ジーンズ別冊20AW(1)/Origin/欧州で存在感、結集することの大切さ/新型コロナ禍における「ジャパンデニム」の挑戦
2020年09月25日 (金曜日)
セレクトショップ「パリゴ」を運営するアクセ(広島県尾道市)が監修する産地ブランド「ジャパンデニム」は、海外で取引先を増やしている。2月開催の素材見本市「ミラノウニカ」では計177社と商談を実施したほか、製品ではパリの合同展「トラノイ」に参加した。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けながらも「商談に手応えがある。改めて日本発のデニムにポテンシャルを感じた」(アクセの高垣道夫専務)と話す。
〈点在するエリアを「面」にする〉
備中備後エリアに点在する国内有数のデニム産地、企業を「世界に知らしめる」ため、産地ブランド「ジャパンデニム」は誕生した。高品質という日本製デニム生地を巡るステレオタイプな喧伝(けんでん)よりも、国内外へ出展、販売し、よりリアルな声を吸い上げている。アクセが旗振り役を務めるジャパンデニムでは、小売り目線のビジネスを進めることで、マーケット性やトレンド、世界各国におけるジーンズ需要を探ってきた。
ジャパンデニムは、行政と事業者が連携して備後圏域デニムを発信する「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」事業を介し、発足した輸出振興プロジェクト。デニム生地と最終製品でそれぞれ商標登録し、2019年3月からは最終製品の販売をスタートしている。現在、ジャパンデニムに参画する事業者は28社(昨年は19社)に増加。カイハラ、篠原テキスタイル、クロキ、高木織物、豊和、坂本デニム、フーヴァル、大江被服、西江デニムなどが名を連ねている。
事業者はデニム生地の生産や製品を展開する上で、エコ染色や省ボイラーシステムの導入、排水処理、水使用量の削減といった環境保全を意識した工程を取り入れた。製品には、ラベルに配したQRコードで事業者情報を開示している。
〈ビジネスへの好影響も〉
ジャパンデニムは発足以来、海外で取引実績を重ねてきた。新型コロナ禍という逆風にさらされたが、ミラノウニカでは多くの欧州ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドが関心を寄せ、特にサステイナビリティーに力を入れる日本製デニムに評価が集まった。
「来年もミラノウニカに参加したい。デニム生地に加え、デザイナーと協業した製品の取引も伸びている」(高垣専務)と語る。製品では「コーヘン」「アタッチメント」「チノ」「ミュベール」「ミュラー・オブ・ヨシオクボ」「クルニ」「デンハム」「レッドカード」などと協業。デザイン性の高いジーンズが好調に推移した。
昨年来、商品によっては2、3回と追加生産をかけた品番もあった。当初は小ロットだった生産も徐々に増え始め、事業者からは「量が大きくなった」という声も挙がっている。国内で事業者を探していたデザイナーにも継続的に仕事を依頼できるメリットがあり、「質の良いジーンズに仕上げてもらった」(久保嘉男デザイナー)と言う意見も。
日本発のデニムを巡っては、広島県福山市、岡山県井原市を中心とした備中備後エリアで国産デニムの8割以上を生産する現状があったものの、備中備後に対する一般認知度は低かった。さらにブランド側との守秘義務もあり、事業者の情報は消費者に開示されることはなかった。
最終的には「デニムの生産量を増やす」ことを目的に、多くの事業者やデザイナーを巻き込んだ輸出プロジェクトに高める。また、8月26日~9月22日にはギンザシックス(東京都中央区)に期間限定店を開設。デザイン感のあるジーンズが好評で、販売も堅調だったという。




