LIVING-BIZ vol.63(2)/特集 羽毛ふとん/20秋冬の販売見通し厳しく/ネット通販の価格攻勢強まる

2020年10月16日 (金曜日)

 20秋冬の羽毛ふとんの販売見通しは厳しい。19秋冬の持ち越し在庫過多とともに、新型コロナウイルス禍による先行きの不透明さから仕込み量を抑える傾向がある。一方、冬の気温低下が見込まれ、天候要因がプラスに働く可能性がある。販売チャネル別では、羽毛原料価格の下振れに対応したネット通販の価格攻勢が強まりそうだ。

 多くの羽毛原料メーカーの2020年の販売量は、前年比10~20%程度の減少を見込む。

 羽毛原料メーカーによると、中国産ホワイトダックダウンの85%は3、4月に、20年の底値となる1キロ当たり23~24㌦程度にまで下がり、9月末時点で33~34㌦程度まで戻してはいるものの、前年より割安感がある。

 あるふとん地製造卸は「通常であれば、羽毛原料価格が下がると、羽毛ふとんの生産量が増える」とするが、現状の様相は若干異なる。「前年並みの羽毛ふとんの生産数量を計画している得意先は少なく、数量を抑えて様子を見る」傾向にある。

 19秋冬の持ち越し在庫も抱える中で数量を抑え、気温が冷え込んで売れれば追加で対応する姿勢で臨んでいる。

 その影響で羽毛ふとん地を扱う素材メーカーやふとん地製造卸の20年度業績は9月末時点で前年同期比20%程度の減収となっている。

 羽毛ふとんメーカーや寝具製造卸も全般的に厳しいものの、ネット通販向けを主力とした羽毛ふとんメーカーや、販路を拡大した寝具製造卸などで2桁%増の販売数量を見込む企業も一部ある。

 20秋冬の羽毛ふとんの単価は前年と比べて下がる傾向にある。羽毛原料メーカーなどが価格の高い時に手当てした羽毛在庫もあるため、一気に製品売価には反映されない面があるものの、羽毛原料価格が下振れした影響が表れている。

 特に低価格の羽毛原料を手当てできたネット通販の価格訴求が目立つ。1万円クラスの羽毛ふとんの露出が増しており、競合しているGMS(総合スーパー)などのシェアを奪う可能性がある。

 家具・インテリアや寝具のネット通販事業を手掛けるタンスのゲン(福岡県大川市)は、中間業者を通さず国内の寝具工場・羽毛サプライヤーと直接取引し、販売力をもとにした大量一括仕入れによる価格競争力などが強みの一つに挙がるが、20年度の羽毛ふとんの販売目標を前年比50%増の12万枚に設定する。

 抗ウイルス機能を持つ羽毛ふとん地・“側”(中わたを入れる前の半製品)の提案も目立っている。蔭山は、羽毛ふとん地で抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」(クラボウ)を採用し、抗ウイルス機能がある綿60番手サテンを備蓄し、1反から販売する。丸ホームテキスタイルは、抗ウイルス加工「フルテクト」(シキボウ)使いの羽毛ふとんの側で、フルテクトのロゴ入り、無地、プリントの3タイプを備蓄する。

 抗ウイルス加工の羽毛ふとんが20秋冬の店頭に並ぶ可能性がある。

〈異サイズ組みのツインダウン/西川〉

 世界中から厳選した上質素材で作り上げる「西川プレミアム」の羽毛掛けふとんは、寝室環境や季節に合わせて選べる3タイプの厚さを用意。独自の「フレッシュアップ」加工で良質な羽毛の特性を最大限に引き出すとともに、羽毛のふっくら感を生かす特殊立体キルトで全身を包み、片寄らず長く快適に使える。

 ベッド用羽毛掛けふとんからは、異なるサイズを組み合わせたツインダウンが新登場。合掛けを肌掛けより1サイズ大きくすることで、包み込まれるような寝心地を提供する。詰め物の充填(じゅうてん)量を合掛けと肌掛けで各3種類そろえ、合計1・25、1・5、1・65キロの3タイプから選べる。

〈コインランドリーに対応/昭和西川〉

 衛生志向の高まりや家事時間短縮のニーズからコインランドリー需要が拡大し、ふとんやカーテンなども洗える設備の大型化・大型店化も進んでいるという。昭和西川はこうした背景を踏まえ、20秋冬に「コインランドリーで丸洗いできる羽毛ふとん」を投入した。

 側地は親水性の高い綿100%サテンと、耐久性に優れたポリエステル・綿混平織の2種類を用意。細かい5×6マスの羽毛が片寄りにくいセーフティーカローキルト仕様で、タンブラー乾燥耐性も持たせた。合掛けと肌掛けの2枚合わせ羽毛掛けふとんは家でも洗える。ポリエステル100%の側地、5×6マスのキルトでタンブラー乾燥もできる。

〈160周年記念の羽毛ふとん/山甚物産〉

 2021年に創立160周年を迎える山甚物産は、周年記念の羽毛ふとんを打ち出す。

 ポーランド産ホワイトコウダ種グースの密度の高い胸部位のダウンで手作業による採取にこだわった「A1ダウン」93%を中わた、超長綿80番手サテンを“側”(中わたを詰める前の半製品)に採用したタイプと、ポーランドホワイトマザーグースダウン95%を中わた、「テンセル」リヨセル・ポリエステルを側に採用したタイプを打ち出す。

 米国の繊維企業であるユニファイのペットボトル再生ポリエステル繊維「リプリーブ」を側に採用したこたつふとんなども提案する。

〈温かさをパワーアップ/ロマンス小杉〉

 ロマンス小杉は、機能性を高めた羽毛ふとんを主力に拡販する。

 同社のロングセラー商品「ロマンスナイト」は、真綿で包んだ3層構造の掛けふとんで、吸湿性・放湿性に優れるシルクと保温性を高める羽毛、これらを包む生地により、快適な寝心地を提供する。

 その“側(中わたを入れる前の半製品)”にブラックシリカ練り込み糸を使用した「岩盤浴ロマンスナイト」を投入。「ロマンス岩盤浴」シリーズで使用しているブラックシリカは、遠赤外線を半永久的に放出する天然鉱石。未使用生地との比較実験で約5・5℃の差が出ている。

 ブラックシリカ練り込み糸使いの羽毛ふとん「岩盤浴羽毛ふとん」も提案する。

〈環境保全最優先の羽毛ふとん/東洋羽毛工業〉

 東洋羽毛工業(相模原市)は、環境保全の視点を最優先にした羽毛掛けふとん「ビオスリープ」を開発し、8月から直営の「オルハ上質睡眠専門店」と公式通販サイトで販売している。

 羽毛は高品質なポーランド産ホワイトコウダ種。その中でも同国のオーガニック認定農場で飼育された“オーガニックグース”から採取された羽毛(保証書付き)を採用した。これを独自の「HARUO工程」で丹念に精製し、自社羽毛ブランド「HARUO DOWN」に仕上げ使用する。

 側地には、インドの限られた産地でしか生産されていない希少なオーガニックコットン超長綿100%使いにこだわった。

〈自社工場で1枚ごとに対応/京都金桝〉

 京都金桝は、自社羽毛ふとん工場(京都府亀岡市)を持つ。顧客ニーズを踏まえて1枚ごとに羽毛充填(じゅうてん)量やキルティングをきめ細かく対応できる点が強みに挙がる。

 今年のカタログから「極み」「匠」「誉」「優」「秀」「常」の各ランクに分けてきめ細かく対応する。サイズ、キルト、中わたの産地、重量などを一覧表で示し、得意先へ分かりやすく紹介する。

 同社の主販路は寝具専門店。19年の羽毛ふとんは前年比5%の増収で、中級ゾーンの羽毛ふとんの販売が伸びた。20年の羽毛ふとんの売り上げは前年並みを見込む。

〈安心安全な上質ダウン供給/カネヨウ〉

 カネヨウのライフマテリアル部は、ポーランド産ホワイトコウダ種ホワイトグースダウンなど安心安全で上質なダウンを供給する。

 ポーランド農業省所属の国立畜産学研究所とコウダライセンスの使用を長年契約し、産地直送やサプライチェーンを構築して高品質と安全性羽毛を提供。さらに部位にこだわったダウンも提案する。

 サステイナブル素材としても訴求する。羽毛は食用の副産物で、石油由来の原料を使用しないエコ素材としてアピール。天然素材の保温性も含めて、SDGs(持続可能な開発目標)の目標「生産と消費の責任」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「気候変動に具体的な対策を」に寄与する。

〈ドラックストアへ販売/ケントハウス〉

 羽毛原料販売、羽毛ふとん製造販売のケントハウスは、ドラッグストアや食品スーパーへの販路を広げる。

 委託販売方式でドラッグストア、食品スーパーのレジ近くのスペースなどに、1店舗当たり羽毛ふとん10枚程度を2週間ほどの期間限定で置く。数店舗単位ごとに販売し、販売期間内に売れなかった羽毛ふとんを同じ販売先の次の店舗で売ることで、余剰在庫リスクを軽減する。20秋冬で採用を決めたドラッグストアなどがあるという。

 同社は「既存得意先の深耕と新規得意先への提案」を掲げており、主販路のネット・テレビ通販向けに加えて、新販売チャネル開拓を図る。

〈細番手糸プラスα/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングは、グループのユニチカテキスタイルの常盤工場(岡山県総社市)の紡績などを生かした細番手糸使いの中高級品ゾーンの羽毛ふとん地を得意とする。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて抗ウイルス加工、サステイナビリティーに対応した細番手プラス再生素材も追求している。

 岡崎事業所(愛知県岡崎市)の合繊、常盤工場の紡績、ユニチカスピニング(長崎県松浦市)のウールやポリエステル短繊維の紡績など、グループ企業を活用した国内のモノ作りも強みとなっている。

〈“除菌×制菌”で衛生追求/フランスベッド〉

 フランスベッドは、好評の衛生特化型寝具ブランド「キュリエス・エージー」に、側地で“除菌(抗菌性能が高いことを除菌と表現)”する羽毛ふとん「ASキュリエス・エージー95」を加えた。マットレスや枕などの既存アイテム同様、東洋紡の除菌機能糸「アグリーザ」を用い実現した。

 羽毛には制菌加工と、汗臭など5大悪臭を抑え、ダニや花粉などによるアレルギー反応を引き起こしにくくする「アレルα+5」加工を施す。除菌機能の側地と制菌加工の羽毛の組み合わせは業界初だという。アグリーザ使いの掛けふとんカバーと併せて使えば、より高い除菌性能を発揮する。

〈低価格から高価格帯まで充実/大津コーポレーション〉

 大津コーポレーションは、低価格から高価格帯まで品ぞろえし、高額品の継続販売とともに、低価格商材の売り込みを強化する。

 高額品では、360番双糸のソフトタッチ生地とアイダーダウンを採用した羽毛ふとんなどを訴求。羽毛原料価格の下振れを踏まえて、手薄だった低価格帯品の仕込みも行った。

 2019年の羽毛ふとん売り上げ実績は早期発注や計画生産とともに、店頭での企画販売への取り組み先が増加して前年並みだったが、20秋冬は新型コロナウイルス禍で店頭販売や外商でのアプローチなどに影響が出てくると、厳しさを見込む。20年の生産数、売り上げとも前比15%減を計画する。

〈抗ウイルス生地多様に/蔭山〉

 ふとん地製造卸の蔭山は、抗ウイルス機能を持つ複数の羽毛ふとん地を備蓄販売する。

 羽毛ふとん地は、抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」(クラボウ)を採用。抗ウイルス機能がある綿60番手サテンを備蓄し、1反から販売する。ポリエステル×ポリエステル・綿の交織の羽毛ふとん地やカバー、2重ガーゼでもクレンゼ使いを近く打ち出す。

 抗ウイルス、制菌、抗カビ機能がある「デオファクター」(高橋練染)、抗ウイルス、制菌機能を持つ「クリアフレッシュV」(大和紡績)使いのSEK抗ウイルス加工の認証を受けた羽毛ふとん地も品ぞろえする予定。

〈抗ウイルス加工など訴求/シキボウ〉

 シキボウは羽毛ふとん用生地で、抗ウイルス加工「フルテクト」などの衛生加工を訴求する。

 フルテクトは繊維に加工した抗ウイルス剤が、繊維上に付着したウイルスのエンベロープ(ウイルスの外側にある膜状構造)に作用し、感染力を失わせる。フルテクトの生地にウイルスを付着させた試験では、ウイルスが検出限界以下に低下し、繊維評価技術協議会の「SEK抗ウイルス加工」マークを取得している。

 さらに同社は、フルテクトがコロナウイルスに対する抗ウイルス効果を持つことを確認。コロナウイルスの亜種である新型コロナウイルスに対しても同様の効果があると推定している。

〈宿泊施設向けに抗ウイルス品/ドリームベッド〉

 ベッド・インテリア用品などを製造販売するドリームベッドは、宿泊施設向けに抗ウイルス加工の羽毛掛けふとんを提案する。

 抗ウイルス加工は、綿100%230本ブロード無地の“側”(中わたを入れる前の半製品)に施した。繊維評価技術協議会の「SEK抗ウイルス加工」認証を取得している。ウイルスが付着しても、2時間で5万~6万分の1にウイルス数を減少できるという。

 宿泊客だけでなく、ベッドメーキングをするホテルスタッフの感染リスクを低減できるとアピールする。同寝具は要望に応じてサイズ、中材を指定することができる。

〈機能加工「ナノプラス」訴求/丸ホームテキスタイル〉

 ふとん地製造卸の丸ホームテキスタイルは、機能加工シリーズ「ナノプラス」(商標取得済み)を訴求する。

 その一つである抗ウイルス加工「フルテクト」は、羽毛ふとんの“側”(中わたを入れる前の半製品)でフルテクトのロゴ入り、無地、プリントの3タイプを備蓄する。ふとんカバー用などでフルテクト加工の綿100%200本ブロード、40番手綿サテン、和ふとん地で同加工の更紗プリントも備蓄する。

 さらにフルテクト加工の40番手綿スムースのニット地も備蓄販売して敷パッドの側などへ提案する。