2020年秋季総合特集Ⅳ(1)/新常態時代の戦略/サステイナビリティーを追求する

2020年10月29日 (木曜日)

 サステイナビリティーを追求することが世界的課題になっている。サステイナブル・アパレル連合(SAC)に加盟した日本企業の挑戦を追った

〈アシックス/エコへの先進的対応を強化〉

 アシックスは2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを一つの目標に掲げており、サステナブル・アパレル連合(SAC)には2011年に加盟している。

 主力のスポーツシューズもアパレルも川上から川下に至るサプライチェーンは長く複雑で、しかもかなりの数のサプライヤーが存在している。

 スポーツシューズの場合、東南アジアを中心に150社以上の1次サプライヤーと取引があるため、それぞれのサプライヤーが環境問題や労働人権にどう対応しているのかを各サプライヤーの置かれた事情に沿って個別に対応していくことは難しい。

 そのため、同社はシューズやアパレルを展開するブランドごとにSACが定める指標に基づく多くのサプライヤーとの連携を強化。環境対応や労働人権といった問題に関して情報を共有していくことが「エコや人権への先進的な対応につながる」と判断し、SACに加盟することを決めた。

 スポーツシューズならば組み立て、アパレルならば縫製を担う1次サプライヤーとの連携から着手し、次いでテキスタイルや染色を依頼する2次サプライヤー、糸やわたを生産する3次サプライヤーへも広げている。

 例えば、スポーツシューズの1次サプライヤーには定期的にアシックスが掲げるCO2の削減目標を伝えたり、環境保全などに関する工場内プロジェクトを共同で実施したり、といった取り組みに力を入れている。

 ある石炭を使っていた1次サプライヤーには変更を要請しサプライヤーは了承。今後は再生可能エネルギーを調達できるかどうかを各サプライヤーに尋ね、以降の対応を検討していくことにしている。

〈ボーケン品質評価機構/評価改善をサポート〉

 検査機関のボーケン品質評価機構は今年3月、サステイナブル・アパレル連合(SAC)に加盟した。サービスプロバイダーとしてサステイナビリティーに関する情報提供と評価改善に向けたサポート業務の拡大を目指す。そのため現在、SAC認定のトレーナー資格を持つ人材の育成に取り組む。

 SACは繊維のサプライチェーンを通じて環境負荷低減や社会的責任を果たすための評価ツール「Higgインデックス」を運用している。環境マネジメントの国際規格ISO14001などをベースにしており、企業は環境対応、製品設計と材料、設備、生産プロセスなどがどの程度サステイナブルなのかを評価することができる。

 近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大や、それを背景にしたSDGs(持続的な開発目標)を追求した事業運営は企業にとって不可欠なものとなった。今後、繊維業界でもSAC加盟企業との取引のために企業活動にHiggインデックスに基づく評価を導入する企業が増加する可能性がある。

 こうした動きをボーケンは従来の検査業務に続く新たな事業領域と捉え、Higgインデックスの運用や評価改善に関するサポートを行う教育機関としての役割を担うことを目指している。そのためにはSACの要求事項を満たしたトレーナー資格を持った人材が必要となる。このため内部での人材教育に加えて、関連セミナーの開催などで要求事項に含まれる活動実績の蓄積を進める。

 SACでは今後、労働安全性マネジメントシステムの国際規格ISO45001などをベースにCSRを対象とした評価・認証システムも構築することが予定されている。ボーケンはこうした動きにも対応することを目指している。

〈ファーストリテイリング/人権保護、技術開発はセットで〉

 ファーストリテイリングは、サプライチェーンの環境対応を軸とした情報収集や業界動向を把握するため、2014年にサステイナブル・アパレル連合(SAC)へ加盟した。現在は主要工場の環境パフォーマンスを把握しているほか、個別工場でのCO2排出量削減計画の策定を進めている。

 同時に取引先工場の社会・人権アセスメントに基づく労働環境管理の強化や、工場自体が自律して労働環境管理ができるような仕組み作りを進めている。

 米ロサンゼルスにある同社の研究開発施設「ジーンズ・イノベーション・センター」には、世界各国からジーンズの専門家が集結し、革新的な技術や素材を活用して新しいジーンズを開発している。

 具体的には、レーザー加工やナノバブル・オゾン洗浄機などの設置と、職人による熟練の技術で、(従来に比べ)加工工程の水使用量を最大99%削減することに成功した。「ユニクロ」では18秋冬から一部商品にこの技術を導入しており、グループブランドの「ジーユー」でも20春夏から同じ技術を採用している。

 昨年9月には、過去に販売した「ユニクロ」のダウン商品の回収を店頭で開始。回収後、取り出したダウンを洗浄・再生し、新しいダウン商品として11月から販売することも決まった。さらに、回収ペットボトルから作る再生ポリエステル素材を使ってフリース商品やポロシャツを製作するなど、環境負荷を軽減する取り組みが相次いでスタートしている。

 サプライチェーンの注力領域については、新型コロナウイルス禍における工場従業員の人権リスク対応(衛生管理や工場経営の把握など)や、差別的な処遇を受けやすい移住労働者の労働条件調査、処遇に関するガイドラインの導入を急ぐ。