interview/中期3カ年計画G―STEP30 1st

2020年08月05日 (水曜日)

 ユニチカグループは2020年4月から2030年近傍を見据えた長期ビジョン「G―STEP30」、22年度までの中期3カ年計画「G―STEP30 1st」をスタートさせた。新中計の実践で再び業績を成長路線へと回帰させる。どのような取り組みを考えているのか、ユニチカの竹歳寛和常務執行役員、ユニチカトレ―ディングの細田雅弘社長に中期的な事業戦略を聞いた。

〈ユニチカ/常務執行役員 機能資材事業本部長 竹歳 寛和 氏/組織再編で相乗効果狙う/ガラス繊維を5Gで伸ばす〉

■4月1日付で組織再編を実施しました。

 機能資材事業本部を新設し、その傘下にACF、ガラス繊維、ガラスビーズ、不織布、産業繊維の5事業部を置きました。ユニチカトータルでは、繊維事業本部がなくなり、高分子、機能資材の2事業本部制に集約されました。

 当社は長くプロダクトアウト型の組織で各事業を展開してきました。これを、もっと出口から各用途・領域を見られるマーケットイン型に進化させることが組織再編の目的です。それと、自動車関連や土木・建築、工業、生活など資材に共通するテーマがけっこうあります。これまではバラバラにアプローチしてきましたが、これからは連携を強化し当社の総合力発揮を目指していきます。

■4月から中期3カ年計画をスタートさせました。

 連結の業績を19年度の売上高1195億円、営業利益55億円、経常利益32億円から22年度にはそれぞれ1470億円、110億円、98億円に引き上げます。特に伸ばしたいと考えているのがガラス繊維事業における高付加価値品のゾーンです。既にスマートフォンは5G(第5世代移動通信システム)の世界に突入しています。中計では、この5Gをターゲットとする電子材料で拡販を計画しています。販売先のCCL(プリント基板)メーカーを経由しグローバルな大手スマホメーカー数社に当社は電子材料を供給しています。

■産業繊維における中期展望は。

 足元は新型コロナウイルス禍の影響でなかなかつかみにくいんですが現在、事業性のいいものとそうでないものとの仕分けを進めています。膜や支持体向けに販売するポリエステル短繊維は好調を続けており、ここには今後も力を入れていきます。一方、自動車資材では採算の厳しいアイテムを絞り込まざるを得なくなるでしょう。ポリエステル高強力糸の増設が新型コロナ禍で遅れており、20年度中に間に合わせたいところです。

■不織布事業ではタイ・タスコでスパンボンドの増設を実施しました。

 欧米の自動車業界が苦戦に転じているため、タスコの業績も当初計画より遅れ気味で推移しています。早く元の成長軌道に戻すべく、手を打っています。コットンスパンレース「コットエース」は19年度、インバウンド需要の後退、冷夏による制汗シート向けの販売減などが重なり久々の苦戦に転じました。しかし、足元の販売量は回復基調にあり、20年度は販売量を回復させます。綿はアルコールとの相性がいいため、消毒や除菌の際に「コットエース」が使われるケースが増えていきそうです。

■ACF(活性炭)事業、ガラスビーズ事業はいかがですか。

 ACFもガラスビーズも事業規模はそう大きくありません。ACFでは高機能フィルターのようなユニットによる販売を強化していきます。ガラスビーズでは道路のペイント用途で50%弱のシェアを持っており、もう少しシェアを上げていければと考えています。

■中計でどのような設備投資を考えていますか。

 ポリエステル高強力糸の増産を急ぎたいですね。それと、ガラス繊維で加工場のレイアウトを見直した上で建て替え、生産性の向上を狙います。

〈ユニチカトレ―ディング 社長 細田 雅弘 氏/中計で売上高433億円目指す/今年中にもECに参入〉

■新型コロナによる感染拡大が治まりそうもありません。

 本当に大変なことになっています。百貨店の売り上げは8~9割減。アパレルさんも苦労されていることでしょう。当社も19年度は苦戦を強いられました。ただし、夏場に向けて多少、いい話も出始めました。電動ファン付きウエアのような熱中症対策品に荷動きが戻り始めたようです。

■中期3カ年計画に着手しました。

 19年度の業績は売上高362億円、営業・経常利益1億円にとどまりました。これを3年かけて売上高433億円、営業・経常利益10億円に回復させます。まず、環境に配慮したサステイナブルな素材をどんどん拡販していきます。それと、当社が得意とする産業資材分野での取り組みを重視しています。

■再生ポリエステル「エコフレンドリー」を打ち出しました。

 当社は「エコフレンドリー」やPLA繊維「テラマック」、ひまし油を原料とするナイロン11「キャストロン」など豊富なエコ素材を構えています。詳しくは言えませんが近々、綿や麻とは異なる新しい天然繊維がエコ素材の戦列に加わります。

■産業資材における重点用途は。

 今年も九州などを豪雨が襲いましたが、これからも自然災害が頻発することでしょう。災害対策に絡む繊維資材の開発、提案に力を入れていきます。コンクリートの強化やトンネルの修復に使われるポリエステル、「ビニロン」を増やしていきます。

■中計では70億円の増収を計画しています。

 中には減っていく事業もあります。伸ばせるのは今も堅調なユニフォームと産業資材でしょうか。ほかは横ばいか微増にとどまるとみています。

■4月に新事業開発室を発足させました。

 衣料繊維事業のバックアップ的な役割を担っていくことになります。最近は店頭における衣料品の販売不振が顕著で、これに新型コロナ禍が追い打ちを掛けました。われわれも好調なEC(電子商取引)への参入を模索する中、ECサイトを立ち上げました。今後は自社素材を生かした特長のある商品ラインアップを拡充していきたいと考えています。それと、頻発する自然災害、あるいは新型コロナ禍で注目を集める感染症対策をターゲットとする取り組みにも着手しました。

■ベトナム・ホーチミンにASEAN開発センターを開設しました。

 新型コロナ禍でまだ人を送り込めていません。必要な機械設備の導入もこれからです。センターでは現地調達する糸、日本からもっていく糸を使ってさまざまな素材を開発していきます。ベトナムでは元々ユニフォームを中心に手掛けてきましたが、最近はスポーツや感染予防衣の仕事が増えてきました。産業資材も含めて当社が得意とするゾーンをターゲットとするモノ作りに重点化しようと思っています。