学生服業界/大手3社売上高過去最高/利益確保へ値上げに本腰

2020年10月07日 (水曜日)

 学生服メーカー大手3社は今春、制服モデルチェンジ(MC)を堅調に獲得し、2019年度決算では売上高過去最高を更新しそうだ。ただ、少子化や新型コロナウイルス禍で先行き不透明な環境に加え、さまざまなコストアップが利益を圧迫する。生産効率の改善とともに、値上げに本腰を入れ始める。

(小野 亨、伊窪稔幸、宇治光洋)

 既に決算を発表済みの明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は20年5月期連結売上高が269億円(前期267億円)、昨年5月に瀧本(大阪府東大阪市)を子会社化したトンボは20年6月期連結売上高が384億円(同382億円)といずれも堅調。今月中旬に20年7月期連結決算を発表予定の菅公学生服は「目標の360億円(同357億円)に近い数字を確保する見通し」(尾﨑茂社長)で、5期連続で大手3社とも過去最高の売上高を上回る見通しだ。

 3社の業績が堅調に推移している一方、少子化の加速で生徒数が減少していることに変わりはない。昨年の出生数が90万人を下回り86万人程度と過去最少になったことは記憶に新しいが、分母が減少する中で大手3社への集約が続き、今後はシェア獲得に向けた競争がより激化するとみられる。

 各社にとって、利益の確保も課題になっている。原材料や物流費、人件費などさまざまなコストアップで17年度以降減益基調が続いており、前期は明石SUCとトンボが最終利益で3期連続の減益となった。菅公学生服はコスト削減で3期ぶりの黒字化となりそうだが、先行きが見えない状況の中で今後も利益確保が求められる。

 工場や物流ではコスト削減が続く。菅公学生服は昨年立ち上げた前橋市や宮崎県都城市の物流センターをはじめ、物流拠点の集約を引き続き強化。工場で人工知能(AI)やモノをインターネットにつなぐIoTの活用も推進しており、「事務作業などで自動化や省力化につながっている」(尾﨑社長)。

 トンボは茨城県笠間市で来年竣工予定だった物流センターの計画を1年延期するが、その一方で瀧本と生産背景を共有し効率化を推進、最終利益で増益への転換を図る。瀧本は過去2期連続で赤字だったが、海外工場の共有やシステム統合などを進め、販管費も削減し「今期には黒字化を達成したい」(近藤知之社長)。

 さらに値上げにも本腰が入る。トンボは8月、定番で値上げを実施。別注は交渉中だが、契約期間のあるもの以外は1年以内に実施する。

 菅公学生服と明石SUCも、エリアごとなど個別に交渉を推進。新型コロナ禍で衣料品の使用シーンが制限され節約志向が高まる中、「品質の高い商品は一定のコストが必要になることを改めて周知」(明石SUCの河合秀文社長)しながら値上げへの理解を深める。