展示会の“ニューノーマル”(3)/帝人フロンティア/“HP感”の排除が焦点

2020年08月26日 (水曜日)

 帝人フロンティアは、9月30日まで「バーチャル総合展21春夏」を開いている。特設サイト上に仮想ブースを設置し、オンデマンドでコンテンツを提供して素材・製品を提案する。注目度は高く、来場者は7月1日の開幕から1週間で約千人(新規のみ。再訪含まず)を数えた。

 例年4月に総合展を開催してきた。新型コロナウイルス感染症でいったんは6月への延期を決めたが、収束が見えず開催を断念。新常態(ニューノーマル)における素材・製品訴求の場としてバーチャル展示会を企画した。バーチャル展は準備に3、4カ月かかるといわれるが、1カ月から1カ月半で立ち上げた。

 このため特別な用意があったわけではなく、とにかくスピード重視だった。ただホームページと同じ見せ方では意味がなく、「どのようにすれば“ホームページ感”が出ないようにできるか、他業種のバーチャル展を調べて情報を集めた」と言う。結果、ライブ感の演出が不可欠と判断して動画などを取り入れた。

 テーマを環境と新型コロナ対応に設定し、各ブースを設けた。環境関連では、ペットボトルからのリサイクル繊維として1995年に販売を開始した「エコペット」、環境戦略などを紹介。新型コロナ対応では衛生管理のための製品や自宅で快適に過ごすための素材・製品を見せる。

 最初の1週間で多くの顧客が来場し、その後も毎日安定して訪れる。8月中旬には2千人(新規来場者のみ)に達した。これまでに取引のなかった企業や官公庁関連からの訪問があり、米国や東南アジア、中国、欧州からの来場もあった。海外客は全体の1割以上を占めている。

 来場者から「全体的に見やすく、展示内容も豊富で良かった」という声が届くなど、おおむね好評を博す。同社も「朝や夜、土曜日、日曜日の訪問があり、好きな時間に入れるのが大きなメリットだったようだ。再入場が容易なのも大きい」とバーチャル展の利点を話す。

 一方で、感性やトレンド感は伝え切れず、双方向のコミュニケーションが取りづらいという面も顕在化した。11月もバーチャルの総合展を開く予定だが、浮かび上がった課題を精査して、より良い形の内容にしたい考え。リアル展との併催も検討している。