国内外で産業資材を伸ばす/合繊メーカー 産業資材事業/自動車・不織布に重点化

2020年08月13日 (木曜日)

 合繊メーカーが産業資材領域での取り組みに力を入れている。2020年度は新型コロナウイルス禍で一時的な伸び悩みが避けられないものの、この間行ってきた設備投資の刈り取りを急ぐとともに海外市場もにらんだアプローチで再び成長路線へ戻そうとする機運が高まっている。(堤 貴一)

 東レは6月23日付の組織改正で、新たにファイバー・産業資材部門を発足させた。エアバッグ事業で多額の設備投資を行ってきており、4月からスタートさせた中期経営課題の実践でこれらの刈り取りを促進する。傘下に収めたエアバッグ縫製会社との連携にも乗り出し、次をにらんだエアバッグ用原糸、テキスタイル、エアバッグの開発に重点化する。

 不織布・人工皮革事業部門は、紙おむつ向けのポリプロピレンスパンボンド、集塵機用フィルター向けに展開するポリエステルスパンボンド「アクスター」で拡大戦略を描いている。紙おむつでは、4月に稼働させた中国・仏山を既にフル稼働させているほか、今年度中にインドでの量産を立ち上げる。アクスターは「現中計の期間中に増産に取りかかれるよう、準備を進めている」段階。

 東洋紡は4月1日付の組織改正で、これまでの5本部を4ソリューション本部体制に再編。

 モビリティソリューション本部を「一つの目玉」に位置付けている。タイのインドラマグループとは合弁でエアバッグ用ナイロン66の新工場をインドラマの敷地内に建設することを既に決定しており、遅くとも21年の年初から試作糸の生産を立ち上げる。

 ユニチカも4月1日付で組織再編を実施。機能資材事業本部を新たに設立するとともに、その傘下にACF(活性炭)、ガラス繊維、ガラスビーズ、不織布、産業繊維の5事業部を置いた。これまでのプロダクトアウト型の組織をマーケットイン型へ転換させ、各用途にバラバラにアプローチしてきた5事業部の連携を改めて強化する。商品・顧客情報の共有、素材の乗り入れなどで「本部としての総合力発揮につなげたい」考えだ。

 クラレの繊維資材事業部は主力の「ビニロン」で顧客へのフォローをこれまで以上に強化する。東南アジアやインドといった新興国での新規需要掘り起こしを徹底し、新型コロナ禍収束以降の「業績のV字回復につなげたい」との意欲を示している。スーパー繊維・ベクトランはロープやベルト、テンションメンバーなどからの引き合いが旺盛で現在も生産設備のフル稼働が続いているという。最近は船舶係留用のロープ向けの販売が好調で、21年から着手する次期中期3カ年計画に「増設を織り込みたい」としている。