東洋紡/高強力ポリエチレンの性能向上へ/25年には専用工場も

2020年08月20日 (木曜日)

 東洋紡は、高強力ポリエチレン繊維「イザナス」の高性能化を進める。欧米市場への参入や日本での新用途開拓が狙いで、強度を高めた商品やクリープ(伸びなど)を改良したタイプを打ち出す。2025年ごろの稼働開始をめどに、高性能糸製造に特化した新工場の立ち上げも検討する。

 繊維機能材事業総括部では、イザナスのほか、高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維「ザイロン」を展開。これらのスーパー繊維も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、20年4~6月期の販売数量は前年同期比2、3割減だった。

 イザナスは日本での販売が全体の約90%であることから、輸出比率が高いツヌーガやザイロンと比べると落ち込み幅は小さかった。一方で「日本市場だけでの拡大には限界がある」とし、事業の成長に向けて欧米市場に打って出る。その中心商材になるのが高性能糸だ。

 欧米市場には4月から釣り糸向けの「SF」シリーズの展開を始めている。単糸繊度が7デシテックス、3・5デシテックス、1デシテックスの3種類を用意している。8月にはロープ向けの「SK777」シリーズと比較して強度を20%以上高めた「SK888」のサンプルワークも開始した。

 欧米の高強力ポリエチレン繊維市場では化学メーカーが高い知名度を誇り、中国製が価格競争力を持つ。参入には高性能化が不可欠だが、コスト高につながるため、一般の係留索ではなく、レースヨット向けロープなどで訴求する。「ザイロンで実績があり、既存販路を通じて浸透」を狙う。

 国内では新規分野として浮体式洋上風力発電を係留するロープに視線を注ぐ。長期間係留すると繊維が少しずつ伸び(クリープ)、それを改良する製品を開発中。釣り糸用を含め、これらを高性能糸と位置付ける。イザナスは現状年産千トンだが、高性能糸は500トン規模に増やす。専用工場の建設も視野に入れる。