特集ハイテク繊維/時代に合致 活性炭素繊維/環境対応素材として脚光
2001年12月19日 (水曜日)
活性炭素繊維が今、脚光を浴びている。物質の吸脱着機能をもつ活性炭素繊維はいわゆる繊維状の活性炭のことで、環境問題への意識が高まる中で、その存在がクローズアップされている。東洋紡が世界で初めて活性炭素繊維「Kフィルター」を発売して25年。活性炭素繊維の時代が到来したと言える。
現在、国内で活性炭素繊維メーカーはアドール(大阪ガスケミカルとユニチカの製造合弁会社)、クラレケミカル、東洋紡など。それぞれ、石炭ピッチ、「カイノール」(フェノール繊維)、ポリノジック繊維を原料としている。
活性炭素繊維の主力のひとつは浄水器。そのカートリッジフィルターとして使用されるが、その需要が拡大している。「塩素除去にとどまらず、カビ臭、トリハロメタン、そして鉛除去など新商品を打ち出していることもあって善戦。アンダーシンク型や業務用など市場は広がっている」(北下勝次活性炭繊維営業部長)という。
その浄水器において注目されているのが鉛除去だ。03年には鉛の水道水質基準が現行の5倍強化される予定だが、鉛製水道管が他素材製に取り替えるには多額な費用がかかる。このため、鉛除去の家庭用浄水器の研究などが進められており、活性炭素繊維メーカーでも開発を進めている。
浄水器用を主力とし、家庭用レンタル製品最大手へ浄水器製品をOEM(相手先ブランドによる生産)する大阪ガスの完全子会社、大阪ガスケミカルでは「鉛除去については活性炭素繊維だけでなく、他の材料との組み合わせによりモニター試験中。将来的には環境ホルモン除去も」(木部惠常務)視野に入れる。 クラレの完全子会社であるクラレケミカルはカートリッジフィルターでの販売が主ながら「当社は鉛除去対応で先行している。これを武器に02年から本格的な拡大を目指す」(鶴崎雅博機能商品営業部長)と引き離しにかかる。下期は浄水器用フィルターだけで売り上げ50%増を計画する。特殊な浄水器に絞り込んでいる東洋紡も「鉛除去は開発中」(三戸見健AC事業部長)と少なからず関心を示す。なぜなら鉛除去で先行すれば、一気に浄水器での巻き返しが図れるからだ。
一方、環境規制が強まる中で、製薬、食品、化学など向け溶剤回収装置の引き合いが活発化している。最大手で装置販売を行う東洋紡では「景気低迷で競争は厳しいものの、今上期でも売り上げ10%増えた。当分は伸びが見込める。」と強気の姿勢を示すとともに、電力貯蔵用二次電池の電極材の将来性に期待する。
活性炭素繊維の焼成技術をベースに微細加工技術を付与したもので「米国景気の減速などから半年ほど遅れているものの、これが動き出せば、数年間は伸びる」とみており、こうした商材の積み重ねで03年にはAC事業部売上高で100億円超えを目指す。
こうした商品開発は活性炭素繊維メーカーにとって命。ユニチカでは昨年、アセドアルデヒド、ホルムアルデヒド吸着可能な活性炭素繊維を開発したが、先ごろ光触媒による消臭加工を施した複合シートを開発し、耐久性を高めたものや多様な形態をもつ生物処理担体の本格販売も始めた。活性炭素繊維がもつ吸着性に加え、微生物が付着し易いことからその機能を使い排水、排ガスを分解、除去するものだ。
気相分野ではケミカルフィルターがITバブルの崩壊で芳しくない活性炭素繊維だが、それをカバーできる用途がいくつもある。環境問題に合致した活性炭素繊維の用途はまだまだ広がるだろう。
ただ、課題もある。「リサイクルへの対応」(大阪ガスケミカル・木部常務)。同社では今後、サーマルリサイクルも含めて重点を置く考えだ。
東洋紡/タフセル代替にめど
東洋紡の活性炭素繊維「Kフィルター」はポリノジック繊維「タフセル」を主原料としていた。しかし、同社が今年9月末で「タフセル」生産を止めたことから、その代替素材について注目が集まっていたが「代替品のめどがついた」(三戸見AC事業部長)ようだ。
約1年間は在庫で賄えるが、その後については現在も使用するフェノール繊維「カイノール」以外では、内外含めたレーヨン短繊維メーカーからの供給を受けるものとみられる。