帝人/水素戦略を事業創出の機会に/アラミドなどで可能性探る

2020年09月30日 (水曜日)

 帝人は、欧州で掲げられている「水素戦略」を事業創出の機会と捉える。水素を送るパイプラインでアラミド繊維(複合成形材料)の展開の可能性などを探る。欧州がつくり出そうとしている新たな社会(パラダイムシフト)の端緒を確実につかみ、中長期な観点でビジネスに育成する。

 同社マテリアル事業は、欧州市場に向けた環境ソリューションの開発を加速している。中長期的なターゲットを三つ挙げており、その一つは「欧州の気候中立に向けた水素戦略」に関連する事業。残りの二つがバイオ原料とサーキュラーエコノミー(循環型経済)だ。

 生産過程で二酸化炭素を排出しない再生可能な水素の活用を推進するのが水素戦略で、脱炭素化が難しいとされる航空業や運送業などに広がる可能性があるといわれる。水素はパイプラインでの輸送が想定できるが、金属では水素によって強度の低下(水素脆化〈ぜいか〉)が起こり得る。

 このためアラミド繊維を使った複合成形材料のパイプラインへの活用を模索する。個社で解決できる問題ではなく、「国などとの共同事業体の構築」(小山俊也取締役常務執行役員マテリアル事業統轄)も検討事項に入る。燃料電池自動車の水素タンクの材料には炭素繊維を提案する。

 バイオ原料ではアクリロニトリル(AN)などで研究を進め、サーキュラーエコノミーではリサイクルのほか、アップサイクルにも力を入れる。進行中の中期経営計画の最終が一つの着地点となり、早い段階でプロトタイプを完成させたいとするほか、M&A(企業の合併と買収)などもあり得るとした。

 まずは「欧州、特にオランダやドイツで事業化を実現したい」(小山取締役常務執行役員)としている。その後、日本をはじめとする他国・他地域へと広げる。