――に重点を置いている。メンテナンスのしやすさや省人化・自動化などへのニーズは引き続き高く、今後もデジタルを活用して技術を進化させていく。

〈顧客の利便性を高める/ストーブリ〉

 ストーブリはドローイング機やタイイング機など省人化、自動化に役立つ機械の提案に力を入れる。今後に向けて、さらに利便性を高めるための開発を進める。

 アゼ取り工程を省略できるなどの面で好評を得ている自動ドローイング機「サファイア」シリーズでは、顧客のニーズに柔軟に対応する開発を進めた。「サファイアS30」はこれまで仕様が決まっていたが、顧客の使用状況に合わせ、4枠、8枠、12枠仕様など4枠単位でカスタマイズできる形とした。タイイング機は「タイプロ」のバージョンアップを進めており、綿の紡績糸などにも使えるようにする予定。電子ジャカードでは、電装やコントローラーの改良により、さらに扱いやすくする開発に取り組んでいる。

 同社の商品をいつでも見ることができる場として、3月に常設ショールーム(大阪市北区西天満6の7の4)をオープンした。繊維機械事業もここを活用し、顧客との取り組みを強化する。例えば技術サービスの向上のため、機械のメンテナンスやトラブル解決などに関するセミナー開催を検討する。「部品交換などを含めて、ある程度までは自社で対応できる形にしたい」という要望に応えるもので、織布企業や機料店などに向けて、機械の構造の勉強会などを検討していく。

 延期していた「ストーブリエキスポ」を8月24~28日に同ショールームで開く。繊維機械は電子ジャカード機やタイイング機などを紹介する予定。1日の来場者数を制限するなど新型コロナウイルス感染拡大防止策を講じて開催する。

〈技術サービスを強化/イテマ〉

 イテマの日本法人であるイテマウィービングジャパンは、技術サービスの新しい取り組みを検討する。産業資材用の特殊な織機をそろえる新ブランド「イテマテック」の提案を本格化する。

 かつては自社で織機の整備を行う方が合理的とされていたが、近年はメンテナンスなどの負担を軽減して従業員を主業務に集中させたい織布業者も増えている。その声に応えるため技術者を定期的に派遣して織機を検査する保全サービスなどリモートワークも組み合わせながら新たな形の技術サービスを検討する。

 産業資材用の「イテマテック」の提案を本格化する。特殊な用途に向けた織機をそろえ、レピア織機の主力機種「R9500」とは異なる市場を狙う。新形コロナウイルス禍で本格展開が当初計画よりも後ろ倒しになっている面があるが、状況を見ながらオープンハウスの実施も検討する。

 イテマテックでは、特殊糸に対応する「ユニラップ」、高張力織物に強みを持つ「ヘラクレス」を展開する。ユニラップは扁平(へんぺい)糸をよれることなく製織できるなど特殊織物の生産に適する。レピアヘッドを切り替えて片側レピアとして使うことも可能で、欧州ではファッションテキスタイル用として導入する企業もある。

 ヘラクレスは積極と消極を切り替えることができ、農業用、コーティング生地、コンベアベルト、フィルター、ジオテキスタイル、グラスファイバー織物、メッシュ織物などさまざまな用途が可能。特に高張力織物に強みを持ち、筬(おさ)打ち力は最大4・5㌧を実現した。開口寸法を小さくすることで経糸のピークテンションを抑え、機械へ負担を軽減する。