アパレル業界のこれから/コロナが構造改革 後押し/減収も利益確保の体制を

2020年10月13日 (火曜日)

 オンワードホールディングス、三陽商会、TSIホールディングスの2020年3~8月期連結決算とヤマトインターナショナルの19年9月~20年8月期連結決算が発表された。新型コロナウイルス感染拡大に直撃され、総じて減収減益決算を余儀なくされた。各社とも新型コロナ以前から過剰生産から適時適量生産への構造改革に着手しており、新型コロナ禍がこの構造改革を一層加速させている。(鈴木康弘)

 「新型コロナ禍はしばらく継続する」(オンワードHD)という見方は各社に共通する。この危機を乗り越え、いかに早く黒字化させるかが、最重要課題である。4~5月の非常事態宣言による店舗の臨時休業、宣言が解除され6月以降徐々に回復傾向にあるが、電子商取引(EC)の前年比2桁%増に比べ、小売店の売上高は前年水準に戻らない。

 これは新型コロナ感染前からあった過剰生産・値引き販売の構造が、消費の変化と懸け離れていたことによるもの。このため、アパレルは昨年から構造改革に着手しており、その最中に新型コロナ禍に見舞われた形である。

 表は各社の今後に向けた方針を示す。構造改革の一つである過剰生産からの脱却では、各社とも仕入れを大幅に減らす。新型コロナ禍による春夏在庫や昨年の暖冬による重衣料在庫を抱え、この間の不採算ブランドの廃止もあって、生産量は減少していく。ここでのポイントは、“減収でも利益を確保する体制づくり”である。

 その策としてプロパー販売の強化がある。新型コロナ以前からプロパー販売を掲げていたTSIHDは策定中の中期経営計画でプロパー消化率80%を目標にする。需要予測を高度化し、必要な量しか作らない事業構造への転換を図る。三陽商会も「プロパー消化率を45%から55%に引き上げる」などで粗利率を改善していく。

 不採算店舗の撤退も共通する。オンワードHDは通期で700店舗撤退。19年度の約3千店舗からほぼ半減する。同社は不採算ブランド(23区オム、CKカルバンクライン)廃止も進めており、オンワード樫山単体でこの下半期は64億円の営業利益を確保する見込みである。

 デジタル技術で企業を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)での業務改革も進める。TSIHDは「デジタルファッションカンパニー」を目指しており、「損益分岐点を下げる、経営のスピードを上げる」などを目的にDXを推進する。

 EC強化も共通する。オンワードHDの上半期の国内販路別売上構成比はEC35%、百貨店30%と、初めてECが百貨店を上回った。下半期も前年比50%増の売り上げを見込む。新型コロナ禍の中で各社オンライン接客も重視しており、求められる販売員も変化してきた。

 ただ、新型コロナ禍の収束は見えない。世界中で第2波、第3波が繰り返される。生産の短納期化から中国を見直す動きもある。その一方で米中貿易摩擦問題は厳しさを増す。ウイズコロナのサプライチェーンの在り方は、商社を含めその解はまだ見つかっていない。