繊維ニュース

特集 メンズウインター/コロナで変わった20冬物市場

2020年08月24日 (月曜日)

 20冬の紳士服市場は“守り”の側面が強い。19冬も暖冬が続き、コートなどの重衣料の在庫を抱えている。加えて、新型コロナウイルス禍で4~5月の店舗が臨時休業となり、春夏商品のプロパー販売時期を逃した。予想以上の業績悪化で、アパレル各社は秋冬物の仕入れを大幅に削減した。その新型コロナ禍の収束は見えない。暖冬対策、ネット通販、在宅勤務対応などがキーワードになっている。

〈暖冬、EC、在宅勤務〉

 「2~3週間納期が遅れており、4月店頭は代替も含めどうフェースを整えるか検討が必要」(三陽商会)「今後の納期、原料や資材調達が懸念される」(ワールド、レナウン)、「中国当局の各種規制、協力工場の人員確保がどうなるか」(TSIホールディングス)、「再稼働時期と稼働率が不明」(オンワードホールディングス)。2月中旬、中国のコロナ禍の影響が春物納品において表面化した。

 物流面でも「エア便への切り替えや、他港への振り替えを検討」(イトキン)、「航空物流の減便」(オンワードホールディングス)、「優先物資の輸送もあり、エア便の確保も難しいレベルに入った」(三陽商会)と、影響が広がる。

 2月下旬には日本政府が企業にテレワークを呼び掛けるようになり、4月には全国に緊急事態宣言を発令。百貨店などの商業施設は約2カ月間の臨時休業となった。

 5月25日に最後に残った5都道県の緊急事態宣言を解除したが、現在も衣料消費は元に戻らない。政府は4~6月期の実質GDP(国内総生産)を前期比7・8%減、年率換算27・8%減と、戦後最悪の状況にあると発表。コロナ感染は収束どころか、拡大しており、外出自粛ムードが続いている。衣料品消費が前年を上回る日はいつになるかわからない。

 このため、アパレル各社はこれがニューノーマル(新常態)になるとの覚悟を持って対応する。20秋冬の仕入れ量は4割ほど削減したとみられる。昨年の暖冬で重衣料を在庫として残しており、資金繰りも厳しいため、仕入れを減らした。

 店舗の集客数もコロナ以前には届かない。在宅勤務が定着しつつある。外出自粛で店舗販売は落ち込んだが、電子商取引(EC)は伸びていた。20冬シーズンもECを強化する動きは止まらない。オンライン接客、ライブ配信など非対面型のコミュニケーション力を拡充する。

 外出が少なくなれば、スタイリングが変わる。加えて暖冬もある。重いコートではなく、軽い中間アウター、羽織り物、画面映えのする洋品などの商品構成を増やす。ビジネスラインも、セットアップなどよりカジュアル化が進む。暖冬を前提にした冬物企画が主流になりそうだ。

〈オンワードホールディングス/新常態への対応進める〉

 新型コロナウイルス禍はアパレルの収益を落ち込ませている。オンワードホールディングスの2020年3~5月期連結決算も売上高422億円(前年同期比34・9%減)、経常損失17億円(前年同期は32億円の利益)と、減収減益だった。

 国内事業では新型コロナ感染拡大の影響で、4~5月に商業施設などが営業休止となった。このため、リアル販路の売上高が減少。その一方で、外出自粛による巣ごもり消費やネット通販消費の拡大で、直営オンラインストア「オンワード・クローゼット」を中心とした電子商取引(EC)の売上高が伸長した。

 海外事業は前年から推進するグローバル事業構造改革により赤字幅縮小と改善が見られたものの、世界的な新型コロナ禍で減収は否めなかった。

 こうした状況を踏まえて、秋冬商戦に向けて、同社はECをさらに強化する。同社の11ブランド・13ショップは8月下旬から、ファッション通販サイト「ゾゾタウン」に約1年半ぶりに再出店する予定だ。

 19年2月にゾゾタウンから退店していた。当時、ZOZOが有料会員サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」で常時10%値引きを行っていたことも退店の要因だった。

 オンワードグループの自社EC比率は現在、90%を超えているが、ECでの若年層の取り込みが課題でもあった。昨年来ZOZOと話し合いを進め、再出店を決めた。ニューノーマル(新常態)への対応ともいえる。

 経済活動の回復に向けた動きはあるものの、コロナの収束の時期は見えない。リアル店舗での集客が当分見込めなくても、新しい生活様式に合わせた提案はできる。

 オンワード樫山の「ジョセフ・アブード」の盛夏物で、「クールダディポロシャツ」が売れた。在宅勤務が普及し、吸湿速乾性など室内で快適に着用できる機能性を有し、テレワークの画面映えもするというもの。秋冬のスーツにおいても紳士ではセットアップ企画が増えている。

 量そのものは控え気味だが、販売方法、企画の中身をいかに新常態に近づけるか。20春夏に続いて、20秋冬もその延長線上を進んでいく。

〈三陽商会/暖冬前提に商品構成を〉

 三陽商会は20秋冬にジャストシーズンMDを進める。秋物投入は9月、コート展開も11月から本格化する。暖冬を前提としたニットなどの商品提案も強化する。ビジネスの多角化に合わせた企画も充実させる。

 「ザ・スコッチハウス」は秋立ち上がりを従来より1カ月半遅らせ、9月から展開する。汎用性の高い2ウエー、3ウエーのアウターやジャケット、ニット・丸編み製品の羽織りアイテムのバリエーションを増やし、暖冬の実需に対応する。

 ブランドを象徴する「ゴアテックス」には光電子ダウンを充填(じゅうてん)し、快適性と保温性を追求する。光電子ダウンはメモリー素材のモダンなロングダウンにも使用。リサイクル羽毛のグリーンダウンを採用したカラーダウンも提案する。コートフェアは11月に予定。

 暖冬や在宅スタイルによる需要増を見込み、ニットや丸編み製品を強化する。同ブランドらしいきれいなカラーリングで、タンス在庫にない商品を投入する。11月展開のフィッシャーマンボタンアップニットは、伝統的なフィッシャーマンセーターだが、軽量で、奇麗な色使いに仕上げた英国らしいニットである。

 「マッキントッシュ ロンドン」はブランドの強みの「フレックスジャージー」の拡大やオールウェザーアウターの開発により、気温に左右されないMDを構築する。フレックスジャージーはオン、オフ兼用のセットアップスタイルを楽しめる。秋冬はコーディネートの幅を広げる単品ジャケットやトップス、トラウザーなど新たなアイテムを加える。ジャストシーズンMDを意識し、特に9~10月は中軽衣料での売り上げアップを計画する。

 「ポール・スチュアート」はセットアップ中心の「スチュアーツトラベラー」で柄のバリエーションを広げる。布帛ライクなジャージー素材を使い、ビジネスの多角化に対応した汎用性の高いデザインである。ダウンの取り外しが可能な3ウエーアウターも提案する。これまで30~40代が対象だったが、「リモートワークもあり、50代にも客層を広げていく」という。

 スポーツカジュアルでは、発色性、素材感など単品の完成度を高めた。

〈ジョイックスコーポレーション/カジュアル品番に手応え〉

 ジョイックスコーポレーションは、紳士服「ランバン・オン・ブルー」20秋冬企画で、スポーティーな仕様やストリート感を企画に盛り込む。軽快なアウターを拡充し、オリエンタルをイメージした図柄をライダースジャケットに載せるなど、大胆な装飾も企画に反映させる。

 同ブランドは、約3年前からカジュアルアウターを強化し、春夏はナイロン素材のライトアウターやシャツジャケットなどを投入。秋冬はミリタリーテイストのコートやジャケットを増やし、主力のビジネススーツに次ぐブランドの顔となる商品を製作してきた。

 同社では「主力購買層の50代男性に加え、30代後半~40代といった若い消費者にもカジュアル品番は好評。紳士マーケットのカジュアル化にも対応できる」としている。

 20秋冬のテーマは「シュプリメ」(昇華)。フレンチシックをベースに、既成概念にとらわれない単品やスタイリングを提案する。1970年代調のサイケデリックな図柄や装飾、色使いで企画にアクセントを加えている。アウター、インナーともに図柄のあるアイテムを組み合わせ、パターン・オン・パターンのスタイリングも特徴になった。

 スポーティーなボアジャケットやナイロンとフェイクファー素材などをミックスしたMA―1など、タウンユースを意識した大人服を増やす。スーツ品番を大幅に減らし、好調なセットアップに企画を移行。同社では「ステイホーム期間中の需要を分析し、秋冬企画を作り込んだ」とする。

 そのほかにも、パッチワーク風に生地を切り替えたシャツアウターやフリース素材のブルゾンを投入。オーバーサイズで重ね着にも対応できる。秋は明るめのブラウンを軸に構成し、冬物最盛期に向けてアースカラーを提案する。

 20春夏にはインフルエンサーを介した会員制交流サイト(SNS)発信を行い、一般消費者への周知を進めた。初めて展示会にインフルエンサーを招待したが、効果を測定しながらブランドイメージを高める方針。カジュアル品番が好評となっているが、同時に消費者へ広める方法を模索している。

〈フレックスジャパン/ホームビズ需要に答えを〉

 フレックスジャパン(長野県千曲市)は、新しい働き方に焦点を当てたスタイリングの打ち出しを強める。20秋冬はセットアップシャツのバリエーションを増やすが、在宅勤務やテレワークの定着が進むとみて、“ホームビズ”対応の提案を強化する。

 20春夏物で合繊使いのセットアップスーツに合わせるセットアップシャツの企画を拡充し、襟付きシャツやバンドカラーシャツなどの商品を投入した。20秋冬も継続展開するが、テラコッタやキャメルなどの新色を追加した。

 20秋冬ではスポーツやアウトドアの要素を取り入れたシャツも商品化したが、コンセプトは“ハヤクキレル”“スコシラクニ”“ウゴキヤスク”の三つ。例えば、ハヤクキレルは、スナップやジッパーを使ったプルオーバータイプとした。

 今後もニューワーキングスタイル商品のラインアップは充実する方針で、自宅で仕事をする際の着用を想定したホームビズスタイルをそろえる。身生地に楊柳やガーゼを採用したTシャツなどを開発している。

〈山喜/在宅勤務にBCコード〉

 「着心地が楽な上に、相手に対しても失礼でない」ビジネススタイルを“BC(ビジネスカジュアル)コード”として提唱している山喜。20秋冬は、シャツを基軸にスーツ、ジャケット、ニットなどのコーディネートの提案を強化する方針で、在宅勤務などの定着で加速するビジネス服のカジュアル化に応じる。

 想定するビジネスシーンは、社内外のプレゼンテーションなどで着用する「オフィスドレス」、得意先訪問といった場面で着る「ビジネスカジュアル」、外部の人と会わない時の「オフィスカジュアル」の三つ。独自ブランドを中心に各シーンに対応した着こなしを打ち出す。

 「ロードソン・バイ・チョーヤは30、40代をターゲット」とし、無地調に見える柄を増やし、トレンドのモノトーンを中心にシックなアクセントシャツを展開する。遠目には無地に見え、ビジネスカジュアルのスタイリングに取り入れやすい。

 「チョーヤ・シャツ・ファクトリー」はミニマルシックをテーマに大人のBCコードを演出。「チョーヤ1886」でも多様な着こなしを提案する。

〈オギタヘムト/消費者の足を実店舗へ〉

 ドレスシャツ製造卸のオギタヘムト(香川県三豊市)は、新しい提案や提供サービスの充実を図る。新型コロナウイルス感染拡大の影響で遠ざかってしまった消費者の足を再び実店舗に向けさせたい考えで、香料を使った空間演出や酸素カプセルの扱いを始める。

 紳士ドレスシャツの展開が主力事業という立ち位置は揺らがないものの、新型コロナ禍の影響で市場トレンドや消費環境は変化し、その対応が不可欠と捉える。同社は「考動」を大きなテーマに商品や売り場、サービスの改革に取り組んでおり、これまで手掛けてこなかった領域に踏み込む。

 香料を使った空間演出は欧州などでは一般的なサービスで、企業やブランドとタイアップしてオリジナルの香りを作る。“香りのブランディング”を行っているイタリアのセントカンパニー社の日本法人であるセントカンパニー(大阪市中央区)と連携して展開する。

 酸素カプセルについては販売代理店としてリースの扱いを始める。店頭でのサービスとして活用すれば消費者の来店を促すことができるのではと話す。

〈太陽繊維/実績持つ「クールマックス」で〉

 シャツ地専門商社の太陽繊維(大阪市中央区)は、吸水速乾などに優れたポリエステル「クールマックス」を春夏の主力商品に位置付けている。新型コロナウイルス禍の中でも着実な需要があるとみて、21春夏に向けでも提案を強化する。環境に配慮したタイプも打ち出す。

 同社は、21春夏向けについて「商談は進んでいるが、新型コロナの影響で先行きが読めず、数量がなかなか決まらない」と話す。ただメイン素材のクールマックスは実績もあり、他の商材と比較してある程度数字が計算できるとして、積極的な訴求を続ける方針だ。

 21春夏では通常のクールマックスではなく、「クールマックスエコメイド」に切り替える。ほとんどがペットボトルなどの再生資源から成る環境対応型商材で、顧客の要望が増えていることに応じるほか、自社の姿勢を明確に示す。

 抗ウイルス加工素材の販売にも乗り出す。スイスのメーカーが展開している薬剤を用いて中国で加工する。ポリエステルや綿など、幅広い素材に応用できる。

〈日本羽毛製造/環境対応シリーズ投入〉

 ふとん製造の日本羽毛製造(埼玉県入間市)は、自社ブランド「ジュモウ」に環境対応シリーズを加える。オーガニックコットンやリサイクル羽毛をはじめとする地球環境に配慮した素材を使い、「ジュモウ エシカル」の名称で展開する。商品は羽毛羽織やふとんなどをそろえる。

 ジュモウ エシカルには肩当てや腹巻き、巻きスカート、レッグウオーマーなどのアイテムがそろう。メンズではデニムを使った羽毛はんてんを生産。このはんてんはジュモウブランドで展開しているが、リサイクル羽毛への切り替えなどで、環境対応シリーズのラインアップに加えられる。

 ジュモウ エシカルではオーガニックコットンの側地を使った掛けふとんの商品化に乗り出している。商社を通じてサテン生地(80番単糸使い)を5千㍍発注し、自社工場で裁断・縫製する。中わたについてはグース、国産ダック、リサイクル羽毛を使い分ける。

 ジュモウ エシカルは自社電子商取引(EC)サイトなどで販売するほか、百貨店ポップアップも予定している。

〈ヤマシンフィルタ/ナノファイバーを中わたに〉

 各種フィルターを製造・販売するヤマシンフィルタは、ナノファイバー(ろ材)の「ヤマシンナノフィルタ」を衣料品の中わたに広げている。大手紳士服量販が19秋冬に続いて20秋冬での採用を決めたほか、スポーツ分野にも広がりを見せる。大手量販店の寝装品でも用いられる。

 ヤマシンナノフィルタは、複合紡糸法(海島型)やエレクトロスピニング法ではなく、独自の改良型メルトブロー法で生産する。超比表面積効果や断熱効果などの特性を持つことからフィルター以外での展開を模索していた。幅広く提案を行ったところ一番にアパレル分野が手を挙げた。

 同社と同じ横浜市に拠点を置く紳士服量販が中わたとして採用した。大手SPAが展開するダウンジャケットと比べて厚みを70%抑えながら同等の保温性を付与できる。調湿性を持つため、蒸れにくいのも特徴だ。家庭洗濯やドライクリーニングにも対応する。

 ポリエステル系でリサイクルができ、サステイナビリティーにも応じる素材として衣料や寝装分野への提案を強める。